骨を強くしたいなら、カルシウムが多い食品を選べばいい——そう思っている人は多いはずだ。だが実際に数値を並べてみると、意外な順序が見えてくる。ごま 乾はカルシウムが100gあたり1200mg、ほしひじきは1000mg。一方、今回の主役であるしらす干し 半乾燥品は520mg、まいわし 丸干しは440mgと、量だけで比べれば見劣りする。それなのに、子どもの成長期の食卓を考えるとき、この2品には見過ごせない強みがある。カルシウムは「摂った量」がそのまま骨になるわけではなく、体に取り込まれる過程が必要になるからだ。

鍵は「D」——量より吸収

しらす干しにはビタミンDが100gあたり61µg、まいわし丸干しには50µg含まれている。ビタミンDはカルシウムが腸で吸収されるのを助けるとされる栄養素で、脂溶性のため油脂と一緒にとると吸収率が高まるとされる。つまりカルシウムがどれだけ多くても、Dが伴わなければ体への取り込みは同じようにはいかない可能性がある、という理屈だ。ごまやひじきにはこのビタミンDのデータがない。カルシウムの量ではごま・ひじきに軍配が上がっても、「吸収を助ける栄養素とセットで摂れるか」という視点に切り替えると、しらす・まいわしが一段上に立つ理由が見えてくる。しらす干しは大さじ1で約4g、まいわし丸干しは1尾約20gが目安量なので、ごはんや味噌汁に添える感覚で日々の食卓に取り入れやすい量でもある。ビタミンDには耐容上限量が定められているが、成人(30〜49歳)の目安量は男性9µg・女性9µgであり、しらすやまいわしを一食で食べる量なら心配する必要はない。

油と合わせる工夫も

ビタミンDが脂溶性である以上、油との組み合わせは理にかなっている。ごま乾は脂質が100gあたり53.8gと油分が多い食品で、n-6系多価不飽和脂肪酸を23.11g含む。これは体内で合成できず、不足すると皮膚炎などが起こるとされる必須脂肪酸だ。ごま自体にビタミンDは含まれないが、しらす干しをごま油で和えたり、いりごまを振りかけたりする食べ方は、脂溶性ビタミンの吸収という観点では相性がよい組み合わせといえる。ただしごまは100gあたりの数値であり、実際に使うのは大さじ1(約9g)程度が現実的な量だ。カルシウムは100gあたり1200mgでも、少量を振りかける調味的な使い方が中心になる点は意識しておきたい。

骨づくりを支えるもう一つの栄養素

モロヘイヤ 茎葉 ゆでにはビタミンKが100gあたり450µg含まれる。ビタミンKは正常な血液凝固を維持し、骨の形成にも関わるとされる栄養素で、モロヘイヤはβ-カロテンも6600µgと多い。ほしひじきのビタミンK(580µg)も同様の働きを持つ栄養素だが、こちらは乾燥した状態での数値であり、1人分の目安量は約10gである点に注意したい。骨の材料・吸収を助ける成分・形成に関わる成分と、役割の異なる栄養素がそれぞれ別の食品に分かれているのは興味深い。

飲みやすさで支える普通牛乳

普通牛乳はカルシウム量そのものは他の食品ほど突出していないが、1カップ(200mL)で約210gという飲みやすい目安量が示す通り、日常的に続けやすい摂り方ができる点が特徴だ。子どもの食卓では、コップ1杯を毎日続けられるかどうかも大切な視点になる。

まとめ——量より組み合わせで選ぶ

骨を育てる食卓を考えるとき、「カルシウムが多い食品ランキング」で選ぶと、ごまやひじきが上位に来てしまう。だが実際に体で使われる過程まで踏み込むと、ビタミンDを併せ持つしらす干しやまいわし丸干しの立ち位置が変わって見えてくる。カルシウムの含有量だけを比べるのではなく、「吸収を助ける栄養素と一緒に摂れているか」という軸を持つことだ。これが、成長期の食卓で食品を選ぶときの新しい視点になる。もしごまやひじきにもビタミンDのデータが加わる日が来たら、この順位はまた変わるかもしれない——そう思うと、次の成分表の更新も気になってくる。

【摂取量の目安】ビタミンDは脂溶性で体に蓄積しやすいため、多量・連日の摂取やサプリメントの併用、妊娠中は過剰摂取に注意が必要とされます(通常の食事で時折とる分には問題になりにくいとされます)。参考までに、成人の耐容上限量は100µgで、可食部100gあたりのビタミンDはしらす干しで約61%、まいわし丸干しで約50%にあたりますが、実際に一食で食べる量(しらす大さじ1=約4g、まいわし1尾=約20g程度)ではごくわずかです。

※本記事は特定の食品の効果・効能を示すものではありません。

※本記事は日本食品標準成分表(八訂)のデータ等をもとに作成しました。

栄養素のはたらき・摂取基準の記述は、次の公的資料に基づきます:厚生労働省 食事摂取基準e-ヘルスネット「カルシウム」(厚生労働省)