この研究は、スロベニアの研究機関の研究論文です。
掲載誌:DiRROS repository (University of Maribor)
ライセンス: CC BY 確認元: OpenAlex
研究の目的
幼児期は成長が著しく、生涯の食習慣が形づくられる大切な時期です。一方で、就学前の子どもは野菜や果物、全粒穀物、ナッツを十分に食べていないことが、各国の調査で指摘されてきました。高所得国では就学前の子どもの多くが幼稚園などに通い、1日に複数回の食事をそこでとります。そのため、園で出す食事が子どもの食生活全体に大きく影響すると考えられています。
スロベニアでは2005年から教育施設向けの健康的な食事のガイドラインが定められています。ただしガイドラインには一定の簡略化が認められており、実際の園の食事では野菜や全粒穀物、ナッツが不足しがちだと報告されていました。そこで研究チームは、ガイドラインの詳細な推奨に厳密に沿って作った献立を5〜6歳児に提供すると、こうした食品の1日の摂取量が実際に増えるのかを調べました。
どのように調べたか
研究はスロベニア中部の6つの幼稚園で行われました。園を無作為に二つのグループに分け、4園では研究用に設計した5日分の「試作献立」を提供しました。残る2園は比較対照として、前年の同じ時期に使っていた通常の献立をそのまま使いました。試作献立は、野菜、果物、全粒穀物、ナッツの量をガイドラインの推奨に合わせて調整したものです。全粒穀物とは、精製せずに外皮や胚芽を残した穀物を指します。どちらの園でも食材の購入費は認められた予算の範囲内に収まっていました。家庭での食事や週末の食事は、子どもたちの普段どおりとしました。
参加した子どもの食事は、園と家庭の両方で記録されました。園では担任の先生がはかりを使い、配膳した量と残した量を5日間量りました。保護者は同じ期間と週末を合わせた7日間、園の外で子どもが食べたものを記録しました。記録にはポーションの大きさを写真で示した冊子も使われました。集めたデータはスロベニアの食品成分データベースと栄養評価ツールに入力し、肉類、乳製品、果物、野菜、ナッツ、全粒穀物、精製穀物とジャガイモの7つの食品群ごとに摂取量を推定しました。そのうえで、ガイドラインが示す1日の推奨摂取量と比べています。
研究には94人の子どもが登録されました。しかし新型コロナウイルス感染症の流行による休園などで脱落が多く、最後まで参加したのは57人でした。内訳は試作献立のグループが40人、通常献立のグループが17人です。両グループの身長、体重、BMIに有意な差はなく、必要とする食事量は同程度と判断されました。
主な結果
まず、園が提供した食事そのものに違いがありました。試作献立の園では、1日平均の提供量が野菜188グラム、全粒穀物137グラム、ナッツ14グラムでした。通常献立の園ではそれぞれ103グラム、54グラム、0グラムで、試作献立のほうが有意に多くなりました。一方、精製穀物とジャガイモ、果物は通常献立の園のほうが多く提供されていました。
子どもが実際に食べた量にも同じ傾向がみられました。平日に園で食べた量は、試作献立のグループで野菜136グラム、全粒穀物106グラム、ナッツ8グラムでした。通常献立のグループでは野菜60グラム、全粒穀物49グラムで、ナッツは食べていませんでした。食べ残しの量には両グループで有意な差はありませんでした。
園の外での平日の食事を比べると、二つのグループの間に有意な差はありませんでした。著者らは、平日の1日全体の摂取量に生じた差は園での食事によるものだったと報告しています。週末については、どちらのグループでも野菜、全粒穀物、ナッツの摂取量が推奨量の2割にも届きませんでした。試作献立のグループでは、こうした食品の摂取量が週末より平日のほうが有意に多く、その違いは主に園での食事によるものとされています。
なお、栄養面の分析では、試作献立の食事はエネルギー、脂質、食物繊維の量が通常献立より多く、推奨値により近いと報告されています。一方で塩分はどちらの献立も上限を超えていました。
この研究が示すこと
著者らは、園で出す献立をガイドラインの詳細な推奨どおりに設計し、正確に実施すれば、5〜6歳児の平日の野菜、全粒穀物、ナッツの摂取量を高められると結論づけています。家庭での食事がそのままでも、園の食事を変えるだけで子どもの1日の食事内容に違いが表れた点が、この研究の大きな特徴です。週末には両グループとも摂取量が大きく落ち込んでいたことも、園の食事が子どもの食生活を支える役割の大きさを示しています。
著者:Maja Berlic(Department of Food Science and Technology , Biotechnical Faculty , University of Ljubljana , Jamnikarjeva ulica 101 , 1000 Ljubljana , Slovenia;)、Tadej Battelino(Division of Paediatrics , University Medical Centre Ljubljana , Bohoričeva ulica 20 , 1000 Ljubljana , Slovenia;)、Mojca Korošec(Department of Food Science and Technology , Biotechnical Faculty , University of Ljubljana , Jamnikarjeva ulica 101 , 1000 Ljubljana , Slovenia;)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Maja Berlic, Tadej Battelino, Mojca Korošec. Can kindergarten meals improve the daily intake of vegetables, whole grains, and nuts among preschool children. DiRROS repository (University of Maribor) 2026-09-25. DOI: . 原著ライセンス:CC BY.