「特定の食べ物を食べるとお腹の調子が悪くなる」「肌や鼻に症状が出る」——こうした食物アレルギーや食物不耐症(まとめて「食物過敏症」と呼ばれます)に悩む人は少なくありません。今回紹介するのは、食物過敏症のある人とない人とで、食事内容や体内の栄養状態、腸の炎症状態にどのような違いがあるのかを調べた研究です。舞台はレバノンで、成人775人という比較的大規模な集団を対象にしています。食物過敏症のある人は普段の食生活が乱れているのか、それとも栄養はきちんと摂れているのに何か別の要因があるのか——そんな素朴な疑問に迫った内容です。
どのように調べたのか
この研究は「症例対照研究」と呼ばれる手法で行われました。食物アレルギーや食物不耐症が自己申告された人(症例群、378人)と、そうした症状のない人(対照群、397人)を比較する方法です。研究チームは、社会的・生活習慣的な背景、症状の有無、食事内容(検証済みの食事調査ツールを使用)に加え、血液検査の値(775人全員)、便検査(297人)、腸の炎症マーカーである便中カルプロテクチンなどを幅広く調べました。
研究でわかったこと
まず症状の面では、食物過敏症のある人(症例群)は、対照群に比べて皮膚症状、鼻の症状、呼吸器症状、消化器症状のいずれもが有意に多く見られたと報告されています。また、自己免疫疾患を持つ人の割合も症例群で高かったとされています。
食事内容についても両群で有意な差が見られ、症例群は全体的にエネルギーや栄養素の摂取量が対照群より少ない傾向にあったとのことです。さらに血液検査では、症例群で血清ビタミンD、ビタミンB12、そしてヘマトクリット値(血液中の赤血球の割合)が明らかに低い結果となりました。
統計的な分析(二項ロジスティック回帰分析)からは、抗酸化作用や免疫調整に関わる特定の栄養素の摂取量が、食物過敏症の有無と関連していることが示されました。具体的には、ビタミンC、食事由来のビタミンD、ビタミンE、そして鉄の摂取量が少ないことが、食物過敏症と統計的に関連する独立した要因として挙げられています。
研究チームは、こうした結果について、全体としては食事摂取量がおおむね適切な範囲にあったにもかかわらず、生化学的・栄養学的な違いが見られた点を指摘しています。そのうえで、抗酸化ビタミン(ビタミンC・E)やビタミンD、必須ミネラルである鉄といった重要な微量栄養素の摂取不足が、食物過敏症の主要な独立した予測因子として浮かび上がったとまとめています。これらの結果は、局所的な腸管の炎症、特定の食品を避ける行動、そして全身の免疫調整といった要素が関わっている可能性を示唆するものだとしています。
この研究の位置づけ・読むうえでの注意
この研究は、食物過敏症のある人とない人を比較した一つの症例対照研究であり、栄養素の摂取不足が食物過敏症を「引き起こす」と断定するものではありません。あくまで統計的な関連が示されたという段階であり、因果関係や、特定の栄養素を補うことで症状が改善するかどうかについては、この要旨からは判断できません。また対象はレバノンの成人775人という特定の集団であるため、他の国や地域の人にそのまま当てはまるとは限らない点にも留意が必要です。
まとめ
今回紹介した研究では、食物過敏症のあるレバノンの成人は、症状面だけでなく食事内容や血液検査の値においても対照群と違いが見られ、特にビタミンC・D・E、鉄といった微量栄養素の摂取量の少なさが食物過敏症と関連する独立した要因として示されました。研究チームは、腸の局所的な炎症や食品を避ける行動、全身の免疫調整が関わっている可能性を指摘しています。今後、こうした関連がどのような仕組みで生じているのかについて、さらなる研究が期待されるところです。
※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:食物過敏症を有するレバノン人成人の栄養プロファイル、生活習慣特性、腸管炎症:症例対照研究(ニュートリエンツ・2026年07月)