毎日の食事に含まれる植物由来の成分が、体の中でどのように吸収されているのか——そんな素朴な疑問に、科学の光が当たり始めています。近年注目されているのがポリフェノール(植物が持つ色素や苦み・渋みのもととなる生理活性成分の総称)の摂取量と、食事スタイルの関係です。

研究でわかってきたこと

2026年5月にフード・アンド・ファンクション誌に掲載された研究では、792名の参加者を対象に、雑食(オムニボア)とさまざまな植物性食品中心の食事(プラントベースダイエット、以下PBD)を実践する人々のポリフェノール摂取状況が比較されました。食事調査には175項目の食物摂取頻度調査票が使用され、さらに200名からは早朝尿のサンプルを収集。尿中のポリフェノール濃度を液体クロマトグラフィー・タンデム質量分析法(LC-MS/MS)という精密な分析手法で測定することで、実際に体内に吸収された量も評価しています。

この研究では、PBDを実践するグループは雑食のグループと比較して、食事からのポリフェノール総摂取量が高い傾向にあることが報告されています。また、ヴィーガン(完全植物性食)のグループでは、野菜がポリフェノール摂取全体の約20.8%、果物が約10.4%を占めていたとされており、他のグループとは異なるパターンが見られたと示されています。さらに、食事アンケートから推定したポリフェノール量と、尿中の実測値との間にも統計的に意味のある相関が示唆されており、食事の内容が体内でのポリフェノール吸収量に反映されうることが読み取れます。

この研究はあくまで観察的なものであり、特定の食事スタイルが健康に直結するとは断定できませんが、食事パターンとポリフェノールの摂取・吸収に関係がある可能性を示す興味深い知見といえるでしょう。

注目の食品と実測データ

ポリフェノールを豊富に含む植物性食品として代表的なのが、色の濃い野菜や果物、豆類、緑茶などです。今回の研究でも、ヴィーガングループにおいて野菜・果物がポリフェノールの主要な供給源となっていたことが報告されています。

日本の食卓でなじみ深い食品についても、公的機関のデータからその特徴を確認できます。例えば、大豆製品に含まれるイソフラボン(ポリフェノールの一種)については、農林水産省が大豆イソフラボンに関する情報を公表しており、日本人が伝統的に豆腐味噌納豆などを通じてイソフラボンを摂取してきたことが知られています(出典:農林水産省「大豆イソフラボンについて」)。また、緑茶に含まれるカテキン類もポリフェノールの一種であり、農林水産省の資料によれば日本人の食生活において緑茶は身近なポリフェノール供給源のひとつとして挙げられています(出典:農林水産省「緑茶の機能性成分」)。

今回の論文で使用されたPhenol-Explorerデータベースは、食品ごとのポリフェノール含有量を網羅的に収録した欧州発のデータベースです。日本食品標準成分表(八訂)では各栄養素の詳細な実測値が公表されていますが、ポリフェノール含有量については引き続き研究が積み重ねられている段階です。食品ごとのポリフェノール量を正確に把握するには、今後のデータ蓄積が待たれます。

日々の食事に取り入れるヒント

研究の知見をふまえ、日常の食事でポリフェノールを意識的に取り入れるためのヒントをいくつか紹介します。

  • 色の多様な野菜・果物を意識する:赤・紫・橙・緑など、さまざまな色の野菜や果物にはそれぞれ異なる種類のポリフェノールが含まれている可能性があります。毎食の皿の上を「カラフル」にすることが、自然なポリフェノール摂取につながると考えられています。
  • 大豆製品を日常使いする:豆腐納豆味噌豆乳など、日本の伝統的な大豆食品はイソフラボンの供給源として食卓に取り入れやすい食品です。和食の基本に立ち返ることが、ポリフェノール摂取の第一歩かもしれません。
  • 緑茶・ハーブティーを飲み物として活用する:食事の飲み物として緑茶を選ぶことで、カテキンなどのポリフェノールを手軽に補うことができます。砂糖を加えずに楽しむのがポイントです。
  • 精製度の低い穀物を選ぶ:白米より玄米、白パンより全粒粉パンのように、精製度の低い穀物を選ぶことで、穀物の外皮に含まれるポリフェノール類をより多く摂れる可能性があります。
  • 完全な食事スタイルの変更は不要:今回の研究はPBDを実践するグループに着目したものですが、雑食の方でも野菜・果物・豆類を意識的に増やすことで、ポリフェノール摂取量の底上げにつながる可能性があります。

まとめ

食事スタイルとポリフェノールの摂取・吸収の関係は、まだ解明途上の分野ですが、植物性食品を豊富に取り入れる食事がポリフェノールの摂取量と関連するという研究結果は、日々の食卓を見直すきっかけになりそうです。特定の食品や食事法に偏るのではなく、多様な植物性食品をバランスよく取り入れることが、長く続けられる食習慣の土台となるでしょう。まずは今日の一皿に、もう一種類の野菜や果物を加えることから始めてみませんか。

※本記事は日本食品標準成分表(八訂)のデータ等をもとに作成しました。参考文献:(Poly)phenol profiles of plant-based diets assessed through dietary intake and urinary biomarkers(フード・アンド・ファンクション(2026-05-18))