掲載誌:International Journal of Medical & Pharmaceutical Sciences
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
リンゴの種には、アミグダリンという物質が含まれています。アミグダリンは「青酸配糖体」と呼ばれる化合物の一種で、種が壊されて消化されると、酵素の働きによって分解され、有毒なシアン化水素(青酸)に変わることがあります。
著者らは、リンゴの種がどの程度のリスクをもたらしうるのかを考えるため、既存の知見を集めて整理しました。論文は、リンゴの種の植物としての由来、消化の過程で起こる変化、アミグダリンの毒性を総合的に検討したものです。
何を検討したか
著者らが特に注目したのは、アミグダリンが人の消化管の中でシアン化物へ変わる仕組みです。種が割れたり噛み砕かれたりすると、種に含まれる分解酵素(植物由来のβ-グルコシダーゼで、エムルシンと呼ばれます)が放出されます。加えて、同じ働きを持つ酵素をつくる腸内細菌も分解に関わりうるとして、この二つの経路を論じています。
一方で、人の体にはシアン化物を無毒化する仕組みもあります。論文では、細胞内のミトコンドリアにある酵素ロダネーゼによる解毒の働きも、分解の過程とあわせて取り上げています。
さらに著者らは、リンゴの種に含まれるアミグダリン量の報告値をまとめました。そのうえで、欧州食品安全機関(EFSA)とFAO/WHO合同食品添加物専門家委員会(JECFA)が示す参照用量と並べ、現実のリスクの大きさを比べやすくしています。
リンゴの種を食べて中毒になった人の症例報告は非常に少ないため、構造の近い青酸配糖体を含むアンズの種(杏仁)での臨床例を分析しました。これにより、青酸配糖体による中毒でどのような症状が出て、どのように診断されるかの傾向を示しています。
主な結論
論文によると、健康な成人が丸ごとのリンゴの種をいくつか誤って飲み込んでも、実質的に害はないとされています。
これに対し、砕いたり噛んだりした種を意図的に大量に食べた場合には、無視できない量のシアン化物を取り込むおそれがあると著者らは指摘しています。こうした状況は主に子どもで想定されるとしています。
論文はリスクを抑えるための助言も示しています。同時に、もとになる文献には限界があり、リンゴの種に特化した定量的なリスク評価を進めにくいことも指摘しています。
研究が伝えること
著者らは、入手できる文献と、リンゴの種による中毒が実際にはまれであることを踏まえ、リンゴの種が中毒の原因となる可能性は非常に低いと結論づけています。ただし例外として、砕いた種や噛んだ種を大量に食べた場合、とりわけ子どもの場合を挙げています。種を丸ごと少し飲み込むことと、砕いて大量に食べることを区別して考える必要性を示した研究といえます。
著者:Sneha Sinha, Abhishek Kumar Ray, Amit Raj, Sneha Keshari, Badal Kumar Prajapati, Alok Kumar, Ujjwal Kumar, Aman Kumar, Shaesta Firdous, Priyanjali, Vaibhav Singh, Alok Kumar*
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Sneha Sinha, Abhishek Kumar Ray, Amit Raj, Sneha Keshari, Badal Kumar Prajapati, Alok Kumar, Ujjwal Kumar, Aman Kumar, Shaesta Firdous, Priyanjali, Vaibhav Singh, Alok Kumar*. Toxicological Assessment of Apple Seeds: Digestive Transformation of Amygdalin and the Potential Risk of Cyanide Exposure in Humans. International Journal of Medical & Pharmaceutical Sciences 2026-10-05. DOI: 10.5281/zenodo.23168062. 原著ライセンス:CC BY.