作り置きのおかずを考えるとき、「たんぱく質が多い食材を使おう」と食品成分表を開くと、必ず上位に顔を出す食材がある。凍り豆腐(乾)だ。可食部100gあたりたんぱく質50.5g——女性30〜49歳の1日推奨量50gを101%まかなう数字は、豆類の中でも際立って高い(推奨量は年齢・性別・身体活動量により異なる)。だがこの数字、そのまま額面通りに受け取ってよいかどうか、実際に一度に食べる量に換算すると話が変わってくる。
「100gあたり」と「一食量」は別物
凍り豆腐は乾燥食品であり、提供データにある目安量は1個約20g。100gあたり50.5gというたんぱく質の値は、あくまで乾燥状態100g分の数字だ。実際に煮物や汁物に使う1個20gに換算すると、たんぱく質は約10g——推奨量の約20%にとどまる。100g(5個分)を一人で一度に食べる機会はまずないから、「100gで推奨量を超える」という印象と現実の摂取量の間には、大きな開きがある。
こうした乾物の数字は「密度が高い=少量でも効率的」という長所を示す一方で、実際の一食量は少ないという事実とセットで読む必要がある。成分表の数字を実食量に落として初めて、食材の「頼れる度」が見えてくる。そこで以下では、各食材を実際に使う1個・1パックあたりの量にそろえて比べ直す。
実食量で比べ直す——納豆・蒸し大豆との差
同じ大豆由来の食材で、一食量ベースで比べてみる。
糸引き納豆は可食部100gあたりたんぱく質16.5g。市販品は1パック40〜50g入りが主流のため、1パック(約45g)に含まれるたんぱく質は約7gで、女性30〜49歳の推奨量50gの約15%にあたる。パックをあけてそのまま食べられる手軽さは、作り置き視点ではゼロ手間という強みだ。食塩相当量は100gあたり0g(日本食品標準成分表八訂)で、減塩の観点からも使いやすい。
蒸し大豆(黄大豆)は可食部100gあたりたんぱく質16.6g。市販の蒸し大豆は1パック100g前後で売られているものが多く、1パック(約100g)ではたんぱく質16.6g、推奨量の約33%にあたる。封を切ってサラダや炒め物に加えるだけで一食分のたんぱく質源になる。食物繊維総量も100gあたり10.6gと豊富だ。
凍り豆腐は1個20gでたんぱく質約10g、推奨量の20%程度。それでもだしを吸った食感は他の食材に代えがたく、2〜3個まとめて煮ておけば比例して量も増える。ただし複数個使う場合は料理全体のたんぱく質バランスや食塩量(だし・調味料を含む)も考慮して量を調整したい。腎疾患などでたんぱく質制限がある場合は、医師や管理栄養士に相談した上で使用量を決めること。
なお、切り干しだいこんはたんぱく質に関しては別の立ち位置にある。ゆでた状態の切干しだいこん(ゆで)は100gあたりたんぱく質0.9g、推奨量の2%。食物繊維総量3.7gを含むミネラル補給や副菜として優秀な一方で、たんぱく質の主力としては考えにくい。作り置きの献立でたんぱく質を稼ぐ主役は、やはり豆・大豆製品に任せるのが合理的だ。
作り置きで頼れる順番はこう決まる
実際に一度に食べる量にそろえて整理すると、作り置きでたんぱく質を安定してとる食材の序列はこう見えてくる。
- 蒸し大豆(1パック約100g)——たんぱく質16.6g(推奨量の約33%)。1パックでそのまま一食分になり、サラダ・炒め物・スープに加えるだけで完結する。
- 凍り豆腐(1個約20g)——たんぱく質約10g(推奨量の約20%)。100gあたりの密度は高いが一食の使用量は限られる。複数個使えば比例して増えるが、料理全体の食塩量やたんぱく質バランスを確認して調整を。腎疾患等でたんぱく質制限がある場合は医師・管理栄養士に相談を。
- 納豆(1パック約45g)——たんぱく質約7g(推奨量の約15%)。加熱不要で賞味期限内なら毎日そのまま食べられる即戦力。市販の1パックは40〜50g程度のものが多いので、量は購入品の表示を確認しよう。
一食量で常備を組み立てる
蒸し大豆を1パック使えば一食で推奨量の約3割、これに納豆を1パック足せば計5割弱のたんぱく質が、火を使わずそろう。煮物に凍り豆腐を2〜3個加えれば、別の一食でさらに2〜4割を上積みできる。冷蔵庫に蒸し大豆と納豆を常備し、凍り豆腐を煮物にまとめて仕込む——この3食材を一食量で回せば、作り置きのたんぱく質は安定する。要は、成分表の数字は100gあたりのポテンシャルとして読み、実際に使う1個・1パックの量に割り直してから食材を選ぶ、その一手間に尽きる。
※本記事は日本食品標準成分表(八訂)のデータ等をもとに作成しました。
栄養素のはたらき・摂取基準の記述は、次の公的資料に基づきます:厚生労働省 食事摂取基準