肉料理に欠かせない「脂身」。旨みの源として愛される一方、そのカロリーや脂質の実態をきちんと把握している人は意外と少ないかもしれません。今回は牛と豚の代表的な脂身を数値で読み解き、上手な付き合い方を探ってみましょう。
栄養データで見る特徴
まず目を引くのは、そのエネルギー量の高さです。乳用肥育牛のリブロース脂身(生)は100gあたりなんと703 kcal。脂質は80.5 g(100gあたり)に達し、今回比較した5品の中でもっとも高い数値です。たんぱく質はわずか3.7 g(100gあたり)と、脂身の大部分が脂肪組織であることがよくわかります。
続いて乳用肥育牛のかた脂身(生)は650 kcal・脂質73.3 g(100gあたり)。リブロース脂身よりやや控えめですが、それでも相当なエネルギー密度です。たんぱく質は4.5 g(100gあたり)と、リブロース脂身よりわずかに多め。
豚の脂身を見ると、大型種豚のそともも脂身(生)は631 kcal・脂質68.1 g(100gあたり)、大型種豚のもも脂身(生)は611 kcal・脂質67.6 g(100gあたり)と、牛よりやや低い数値です。ただ、たんぱく質はそともも脂身が6.6 g、もも脂身が6.5 g(いずれも100gあたり)と、牛の脂身よりも多く含まれている点は注目です。
そして比較の中で最もエネルギーが低いのが、和牛リブロース脂身つきの焼いたもの。541 kcal・脂質56.8 g(100gあたり)で、たんぱく質は14.6 g(100gあたり)と群を抜いて高い数値です。これは「脂身つき」とはいえ赤身肉も含まれているためで、加熱による水分・脂肪の流出も影響しています。鉄も1.6 mg(100gあたり)と今回の5品の中で最多です。
食べ合わせ・活用のポイント
脂身は料理に旨みとコクをもたらしますが、少量でも高いエネルギーをもたらすため、使い方に工夫が必要です。
- 牛リブロース脂身やかた脂身は、煮込み料理のベースとして少量使うと、全体に豊かな風味が広がります。スープや煮汁に溶け込んだ脂の旨みを活かしながら、脂身そのものを食べる量は控えめにするのが賢明です。
- 豚のそともも脂身やもも脂身は、チャーシューや角煮のような長時間加熱料理に向いています。加熱により余分な脂が落ちることで、風味はそのままにエネルギーを抑えやすくなります。
- 和牛リブロース脂身つきの焼き物は、鉄やたんぱく質もある程度含むため、野菜や食物繊維が豊富な副菜と組み合わせることでバランスを取りやすくなります。
選び方・注意点
スーパーで肉を選ぶ際、「脂身つき」と「赤身」では見た目以上に栄養プロフィールが異なります。リブロース脂身のような純粋な脂身は旨みの塊である反面、ほぼ脂質しか含まないため、意識せずに食べ過ぎると脂質の過剰摂取につながりやすい点に注意が必要です。
調理前にキッチンバサミや包丁で脂身部分をトリミング(切り落とし)するだけでも、一皿あたりの脂質量は大きく変わります。一方で、脂身つきの焼き肉のように赤身と脂身が混在する部位では、焼く・炒めるといった調理で脂が適度に落ちるため、脂身のみの生の状態とは仕上がりの数値が変わってくることも覚えておきましょう。脂質の摂取量についての詳細な目安は、最新の「日本人の食事摂取基準(厚生労働省)」をご確認ください。
また、豚もも脂身や豚そともも脂身は生食厳禁。豚肉は必ず中心部までしっかり加熱することが食の安全の基本です。
まとめ
牛・豚の脂身は、種類や部位によってエネルギーや脂質の量に明確な差があることが数値から読み取れます。旨みの源として上手に活用しながら、量や調理法を意識することが大切なポイントです。脂身の特徴を正しく知ることが、日々の食卓をより豊かに、そして賢くする第一歩になるでしょう。
※本記事は日本食品標準成分表(八訂)のデータをもとに作成しました。