お餅は、もちもちとした食感が魅力の一方で、高齢者にとっては喉に詰まらせるリスクがある食品としても知られています。特に韓国の伝統菓子「ヨモギインジョルミ(쑥인절미)」は、ヨモギを練り込んだもち米の餅で、昔ながらの製法では蒸して作られてきました。しかし、血糖値を上げやすい性質(グリセミック指数が高いこと)や食物繊維の少なさ、そして粘着性の強い食感が、高齢者の食事としては課題視されてきました。今回紹介する研究は、こうした伝統菓子を高齢者にも食べやすく、栄養的にも配慮した形に作り替えられないかを検証したものです。

研究チームは、もち米の一部を玄米とオーツ麦粉に置き換えた4種類の配合(もち米100%のGR100を基準に、玄米・オーツ麦を混ぜたGR80、GR70、GR65)のヨモギインジョルミを作成しました。そのうえで、伝統的な「蒸し調理」と、比較対象としての「茹で調理」の2つの方法で仕上げ、色合い、食感(硬さや粘着性など)、調理後の水分の含み具合、栄養成分、そして推定されるグリセミック指数(食後の血糖値の上がりやすさの指標)にどのような違いが出るかを調べました。

研究でわかったこと

まず調理方法の比較では、蒸したものは茹でたものに比べて、色が明るく、水分をより多く保持し、硬さや噛みごたえが低く抑えられる傾向が一貫して見られたと報告されています。これは、蒸すことで熱が間接的かつ均一に伝わり、でんぷんの糊化(加熱によって組織が変化する現象)がより均質に進んだためと考察されており、この結果から蒸し調理が伝統的にも科学的にもヨモギインジョルミに適した方法であることが裏付けられた、とされています。

次に、蒸し調理をした配合同士を比べると、もち米・玄米・オーツ麦を70:20:10の割合で混ぜたGR70が、噛みごたえ・ガム感・粘着性のいずれにおいても、他の代替配合の中で最も好ましい食感バランスを示したとのことです。粘着性が抑えられれば、喉に詰まりにくくなる可能性につながる点として注目されます。

栄養面では、玄米・オーツ麦への置き換えを進めるほど食物繊維量が段階的に増加し、もち米100%のGR100では100gあたり1.22gだったのに対し、GR70では2.51gまで増えたことが示されています。また推定グリセミック指数も82から77.6へと低下したと報告されており、これはオーツ麦に含まれるβ-グルカンや玄米のぬか由来の食物繊維が持つとされる血糖値上昇抑制的な働きと矛盾しない結果だとされています。一方でカロリーについては、どの配合でも100gあたり224~235kcalとほぼ同程度に保たれていたということです。

これらを総合し、研究チームは蒸し調理によるGR70の配合が、粘着性の低減、対照群の2倍以上に達する食物繊維量、そして推定グリセミック指数の低下を同時に実現した、最も好ましい改良版であると結論づけています。

この研究の位置づけ・読むうえでの注意

この研究は、食品の配合や調理法を変えることで、色・食感・水分・栄養成分・推定グリセミック指数といった特性がどう変化するかを実験室的に検証したものであり、実際に高齢者がこの改良版ヨモギインジョルミを食べた際の安全性や食べやすさ、あるいは健康への効果そのものを直接評価したものではない点には留意が必要です。あくまで一つの研究であり、結論が確定したわけではありません。また、ここで示されたグリセミック指数は「推定値」であることも紹介文の内容として押さえておきたいポイントです。

研究チームは、こうした「根拠に基づいた穀物代替」と「伝統的な蒸し調理」を組み合わせる手法が、ヨモギインジョルミという文化的な意味を持つ食品の個性を損なうことなく栄養面や食感面の質を高められる可能性を示すものであり、他の伝統的なもち米料理にも応用できる再現性のある改良の枠組みになり得ると述べています。

まとめ

今回紹介した研究では、韓国の伝統菓子ヨモギインジョルミについて、もち米の一部を玄米とオーツ麦粉に置き換え、蒸し調理を用いることで、食感の粘着性を抑えつつ食物繊維を増やし、推定グリセミック指数を下げられる可能性が示されました。伝統食を大きく変えることなく、高齢者を含む幅広い世代にとってより食べやすく、栄養バランスにも配慮した形へ改良していくアプローチとして、今後の展開が注目されます。

※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:穀物代替と調理方法が高齢消費者向け韓国伝統食「ヨモギインジョルミ(쑥인절미)」の品質特性と栄養特性に及ぼす影響(ジャーナル・オブ・エスニック・フーズ・2026年06月)