お祭りや冠婚葬祭のときにだけ食べる、地域に根づいた昔ながらの食べもの——そんな「伝統食」は世界各地にありますが、近代化が進むなかで作り手が減り、次第に忘れられていくことも少なくありません。今回紹介する研究は、インドネシアのグレシック県に伝わる伝統食「ジュブン」を対象に、栄養面での特徴と、実際に食べた人にどれくらい好まれるかを科学的に調べたものです。伝統食を守り、発展させていくための基礎データを得ることを目的としています。
研究チームは、ジュブンについて水分・灰分・タンパク質・脂質・炭水化物・粗繊維といった基本的な栄養成分の分析(一般成分分析)に加え、pH(酸性・アルカリ性の度合い)と水分活性(食品中の「使われやすい水」の割合を示す指標で、微生物の増殖しやすさに関わるとされます)を測定しました。分析には国際的に用いられる分析法(AOAC法)が用いられています。さらに、専門的な訓練を受けていない一般の評価者(パネリスト)による官能評価も行い、味や食感などがどれくらい好まれるかを調べました。得られたデータは統計的な手法(一元配置分散分析とDMRT、有意水準5%)で分析されています。
研究でわかったこと
成分分析の結果、ジュブンは炭水化物を多く含む食品であることが示されました(68.42%)。水分は32.67%、脂質は9.25%、タンパク質は4.81%とされ、一方で食物繊維(粗繊維)は2.14%、灰分は1.08%と少なめでした。
pHは6.3、水分活性は0.85という値が得られており、この結果からは、ジュブンが微生物による変質をある程度受けやすい可能性があり、保存できる期間には限りがあることが示唆されています。
官能評価では、全体的に高い評価(7.0を超えるスコア)が得られ、なかでも味(7.8)と食感(7.5)が特に好まれる項目として挙げられました。こうした結果から、研究チームは、ジュブンが商品化に向けて有望な特性を持つ一方で、保存性や栄養面での改善が今後の課題になるとまとめています。具体的には、包装方法の工夫による保存性の向上や、伝統的な特徴を保ちながら付加価値を高めた新しい製品づくりが今後の方向性として挙げられています。
この研究の位置づけ・読むうえでの注意
この研究は、ジュブンという特定の伝統食を対象に、ある条件下で測定・評価を行った一つの研究です。得られた数値や評価結果は、原料や作り方、評価に参加した人などの条件に左右される可能性があり、この結果だけでジュブン全般の特徴や、保存性・嗜好性についての結論が確定したわけではありません。今後、さらに研究が積み重ねられていくことで、より詳しい実態が明らかになっていくものと考えられます。
まとめ
今回の研究では、インドネシア・グレシック県の伝統食ジュブンについて、炭水化物を中心とした栄養成分の特徴と、味や食感を中心に高く評価される嗜好性が示された一方で、pHと水分活性の値からは保存性に課題があることも示されました。伝統食が持つ魅力を活かしながら、どのように保存性や栄養価を高めていくかは、今後の研究や製品開発における一つのテーマといえそうです。
※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:グレシック県の伝統食品ジュブンの理化学分析と消費者受容性(シュプリンガーリンク(千葉工業大学)・2026年07月)