著者の所属・活動拠点の国は、台湾です。

掲載誌:ACS Applied Materials & Interfaces

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

ワインなどの飲み物の渋みには、タンニンと呼ばれる成分が関わっています。研究チームは、渋みの指標となるタンニン酸を飲み物の中で直接測るための電気化学センサー材料を開発しました。電気化学センサーとは、測りたい物質が電極で反応するときに流れる電流の変化から、その量を調べる装置です。

このセンサーは酵素を使わない「非酵素型」で、論文では味を電気的に読み取る「バイオエレクトロニック・タン(電子舌)」への応用を想定しています。

どのような材料を調べたか

材料には、電気を通すプラスチックの一種である導電性高分子PEDOT:PSSと、酸化タングステン(WO3)のナノ粒子を組み合わせた複合材料が使われました。WO3ナノ粒子は、金属線に電気を流して爆発的に微粒子化する「電気爆発ワイヤー法」で作られ、論文では環境に配慮した合成法(グリーン合成)として位置づけられています。

研究チームは、PEDOT:PSSとWO3の重量比を1対1、1対2、1対3と変えた3種類の複合材料を用意し、PEDOT:PSS単独の場合とも比べました。著者らによると、WO3を加えることで高分子が「ベンゾイド構造」と呼ばれる分子の形をとりやすくなり、タンニン酸に対する感度が高まったとされています。

主な結果

比較の結果、PEDOT:PSSとWO3の重量比が1対2の複合材料を使ったセンサーが最もよい性能を示しました。このセンサーは、白ワイン、赤ワイン、ロゼワインといった実際の飲料サンプルでも安定した性能を示したと報告されています。

論文によると、このセンサーの直線的な応答範囲はタンニン酸濃度0.1〜0.5ミリモル毎リットルで、直線性は0.7および1.0ミリモル毎リットルまで及びました。感度は1平方センチメートル、1ミリモル毎リットルあたり767.8マイクロアンペアで、検出できる最低濃度(検出限界)は2.6マイクロモル毎リットルと低く、少ないタンニン濃度でも検出できるとしています。

研究の意味

著者らは、高い感度と幅広い測定範囲を持つこのセンサーが、さまざまな飲み物の渋みに関わるタンニン酸を速く確実に定量する方法となり、その場で行う品質管理に役立つと述べています。導電性高分子と金属酸化物ナノ粒子の配合比を工夫することで、飲み物の渋み成分を酵素なしで電気的に測れる可能性を示した研究といえます。

原著論文の著者・所属:Nadeem Ahamad(National Yang Ming Chiao Tung University , , ,)、Soumallya Banerjee(Academia Sinica , , ,)、Akhil Pradiprao Khedulkar(National Yang Ming Chiao Tung University , , ,)、Phan Thi Phuong(National Yang Ming Chiao Tung University , , ,)、Wen‐Bin Jian(National Yang Ming Chiao Tung University , , ,)、Chih‐Wei Chu(Academia Sinica , , ,)、Hong‐Cheu Lin(National Yang Ming Chiao Tung University , , ,)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Nadeem Ahamad, Soumallya Banerjee, Akhil Pradiprao Khedulkar, et al. Green Synthesized WO3-PEDOT:PSS Composites into Benzoid-Rich Conformation for Nonenzymatic Bioelectronic Tongues for Tannic Acid-Based Wine Astringency Detection. ACS Applied Materials & Interfaces 2026-10-15. DOI: 10.1021/acsami.6c14665. 原著ライセンス:CC BY.