天然由来の甘味料として注目を集めてきたアガベシロップに、国際基準に沿った試験によるGI値が報告されました。その数字は35。低GI食品の定義(GI55以下)を満たしつつ、これまでの報告よりやや高めという、注目に値する結果です。
GIとは何か、そもそも
GI(グリセミック・インデックス)とは、食品に含まれる炭水化物が消化・吸収されて血糖値をどのくらい上げるかを、ぶどう糖を基準(GI100)として相対的に示した数値です。数値が低いほど、食後の血糖値の上がり方がゆるやかとされています。
アガベシロップはメキシコ原産のアガベ(リュウゼツラン属の植物)から作られる液体甘味料です。甘味成分のかなりの部分が果糖で構成されているとされ、「GIが低い」という評判は以前から広まっていました。ただ、その根拠となるデータは乏しく、報告によって数値にばらつきがあり、専門家のあいだでも議論が続いていました。
今回の研究:国際基準で、人で、測定した
研究グループが2026年に発表した論文は、その「議論」に一つの測定値を加えるものです。
研究では、オーミック加熱(電流を食品に通して内部から均一に加熱する技術)で製造したアガベシロップを使用。GI測定の国際規格であるISO 26642:2012に沿って健康なボランティア(21〜33歳)を対象に選抜し、最終的に基準を満たした15人で試験を実施しました。炭水化物50gを含む量のアガベシロップを摂取してもらい、指先の毛細血管から採血して血糖値の変化を時間ごとに追い、ぶどう糖を基準としたときの面積比からGI値を算出しています。
その結果、得られたGI値は35でした。低GI食品(GI55以下)という分類は維持されましたが、研究グループは「これまで広く報告されてきた値よりもやや高い」と述べています。
「測定値がある」ことの意味
GI値は測定方法・対象者・製造方法によって変わります。同じ食品でも、試験の設計が異なれば数値が変わることは珍しくありません。今回の研究がISO基準という国際的に統一されたプロトコルに沿っている点は、数値の信頼性という観点で意味があります。
一方で、参加者が15人、年齢帯も21〜33歳に限られています。GI値は個人の消化吸収の特性や、一緒に食べるものの組み合わせによっても変動します。研究者自身も「一つの条件下での結果」として報告しており、この一本の研究で決定的な値が定まったわけではないことは念頭に置いておく必要があります。
甘味料を選ぶときに考えること
甘味料はそれぞれ、含まれる糖の種類や量が異なります。「天然」か「精製」かという区別だけでは糖質としての特性は語れません。どの甘味料を選ぶにしても、種類だけでなく使う量も合わせて考えることが重要です。
アガベシロップは果糖の比率が高いためGI値が低くなる一方、果糖を大量に摂取すると中性脂肪の増加や肝臓への負担につながる可能性が指摘されています。「GIが低い=いくら食べても問題ない」ではなく、含まれる糖の性質も踏まえた上で量をコントロールすることが重要です。
日々の選択に活かすなら
国際基準に沿った試験で得られた今回の測定値は、アガベシロップを評価する上での一歩前進です。ただし、GI値はあくまで血糖値の上がり方の目安であり、摂取量が多ければその分だけ糖質の総量も増えます。どんな甘味料であっても、使いすぎには気をつけることが大切です。
目安として、WHO(世界保健機関)は遊離糖類(砂糖・シロップ類など添加された糖)の摂取を1日の総エネルギーの10%未満、できれば5%未満に抑えることを推奨しています。アガベシロップも砂糖類の一つとして、料理・ドリンクに使う量の合計を意識するとよいでしょう。
また、製品によって甘みの強さは異なります。料理やドリンクに加える際は、まず少量から試してみるとよいでしょう。
甘味料一つをとっても、種類・量・食べ合わせによって食事全体の栄養バランスは変わります。日本人の食事摂取基準も参考にしながら、特定の食品だけに注目するのではなく、主食・主菜・副菜をそろえたバランスのよい食事を基本に、甘味料も上手に取り入れていくことが、長い目で見た食生活の豊かさにつながります。
「低GIだから安心」でも「天然だから問題ない」でもなく、根拠ある数値を手がかりに、自分の食事を少し立ち止まって見直す——今回の研究は、そのきっかけを与えてくれる一報です。
※本記事は日本食品標準成分表(八訂)および日本人の食事摂取基準(2025年版)のデータ等をもとに作成しました。参考文献:Determination of the glycemic index in agave syrup obtained by emerging technology(スペイン人間栄養・食事学誌(2026-06-10))