チョコレートやカカオ製品をつくる過程では、豆の一部が「副産物」として大量に発生します。こうした農業・食品加工の副産物をどう活用するかは、食品ロスを減らす観点から世界的に関心が高まっているテーマです。今回紹介する研究は、そんなカカオ加工の副産物である「カカオ繊維」を、微粉末にしてパスタの材料に混ぜてみたらどうなるか、を調べたものです。
研究でわかったこと
この研究では、デュラム小麦のセモリナ粉の一部を、微粉化したカカオ繊維(CF)に置き換えてパスタを試作しました。置き換えの割合は2%、4%、6%、8%の4段階で、生地の加工特性や粘弾性(レオロジー特性)、成分組成、茹でたときの品質、ポリフェノールなど生理活性成分の量、色、そして食べたときの官能評価まで、幅広く分析されています。
まず生地の性質については、カカオ繊維を加えることで生地の水分吸収量が有意に増加し、生地のこね具合(レオロジー特性)にも変化が見られたと報告されています。栄養面では、総食物繊維量が、置き換えなしの対照群で乾物あたり8.09%だったのに対し、8%置き換えたCF8では15.17%まで増加しました。4%置き換えたCF4でも11.30%となり、これは全粒粉パスタに典型的にみられる水準に相当するとされています。一方でたんぱく質含量はわずかに減少(15.44%から14.39%)し、灰分(ミネラル分の指標)は有意に増加(0.99%から1.47%)したことが示されています。
調理面では、茹で時間が短くなり、茹で汁への溶出量(調理損失)は増加したものの、パスタとして許容される目安とされる8%は下回っていたとのことです。また、カカオ繊維を加えるほど総フェノール量やフラボノイド量、抗酸化活性が有意に高まったと報告されていますが、加熱調理後にはその一部が減少することも確認されています。色については、パスタの色調が暗く、赤みを帯びた方向へと大きく変化した(色差ΔE*は最大38.89)とされています。
気になる「おいしさ」についてですが、官能評価では総合的な受容性に有意な低下は見られず、むしろカカオ繊維の添加量が多いほど香りや風味の評価が向上したことが示されています。
この研究の位置づけ・読むうえでの注意
この研究は、カカオ繊維をパスタに応用した場合の加工特性や成分、品質への影響を確認した一つの研究であり、健康への効果や効能を証明したものではありません。食物繊維や抗酸化成分の量が増えたことや、官能評価での受容性が保たれたことが示されている一方で、たんぱく質含量がやや減少する点や、色調が大きく変化する点など、トレードオフとなりうる要素も報告されています。今回の結果は特定の条件下での試作パスタに関するものであり、実際の商品化や、より幅広い集団での評価については、要旨からは読み取れません。
まとめ
今回紹介した研究では、カカオ加工の副産物である微粉化カカオ繊維をデュラム小麦パスタに取り入れることで、食物繊維量やポリフェノールなどの生理活性成分を増やしつつ、官能的な受容性も大きく損なわれない可能性が示されました。研究者らは、これを循環経済の観点からカカオ副産物を有効活用する一つのアプローチとして位置づけています。食品副産物の活用という切り口から、今後どのような展開があるか注目される分野といえそうです。
※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:カカオ加工副産物であるカカオ繊維のパスタ製造への応用(アプライド・フード・リサーチ・2026年07月)