著者の所属・活動拠点の国は、中国です。
掲載誌:Foods
ライセンス: CC BY 4.0 対象: 公開論文 確認元: Crossref
全粒小麦を使った即席麺は、食物繊維が豊富でバランスの良い栄養が期待できる食品として注目されています。ただし油で揚げずに乾燥・加工する「非油揚げタイプ」の場合、もどし(湯戻し)に時間がかかったり、食感や風味が今ひとつだったりする課題があると指摘されています。こうした弱点を、身近な発酵の力で補えないか——そんな発想から行われたのが今回紹介する研究です。
研究チームが着目したのは、酵母と乳酸菌を組み合わせた「混合培養発酵」です。パンやヨーグルトなど、私たちが普段口にする発酵食品にも使われるおなじみの微生物ですが、これらを麺の生地作りに応用することで、もどし特性(湯で戻る際の速さや状態)、食感、香り、麺の内部構造、揮発性の香り成分、さらには消化のされやすさ(消化性)まで、多角的に評価が行われました。
研究でわかったこと
要旨によれば、酵母と乳酸菌はそれぞれ異なる役割を担っていたと報告されています。酵母は主にもどし時間の短縮と口当たりの向上に寄与し、一方で乳酸菌は麺の中でグルテン(小麦のたんぱく質)が均一かつ連続的な網目状構造を作るのを助け、麺の風味を高めることに主に貢献していたとされています。
さらに興味深いのは「量」の効果です。酵母1%と乳酸菌0.05%という適度な量で混合培養を加えた場合、非油揚げ全粒小麦即席麺の中で均一なグルテンネットワークの形成が促され、でんぷんの消化されやすさや、食後の血糖上昇の目安とされる推定グリセミック指数(eGI)を効果的に低下させたことが示されたと報告されています。一方で、添加量が過剰になると、これらの効果とは逆の結果が生じたとも述べられており、「多ければ多いほど良い」というわけではない点が示唆されています。
この研究の位置づけ・読むうえでの注意
この論文は、非油揚げ全粒小麦即席麺の品質を高めるための一つの加工技術的アプローチを示したものであり、酵母と乳酸菌の配合量や条件を変えた実験に基づく知見です。ここで報告されているeGIの低下や食感・風味の改善は、あくまでこの研究で観察された結果であり、実際の製品化や、個人の食後血糖値への影響を保証するものではありません。また、要旨内でも「過剰な添加は逆効果になる」と述べられているとおり、発酵の条件設定が品質を左右する繊細な要素であることがうかがえます。一つの研究であり、結論が確定したわけではない点に留意して読んでいただければと思います。
まとめ
この研究では、酵母と乳酸菌を組み合わせた発酵によって、非油揚げ全粒小麦即席麺の食感や風味、消化性に関わる特性を改善できる可能性が示唆されています。健康的な食生活や血糖コントロールを意識する人々に向けた、より質の高い全粒小麦麺づくりのための一つの加工戦略として位置づけられる研究といえそうです。
※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。出典(原著論文):混合培養発酵が非油揚げ全粒小麦即席麺の品質に及ぼす影響(フーズ・2026年06月)
著者:Hao-Ran Han(College of Food Science and Technology, Henan Agricultural University, Zhengzhou 450002, China)、Rui-Xian Shang(College of Food Science and Technology, Henan Agricultural University, Zhengzhou 450002, China)、Wan-Wan Cui(Baixiang Foods Co., Ltd., Zhengzhou 451100, China)、Yun Chen(College of Food Science and Technology, Henan Agricultural University, Zhengzhou 450002, China)、Lin-Lin Li(College of Food Science and Technology, Henan Agricultural University, Zhengzhou 450002, China)、Xiao-Ling Tian(College of Food Science and Technology, Henan Agricultural University, Zhengzhou 450002, China)、Jian Zhang(College of Food Science and Technology, Henan Agricultural University, Zhengzhou 450002, China)、Yang Zhao(College of Food Science and Technology, Henan Agricultural University, Zhengzhou 450002, China)