妊娠中の食事は、お母さんと赤ちゃん双方の健康に深く関わるテーマ。なかでも「妊娠糖尿病(GDM)」は妊娠中に血糖値が高くなる状態として知られ、世界中で研究が進められています。2025年に医学誌『BMC Medicine』で公開された最新のシステマティックレビューでは、妊娠前・妊娠中の食事に含まれるたんぱく質・脂質・炭水化物といった三大栄養素と、GDMとの関係が改めて整理されました。今回はその内容を、日々の食卓に引き寄せながら読み解いてみましょう。

研究でわかってきたこと

この研究は、世界中で行われた25件の前向き観察研究(妊婦さん合計約11万5,496人分のデータ)を統合的に解析したものです。妊娠前あるいは妊娠中の食事内容と、その後のGDM発症との関連を、栄養素の「量」だけでなく「由来」(動物性か植物性かなど)にも踏み込んで検討した点が特徴です。

解析の結果、動物由来のたんぱく質を多く摂っていたグループは、少ないグループに比べてGDMの発症リスクが相対的に高い傾向が報告されました(相対リスク1.62、95%信頼区間1.20〜2.18)。同様に動物由来の脂質についても、摂取量が多いグループでリスクが上がる可能性が示唆されています。エビデンスの確実性は「中程度」と評価されており、確定的な結論ではないものの、無視できないシグナルといえそうです。

一方で、植物由来のたんぱく質や脂質については、こうした関連は同様には観察されなかったと整理されています。つまり「たんぱく質や脂質を減らすべき」というよりも、「どこから摂るか」という視点が浮かび上がってくる研究といえるでしょう。

植物性と動物性、バランスをどう考える?

「動物性が悪い、植物性が良い」と単純化するのは早計です。動物性食品には鉄や亜鉛、ビタミンB12など、植物性食品では補いにくい栄養素が含まれています。とくに妊娠期は鉄の必要量が増えることが、最新の日本人の食事摂取基準(厚生労働省)でも示されています。なお鉄には、肉・魚・貝に多い吸収率の高いヘム鉄と、豆類・葉物野菜などに含まれる非ヘム鉄があり、後者はビタミンCと一緒に摂ると吸収が高まることが知られています。

今回の研究で示唆されたのは、あくまで観察データ上「動物由来に偏った摂取パターン」と「そうでないパターン」でGDM発症率に差が見られた、という関連です。日々の献立で考えるなら、たんぱく質源を肉だけに頼らず、魚・・大豆製品・乳製品・豆類を組み合わせて活用することで、結果的に動物性と植物性が自然と混ざり合います。脂質も同様で、肉の脂やバターに偏らず、植物油・ナッツ・種実・魚由来の脂質を意識的に取り入れることが、食事全体のプロフィールを変える糸口になります。

具体的な食品ごとの成分値に関心がある方は、日本食品標準成分表(八訂)に基づく当サイトの食品群一覧から豆類・魚介類・種実類などのページを参照すると、たんぱく質や脂質の組成を比較しながら献立を考えるヒントになります。

日々の食事に取り入れるヒント

以下はGDMの予防を目的としたものではなく、研究が示した「由来の偏りに着目する」という視点(確実性は中程度)を、日々の献立づくりに置き換えてみたアイデアです。

  • 植物性のおかずも献立に:たんぱく質のおかずを1日3回食べるなら、そのうち1回くらいは豆腐納豆厚揚げ・豆スープなど植物性中心の一皿を加えてみる。
  • 魚を週の真ん中に:肉が続きがちな週は、青魚や白身魚を意識的に挟むだけで、脂質の組成が変わります。
  • 主食に雑穀や全粒を少し白米大麦オートミールを少量混ぜると、食物繊維(水に溶けてゲル状になる水溶性、便のかさを増やす不溶性)を取りやすくなります。なお炭水化物は糖質と食物繊維を合わせた総称です。
  • 調理油は植物油も選択肢に:炒め物や和え物の油をオリーブ油菜種油に置き換えるのも、無理のない第一歩です。
  • 主治医・管理栄養士に相談を:妊娠中の食事は個人差が大きいテーマ。気になる点は必ず専門家と相談してください。

食事に「絶対の正解」はありませんが、研究が積み重なるごとに「動物性と植物性のバランス」というキーワードが、改めて浮かび上がってきています。妊娠期に限らず、肉・魚・豆・・乳製品をローテーションしながら楽しむ食卓は、長く続けやすい食習慣の土台になりそうです。今日の一食から、少しだけ「どこから摂るか」を意識してみませんか。

参考文献:Maternal macronutrient intake and gestational diabetes: systematic review of prospective observational studies and dose-response meta-analyses(ビーエムシー・メディシン)