この研究は、トルコの研究機関の研究論文です。
掲載誌:Nutrients
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
注意欠如・多動症(ADHD)は、不注意、多動性、衝動性が年齢に見合わない程度で続く、子どもに多い発達の特性です。こうした特性が食べ方や食べ物の選び方に関わる可能性は以前から指摘されてきましたが、これまでの研究結果は一致していませんでした。
著者らは、その理由の一つとして対象となる子どもの状態の違いを挙げています。ADHDの子どもの多くは不安症や自閉スペクトラム症などを併せ持ちます。また、治療薬には食欲を抑えるものがあります。そのため、食事の特徴がADHDそのものと関係しているのか、ほかの病気や治療の影響なのかを見分けにくいという問題がありました。
そこで研究チームは、新たにADHDと診断され、まだ治療を受けておらず、主な併存症もない子どもを対象にしました。この子どもたちと健康な子どもを比べ、食行動、食事の質、加工度の高い食品の摂取、食事のパターンを同じ参加者の中でまとめて調べることを目的としました。
何をどのように調べたか
対象は6〜14歳の子どもです。ADHDのある子ども64人それぞれに、性別が同じで生年月日の差が6か月以内の健康な子どもを1人ずつ組み合わせ、64組で比較しました。健康な子どもは、同じ時期に病院の小児科外来へ定期健診などで来た子どもから選ばれています。
食行動は、保護者が答える2種類の質問票で調べました。一つは、食べ物への反応の強さや好き嫌い、飲み物を欲しがる傾向などを測るものです。もう一つは、食事の場面での困りごとを測るものです。普段の食事内容は、過去1か月に何をどのくらいの頻度で食べたり飲んだりしたかを、面接で聞き取りました。
聞き取った内容をもとに、三つの観点から食事を評価しました。一つ目は「MIND食指数」で、緑の葉物野菜、豆類、魚など脳の健康によいとされる食品群を多くとり、菓子類や揚げ物などを控えるほど点数が高くなる指標です。この研究では、参加者全体の中での相対的な摂取量をもとに点数を付けています。二つ目は、加工度の高い食品・飲料11群を簡易にチェックする質問票で、点数が高いほどそうした食品をよくとる傾向を示します。三つ目は、一緒に食べられやすい食品の組み合わせを統計的に抽出した「食事パターン」です。
分析では、組み合わせた2人の比較を前提にした方法を用いました。家庭の社会経済的な背景の目安として母親の学歴を考慮したモデルを主な分析とし、多数の検定を同時に行うことによる偶然の差を抑えるための補正も加えています。
主な結果
比較の結果、ADHDのある子どもは健康な子どもに比べて、飲み物を欲しがる傾向の点数と加工度の高い食品の点数が高い一方、MIND食指数と健康的な食事パターンの点数が低かったと報告されています。
母親の学歴を考慮した主な分析では、飲み物を欲しがる傾向の点数が高いほどADHDである見込みが高いという関連が示されました(オッズ比1.88)。加工度の高い食品の点数でも同様の関連がみられました(オッズ比2.44)。逆に、MIND食指数が高いほどADHDである見込みが低いという関連が示されました(オッズ比0.77)。これら三つの関連は、多重比較の補正後も統計的に意味のある結果として残りました。
一方、健康的な食事パターンとの関連は、補正後には統計的に意味のある差として残りませんでした。
この研究が示すこと
この研究は、併存症や治療の影響をできるだけ除いた条件で、ADHDのある子どもの食行動と食事内容を複数の角度から同時に調べたものです。その結果、ADHDのある子どもでは飲み物を欲しがる傾向が強く、加工度の高い食品をよくとり、脳の健康によいとされる食事への近さが低いという特徴が、健康な子どもとの比較で示されました。
ただし、著者らはこの研究を探索的なものと位置づけています。また、ある時点の状態を比べる観察研究であるため、食事がADHDの原因になるのか、ADHDの特性が食事に影響するのか、どちらが先なのかは判断できないと明記しています。示されたのはあくまで両者の関連です。
著者:Nilüfer Şen(Program of Nutrition and Dietetics, Graduate School of Health Sciences, Gazi University, Ankara 06540, Türkiye)、Nilüfer Acar Tek(Department of Nutrition and Dietetics, Faculty of Health Sciences, Gazi University, Ankara 06490, Türkiye)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Nilüfer Şen, Nilüfer Acar Tek. Eating Behaviors, Dietary Patterns and Diet Quality in Newly Diagnosed, Treatment-Naïve Children with ADHD: An Age- and Sex-Matched Case–Control Study. Nutrients 2026-09-26. DOI: 10.3390/nu18193176. 原著ライセンス:CC BY.