6月も中旬に入ると、高知の漁港に水揚げされる春獲りかつお(生)はまさに旬の名残に差しかかる。初ガツオの旬は3〜5月が中心で、6月はその旬の終わりにあたる時期だ。地域によっては6月のカツオも「初ガツオ」と呼ばれることがあるが、いずれにしても今がその最後のタイミングである。なお、成分表に高知一本釣りの個別収録はないため、以下の数値は一般的なかつお春獲りの値で見ている。

初ガツオを口に入れた瞬間、まず感じるのは「軽さ」だ。脂質はわずか0.5g(可食部100gあたり)。「さっぱりしている」という感覚は、舌の印象だけでなく数値が裏付けている事実なのだ。

脂は少ないが、たんぱく質とB6はしっかり多い

脂が少ない一方で、「体をつくる力」はしっかり備わっている。たんぱく質は100gあたり25.8g。女性(30〜49歳)の1日推奨量50gの半分以上を100gで補える計算になる(日本人の食事摂取基準)。

そこに加わるのがビタミンB6、0.76mg(同推奨量1.2mg/日の63%)という数字だ。ビタミンB6はアミノ酸の代謝を助ける補酵素で、体に入ったたんぱく質をうまく使うために欠かせない存在。大量のたんぱく質とビタミンB6がセットで含まれているのは、春獲りカツオを食べる理由として十分に説得力がある。ただし、生のカツオにはアニサキス等の寄生虫が寄生している場合がある。免疫力が低下している方・妊婦・高齢者は、十分に加熱した製品を選ぶか、医師・管理栄養士に相談のうえで食べ方を判断してほしい。

さらにナイアシンも19mg(100gあたり)と多い。皮膚や粘膜の健康維持を助ける栄養素だ。カツオはビタミンB1をはじめ複数のビタミンB群を含む魚で、糖質やたんぱく質の代謝を支えるこれらの栄養素が同じ皿の上に揃っているのが地味に心強い。

セレンも一食で自然に摂れる必須ミネラル

もう一つ目を引くのがセレンだ。100gあたり43µgという含有量は、女性(30〜49歳)推奨量25µg/日の172%に相当し、カツオ一食で必須ミネラルのセレンが自然に摂れる。なお、この割合はあくまで推奨量との比較であり、別途設定されている耐容上限量(UL=これ以上は摂りすぎとされる上限量)とは別の基準である。通常の食事から一食分を食べる分には問題ない範囲だが、サプリメントなどとの重複には注意したい。

たたきで食べる今だけの贅沢

高知の漁師が一本釣りにこだわるのは、群れを引き網で一気にすくわずに鮮度を保つためだといわれる。手間をかけて釣り上げた魚は身の締まりがよく、たたきにしたときの歯ごたえに現れる。

販売される1さく(背側)はおよそ250gが流通上の目安。二人でたっぷり分け合うちょうどいいサイズ感で、1人前(100g程度)を基準にすると、前述のたんぱく質・ビタミンB6の数値がほぼそのままあてはまる。なお250g丸ごとで換算すればたんぱく質は約65g、ビタミンB6は約1.9mgになるが、一人で食べきるには多い量であることを念頭に置いておきたい。

食べ方はやはりたたきが王道だ。皮目を炙って香ばしさを出し、薬味にはにんにく・しょうが・みょうが・青じそを気前よく盛る。ポン酢でさっぱりと、あるいはゆずと塩で食べるのも高知流。脂の少ない春獲りかつおはどんな薬味にも負けないので、薬味で遊ぶ余地が大きい。残ったさくは塩をふってペーパーで包み、冷凍すれば2〜3週間を目安に使い切るのが望ましい。

今年の春獲りカツオを食べるなら、6月のうちが最後のタイミングだ。「さっぱりしているけれど、ちゃんと栄養がある」——その逆張りのおいしさを、薬味をたっぷり乗せたたたき一皿で確かめてほしい。

栄養成分値は日本食品標準成分表(八訂)に基づく。摂取基準の割合は女性30〜49歳の推奨量(日本人の食事摂取基準)との比較。

栄養素のはたらき・摂取基準の記述は、次の公的資料に基づきます:厚生労働省 食事摂取基準

※本記事は日本食品標準成分表(八訂)および日本人の食事摂取基準(2025年版)のデータ等をもとに作成しました。