アフリカには、地域ごとに受け継がれてきた発酵飲料が数多く存在します。西アフリカで親しまれている「チャクパロ」もその一つで、穀物を原料とした発酵飲料です。発酵食品は、使われる微生物の種類やその働き方によって風味や品質が大きく変わることが知られていますが、チャクパロについても、作り手によって出来上がりの品質にばらつきがあることが課題とされてきました。今回紹介する研究は、このチャクパロの品質や消費者の好みを左右する要因を、微生物と理化学的な性質の両面から調べたものです。
研究でわかったこと
研究チームは、異なる生産者が作った10種類のチャクパロのサンプルを集め、pH、アルコール度数、糖度(Brix値)といった理化学的な性質を測定しました。また、酵母や乳酸菌、大腸菌群といった微生物の量や種類、さらにサルモネラ菌やE.コリ(大腸菌)といった食中毒の原因となる病原菌の有無も調べています。加えて、30人のパネリストが5段階評価で、香り・風味・見た目・食感を評価する官能評価も行われました。
その結果、サンプル間には理化学的な性質にかなりの幅があり、pHは3.27〜4.07、アルコール度数は2.50%〜5.10%、糖度は6.53〜9.50の範囲に分布していました。一方、病原菌は今回調べたどのサンプルからも検出されませんでした。微生物としては酵母と乳酸菌が主体で、酵母は1ミリリットルあたり6.84〜9.29(log CFU/mL)、乳酸菌は6.30〜9.04(log CFU/mL)というレベルで存在していました。微生物の多様性(種類の豊富さ)についても分析され、酵母の多様性は0.90〜1.40、乳酸菌の多様性は0.88〜1.40の範囲で、特にサンプル8と9で最も高い多様性(1.38)が確認されています。
官能評価では、サンプル7が風味の評価(4.6点)や全体的な好ましさで最も高く評価されました。統計的な分析からは、乳酸菌の多様性が高いほど風味の評価も高くなる傾向(相関係数r=0.489、p=0.006)が見られた一方、pHが高い(酸性度が低い)ほど全体的な好ましさの評価は下がる傾向(相関係数r=−0.373、p<0.05)が示されました。さらに、Lactobacillus fermentumという乳酸菌の存在が香りや風味の向上と関連し、Saccharomyces cerevisiaeという酵母は糖度やアルコール度数と正の関連を示したと報告されています。
この研究の位置づけ・読むうえでの注意
この研究は、10種類のサンプルと30人のパネリストによる調査に基づくものであり、一つの研究として得られた知見です。乳酸菌の多様性や特定の微生物の存在が風味の評価と関連していたことは示されていますが、これは相関関係を示したものであり、必ずしも直接的な因果関係を証明するものではない点に注意が必要です。また、対象となったサンプルや評価者の規模も限られているため、今回の結果がチャクパロ全般に当てはまるかどうかは、さらなる研究の積み重ねによって確かめられていくものと考えられます。
まとめ
この研究では、西アフリカの発酵飲料チャクパロについて、微生物の構成や多様性、pH・アルコール度数・糖度といった理化学的な性質が、消費者の嗜好性と関連していることが示されました。特に乳酸菌の多様性が風味の評価と正の相関を示し、pHが好ましさに影響する可能性が示唆されています。研究者らは、こうした要因を理解することで、生産者が発酵の工程を工夫し、品質の安定した製品づくりに役立てられる可能性があるとしています。
※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:微生物および理化学的要因がチャクパロに対する消費者の嗜好性に与える影響(ジャーナル・オブ・フード・クオリティ・2026年01月)