野山の斜面や土手に青々と茂り始めるよもぎは、古くから「草餅」や「よもぎ餅」として日本人に親しまれてきた5月の旬草です。独特の香りとほろ苦さの中に、初夏の体を整える栄養素がぎゅっと詰まっています。運動パフォーマンスの向上や疲労回復を意識したい方にも、ぜひ注目してほしい食材のひとつです。
この時期に注目したい栄養素
5月は気温の上昇とともに活動量が増え、体の中では酸素消費が活発になります。そこで鍵となるのが鉄とたんぱく質、そして食物繊維の3要素です。
鉄は赤血球のヘモグロビンを構成し、筋肉や脳へ酸素を届ける役割を担います。運動時に酸素供給が不足すると、パフォーマンスの低下や疲れやすさにつながるため、積極的に補いたい栄養素です。最新の日本人の食事摂取基準(厚生労働省)によれば、成人女性(月経あり)の鉄の推奨量は1日10.5mgとされており、日常の食事だけでは不足しがちです。詳細は厚生労働省の最新資料をご確認ください。
また、たんぱく質は筋肉を構成するアミノ酸の源であり、運動後の筋肉修復・合成に欠かせません。食物繊維は腸内環境を整え、栄養素の吸収効率を高めるサポート役として、継続的な体づくりを下支えします。
おすすめ食品とその数値データ
よもぎ(葉・生)は、100gあたりエネルギー43kcal、たんぱく質5.2g、脂質0.3g、炭水化物8.7g、食物繊維7.8g、カルシウム180mg、鉄4.3mg、ビタミンC 35mgという栄養プロフィールを持ちます。野草としてはたんぱく質が5.2g(100gあたり)と充実しており、鉄も4.3mg(100gあたり)と非常に豊富です。100gあたり7.8gという食物繊維量は、ブロッコリーや枝豆と比べても引けを取らないレベルです。
一方、下ゆで後のよもぎ(葉・ゆで)になると、鉄は3.0mg(100gあたり)、ビタミンCは2mg(100gあたり)と生に比べてやや減少します。これは水溶性の栄養素がゆで汁に流れ出るためです。ただし、カルシウム140mg(100gあたり)、食物繊維7.8g(100gあたり)は生と同水準を維持しており、加熱によるアク抜き後でも十分な栄養を摂ることができます。
注目すべきは、よもぎ(葉・生)のカルシウム含有量180mg(100gあたり)です。骨や歯の形成だけでなく、筋肉の収縮にも関わるカルシウムを、低カロリーで摂れるのはうれしいポイントです。
毎日の食事への取り入れ方
よもぎは下処理さえ押さえれば、日常の料理に幅広く活用できます。まず基本の下ごしらえは、塩を加えた熱湯でさっとゆでてアクを抜き、冷水にさらして絞るだけ。このひと手間で独特の苦みがやわらぎ、食べやすくなります。
- スムージー・青汁風ドリンク:よもぎ(葉・生)を少量のバナナや豆乳とブレンドすれば、鉄とたんぱく質を同時に摂れる運動前後の一杯に。ビタミンCも35mg(100gあたり)含まれるため、非ヘム鉄の吸収を助けるコンビネーションが自然と整います。
- 和え物・おひたし:ゆでたよもぎ(葉・ゆで)をごまや豆腐と和えると、たんぱく質を補いながら食物繊維もしっかり摂れる副菜になります。ごまのビタミンEと組み合わせることで、疲労の一因となる酸化ストレスへのアプローチも期待できます。
- 草餅・よもぎご飯:もち米や白米に刻んだよもぎ(葉・ゆで)を混ぜ込むと、炭水化物と食物繊維を一緒に摂る主食に。エネルギー補給と腸内環境サポートを同時に図れる、活動量が高い日の昼食にぴったりです。
- スープ・お味噌汁:ゆでたよもぎを仕上げにのせるだけで、カルシウムと鉄をプラスできる一杯に。汁ものにすることでゆで汁に溶け出した栄養素も無駄なく摂れます。
まとめ
身近な野草でありながら、鉄・たんぱく質・食物繊維・カルシウムと、運動する体に嬉しい栄養素を豊富に含むよもぎは、5月の食卓を彩る頼もしい旬食材です。シンプルな下処理で料理のバリエーションも広がるため、ぜひ今の季節ならではの香りとともに日常の食事に取り入れてみてください。旬の食材を上手に活かした食生活が、初夏の体と心を整える一番の近道です。
※本記事は日本食品標準成分表(八訂)のデータ等をもとに作成しました。