6月に入ると、千葉の直売所や地元スーパーの果物棚に、ふっくらとしたオレンジ色のびわが並びはじめる。関東産のびわの旬はおおむね6月上旬から中旬ごろが盛りで、まさに今がもっとも食べどきの時期だ。柔らかな果肉をひとくち食べると、甘みと淡い酸味がさっと広がって、「ああ、夏が来た」と感じる——そんな、短い季節にしか出会えない果物である。

田中と茂木、二つの顔

びわ 生には「田中」と「茂木」という代表的な品種がある。千葉では主に田中びわが栽培されており、果実がやや大ぶりで肉厚なのが特徴だ。一方の茂木は長崎を中心に出回ることが多く、丸みのある小ぶりな形をしている。どちらも追熟がきかないため、収穫のタイミングが命。産地の近くで手に入る千葉びわは、完熟に近い状態で食べられるのが何よりの魅力である。なお、日本食品標準成分表(八訂)には千葉びわとしての個別の収録がないため、成分値は一般的なびわ(生)の実測値で見ていく。

びわの「色」が持つ意味

このオレンジ色には、栄養的な見どころがある。びわ100gにはβ-クリプトキサンチン(ベータ・クリプトキサンチン)が600µg含まれている。聞き慣れない名前かもしれないが、かんきつ類・かぼちゃ・柿などの黄色やオレンジ色を作る色素成分の一種で、体内でビタミンAに変わる働きを持つ。ビタミンAは皮膚や粘膜を正常に保つのに関わる栄養素として知られており、β-クリプトキサンチンはその「素」となる成分(プロビタミンA)のひとつだ。あの鮮やかな色は見た目だけでなく、栄養の存在を教えてくれるサインでもある。

食物繊維も1個(約70g)あたり約1.1g含まれており、日本人の食事摂取基準における女性(30〜49歳)の1日の目標量18g(※推奨量ではなく目標量の値)の6%ほどに相当する。びわは一度に何個も食べるものではないので、食物繊維源として突出した食品というわけではないが、旬のあいだに食卓へ取り入れることで、日々の積み重ねにつながる。

旬の短さを楽しむ、今ならではの食べ方

びわはそのまま食べるのが一番手軽で、完熟の甘みをもっとも素直に味わえる。皮は薄く手でむけるが、少し冷やしてからいただくと果汁が引き締まって食べやすい。余裕があれば、半分に切って種を取り除き、ヨーグルトやバニラアイスに添えるだけで、ちょっとしたデザートに仕上がる。淡白な甘みがどちらとも相性よく、びわの風味がやわらかく立つ。

また、皮をむいたびわを薄いシロップで軽く煮て瓶に詰める「コンポート」にすると、1〜2日は楽しめる。紅茶に浮かべたり、炭酸水に数切れ加えたりすると、6月の食卓らしい涼やかな一品になる。何より、旬のものを「今だから」という気持ちで取り入れることそのものが、季節の食卓の豊かさだと思う。

短い季節の、小さな贅沢

びわの旬は長くない。6月の上旬から中旬、せいぜい2〜3週間のあいだに出回り、気づけば店頭から姿を消している。だからこそ、今この時期に手に入ったなら、迷わず買って帰りたい果物だ。1個70g前後の果実は、エネルギーも約29kcalと軽やか。朝の果物として、あるいは午後のひと休みに、季節の色とともに楽しんでほしい。

栄養素のはたらき・摂取基準の記述は、次の公的資料に基づきます:厚生労働省 食事摂取基準文部科学省 食品成分データベース

※本記事は日本食品標準成分表(八訂)および日本人の食事摂取基準(2025年版)のデータ等をもとに作成しました。