五月の風とともに届く新茶は、「一年でいちばん体にいいお茶」というイメージを持つ方も多いのではないでしょうか。若々しい緑色と爽やかな香り、そして「初物は縁起がいい」という日本人ならではの感覚が、新茶を特別な存在に仕立ててきました。しかし、「体にいい」という印象は、実際のデータに裏打ちされたものなのでしょうか。今回は、新茶緑茶煎茶)の関係を科学的な視点から掘り下げてみます。

この時期に注目したい栄養素

緑茶に含まれる代表的な成分として知られるのが、カテキン類(ポリフェノールの一種)、カフェイン、そしてテアニンです。なかでも近年注目されているのが、うま味と深く関わるアミノ酸の一種、テアニンです。

農林水産省の研究機関である農研機構の情報によれば、新茶一番茶)はテアニン含量が比較的高い傾向があるとされています(出典:農研機構)。テアニンは、冬の間に茶樹の根に蓄積され、萌芽とともに新芽へと移行します。春先の柔らかい芽に多く含まれるのが、新茶ならではの特徴のひとつです。一方、二番茶三番茶になると、テアニンの一部が紫外線の増加とともにカテキンへと変換されていくことが知られています。

では、カテキンについてはどうでしょうか。カテキンは渋味の元となる成分で、抗酸化作用との関連が研究されていますが、実は新茶よりも夏以降に摘まれるお茶のほうが含量が高くなる場合があります。つまり、「新茶=カテキンが多い=体にいい」という単純な図式は、必ずしも成り立たないのです。

おすすめ食品とその数値データ

今回、当システムのデータベースに格納されている緑茶新茶の詳細数値データは確認できませんでしたが、公的機関の情報をもとに主要成分を整理します。

農林水産省が公開している茶の品質・成分に関する情報によれば、一番茶新茶)の茶葉100gあたりのテアニン含量は、二番茶以降と比較して高い水準にある傾向が報告されています(出典:農林水産省)。また、抹茶玉露のように遮光栽培を行う場合はさらにテアニンが増加することも知られています。

一方、カテキンの総量については、独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)の報告において、一番茶よりも二番茶三番茶のほうが高くなるケースが多いとされています(出典:農研機構)。

つまり、新茶はテアニンによる「まろやかなうま味」と「穏やかな風味」に優れており、普段の煎茶は渋味成分であるカテキンをより多く含む、という棲み分けが見えてきます。どちらが「体にいい」かは、何を目的にするかによって異なるのです。

毎日の食事への取り入れ方

新茶をより豊かに楽しむためのポイントをご紹介します。

  • 低めのお湯で淹れる:テアニンは70℃前後のぬるめのお湯でもよく溶け出します。一方、高温ではカフェインや渋味成分が出やすくなります。新茶の季節には、あえてぬるめのお湯でゆっくり楽しむのがおすすめです。
  • 食事と組み合わせる:お茶は食事と一緒にとることで、口の中をすっきりさせ、食事全体の満足感を高めます。和食はもちろん、洋食や中華との組み合わせも試してみてください。
  • 茶葉ごと食べる「食べるお茶」:茶葉には、お湯に溶け出さない脂溶性のビタミン類や食物繊維も含まれています。新茶の季節限定で、天ぷらや和え物に茶葉をそのまま使うのも一つの楽しみ方です。
  • 年間を通じた飲み分け:新茶はテアニンを活かした穏やかな一杯として、夏以降の煎茶は渋味を活かした食中茶として、季節ごとに使い分けると、緑茶をより豊かに生活に取り入れられます。

まとめ

新茶が「体にいい」という印象は、テアニンなどの成分が豊富という点では根拠のある話です。しかしカテキンなど別の成分に注目すれば、普段の緑茶にも異なる良さがあります。大切なのは、どれかひとつを「特別視」するのではなく、季節ごとのお茶の個性を楽しみながら、日常の一杯を大切にすることかもしれません。新緑の季節、ぜひ手のひらに温かいお茶を包んで、その香りをゆっくり味わってみてください。

詳細は厚生労働省の最新資料をご確認ください。

※本記事は日本食品標準成分表(八訂)のデータ等をもとに作成しました。