中東地域などで親しまれている水切りヨーグルト「ラブネ」。なめらかな食感とさっぱりした酸味が特徴のこの乳製品に、果実の風味を加えて楽しみやすくできないか——そんな視点から行われた研究が、チェコ・フード・サイエンス・ジャーナルに掲載されました。フリーズドライ(凍結乾燥)した果実の粒や、果実由来のフレーバーをラブネに加え、味や品質、保存中の安全性にどのような影響が出るのかを調べたものです。
研究でわかったこと
研究チームは、まずイチゴ・ブラックベリー・キウイのフリーズドライ果実片を6%配合した「果実入りラブネ」と、同じ3種の果汁由来フレーバー0.1%と着色料0.01%を加えた「フレーバー入りラブネ」をそれぞれ試作しました。いずれのタイプも、発酵後にさらに加熱殺菌処理を行い、熱いうちに容器に充填する工程を経ています。これらのサンプルについて、保存1日目・7日目・15日目・30日目のタイミングで、物理化学的な性質、微生物の状態、そして官能評価(人による味や食感の評価)が調べられました。
物理化学的な特性については、無添加のプレーンなラブネと比べて、果実片入りのサンプルは水分以外の固形分(乾物量)が増える傾向がみられましたが、キウイを加えたものだけは例外だったとされています。一方で、水分活性(食品中の自由な水分の割合を示す指標)と脂肪分はいずれの果実入りサンプルでも減少し、酸度やpHの変化は加えた果実の種類によって異なっていたと報告されています。
安全性に関わる微生物検査では、一般的な指標となる好気性中温細菌の数が1グラムあたり1.5×10¹〜8.1×10¹コロニー形成単位という低い範囲にとどまり、腸内細菌科や大腸菌、酵母・カビ類はいずれのサンプルからも検出されなかったとされています。これらの結果は、発酵後の加熱処理によって製品の安全性が良好に保たれていたことを示唆していると研究では述べられています。
ただし課題も見つかりました。キウイの果実片を加えたサンプルでは、保存期間中に離水(ホエーなどの水分が分離する現象)や苦味の増加といった構造上の欠点が確認されたとされています。官能評価では、パネリスト(味の評価を行う人たち)による評価の結果、イチゴフレーバー、ブラックベリーフレーバー、そしてイチゴ果実片入りのラブネが、特に好まれる傾向にあったと報告されています。
この研究の位置づけ・読むうえでの注意
この研究は、果実やフレーバーを加えたラブネという乳製品の新しいバリエーションについて、品質と安全性の両面から特性を調べた一つの研究です。研究では、発酵後に加熱処理を加えるという製法によって、微生物学的な安定性と官能面での受容性を両立できる可能性が示されたとまとめられていますが、これは今回試験された条件下での結果であり、あらゆる製法や保存条件に当てはまると断定されたものではありません。また、キウイを使った場合には離水や苦味増加といった品質面の課題も報告されており、果実の種類によって適性が異なる可能性がある点にも留意が必要です。
まとめ
フリーズドライ果実やフレーバーを加えたラブネは、発酵後の加熱処理と組み合わせることで、安全性と品質を保ちながら風味のバリエーションを広げられる可能性があると報告されています。特にイチゴやブラックベリーを使ったタイプは官能評価で好まれる傾向がみられた一方、キウイでは保存中に品質面の課題がみられた点も含め、今後の製品開発における一つの知見として興味深い内容と言えそうです。
※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:フリーズドライ果実または果実フレーバーによるラブネのおいしさ向上:物理化学的・微生物学的・官能特性への影響(チェコ・フード・サイエンス・ジャーナル・2026年06月)