お酢は昔から発酵食品として親しまれてきましたが、その原料や作り方によって含まれる成分や機能性が変わることが知られています。今回紹介するのは、中国などで薬用・食用として使われてきた果実「サンザシ」を使った酢、いわゆる「サンザシ酢」に関する研究です。サンザシ酢にはフェノール類などの成分が含まれており、健康に関わる働きが期待される食品として研究が進められています。この研究では、「超音波処理」と「オーミック処理(通電加熱)」を組み合わせた新しい加工方法に注目し、機械学習の手法を使ってその処理条件を最適化する試みが行われました。

研究チームは、超音波の強さ(振幅40〜80%)や照射時間(2〜6分)、オーミック処理の電界強度(20〜40V/cm)や加熱時間(2〜6分)という4つの条件を組み合わせ、27通りの実験パターン(Box–Behnken実験計画法)を設計しました。そのうえで、糖の消化に関わる酵素であるα-グルコシダーゼとα-アミラーゼの働きをどれだけ抑えられるか(阻害活性)を指標に、13種類の機械学習アルゴリズムを比較検討しています。その結果、「Lasso Poly2」というモデルが両方の酵素阻害活性の予測において最も高い性能を示し、予測精度を示すCV R2値はそれぞれ0.9301、0.9299、誤差を示すMAPE値は1%未満と報告されています。さらに、粒子群最適化(PSO)や差分進化(DE)、グレイウルフ最適化(GWO)といった異なる最適化アルゴリズムを使っても、似たような最適処理条件に収束したとされ、見つかった条件がある程度頑健であることが示唆されています。この最適条件のもとで実際に測定したところ、α-アミラーゼ阻害活性は39.27±1.36%、α-グルコシダーゼ阻害活性は37.54±0.53%であったと報告されています。

また、この超音波-オーミック処理を行ったサンザシ酢は、熱による通常の殺菌処理を行ったものや未処理のものと比べて、フェノール類の含有量が有意に高まったとされています。具体的には、クロロゲン酸、カテキン水和物、カフェイン酸、ルチン、ナリンギン、レスベラトロール、ケルセチンといった成分の増加が確認されたと報告されています。加えて、5種類のフェノール化合物についてコンピューター上で酵素との結合しやすさを調べる「分子ドッキング解析」も行われ、α-アミラーゼに対してはナリンギン(−7.40 kcal/mol)、α-グルコシダーゼに対してはクロロゲン酸(−7.17 kcal/mol)が、それぞれ最も強い結合親和性を示したことが報告されています。

この研究の位置づけと読むうえでの注意

この研究は、機械学習を活用した新しい加工条件の最適化によって、サンザシ酢に含まれるフェノール成分や、糖の消化に関わる酵素の阻害活性が変化しうることを示したものです。ただし、ここで示された酵素阻害活性やフェノール成分の増加は、あくまで実験室レベルでの測定結果や分子レベルでのシミュレーション(分子ドッキング解析)に基づくものであり、実際に人がサンザシ酢を摂取した場合の健康への影響を直接示したものではない点に注意が必要です。また、これは一つの研究であり、結論が確定したわけではありません。今後、他の条件や方法による検証、あるいはヒトを対象とした研究などを通じて、さらに知見が積み重ねられていくことが期待されます。

まとめ

今回紹介した研究では、超音波処理とオーミック処理を組み合わせた加工方法について、機械学習を用いて条件を最適化することで、サンザシ酢に含まれるフェノール成分の増加や、糖の消化に関わる酵素の阻害活性の変化が見られたことが報告されています。食品の加工技術と機械学習を組み合わせたこうした研究は、今後の食品開発における一つのアプローチとして注目されます。

※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:サンザシ酢の超音波-オーミック処理の機械学習支援最適化:抗糖尿病活性、フェノール類プロファイリング、分子ドッキング解析(フロンティアーズ・イン・ニュートリション・2026年07月)