著者の所属・活動拠点の国は、中国です。
掲載誌:PubMed
ライセンス: CC BY 4.0 対象: 公開論文 確認元: Europe PMC
研究の目的
口腔がんは世界で多くみられる悪性腫瘍の一つで、患者の生活の質や生存に大きく影響します。喫煙や飲酒、家族歴が主な危険因子として知られていますが、食事の影響にも関心が集まっています。研究チームが注目したのは、ウコンなどに含まれる天然化合物クルクミンです。これまでの細胞実験などでは、クルクミンが口腔がん細胞の増殖を抑えるといった報告があります。
著者らは、クルクミンを含む食品をよく食べる人ほど口腔がんの割合が低いのではないかという仮説を立てました。そのうえで、口腔がんのある人とない人の特徴や食習慣を比べること、食べる頻度と口腔がんとの関係を調べること、食事の要因を組み込んだ予測モデルの性能を評価することを目指しました。
何をどのように調べたか
研究チームは、米国の国民健康栄養調査(NHANES)の2003〜2004年の公開データを使いました。この調査は米国の一般住民を代表するよう設計された横断調査で、ある一時点の状態をまとめて調べるものです。分析対象は2762人で、そのうち口腔がんのある人は59人、ない人は2703人でした。口腔がんの有無は、口腔がん・舌がん・唇のがんと診断された年齢を問う質問への回答、つまり本人の申告に基づいて判断されています。
食事については、著者らがクルクミンを含む食品として扱ったオレンジとニンジンを食べる頻度を「食べない」「まれに(月1〜2回)」「ときどき(週1〜2回)」「よく(週3回以上)」の4段階に分けました。年齢、性別、学歴、世帯収入、喫煙、飲酒などの要因も考慮し、統計的な比較に加えて、多数の決定木を組み合わせて分類する「ランダムフォレスト」という機械学習の手法で予測モデルも作成しました。
主な結果
口腔がんのある人のグループでは、オレンジやニンジンを「食べない」と答えた人の割合が、ない人のグループより高くなっていました。ほかの要因を調整した分析でも、「食べない」人と比べ、それ以外の頻度で食べている人では口腔がんがある可能性が低いという関連が報告されています。オレンジとニンジンのいずれも、食べる頻度が高くなるほど口腔がんのある人の割合が下がる傾向がみられました。
このほか、学歴が低いことや世帯収入が少ないこと、現在喫煙していることや飲酒も、口腔がんと関連していました。予測モデルでは、オレンジとニンジンを食べる頻度が、学歴に次いで予測に重要な要因とされました。モデルが口腔がんのある人とない人を見分ける能力を示す指標(AUC、1に近いほど良い)は0.89と報告されています。
この研究が示すこと
著者らは、クルクミンを含むとされる食品をよく食べることと、口腔がんの割合が低いこととの間に関連がみられたとしています。ただし、これは一時点の調査データを分析した横断研究であり、食事が口腔がんを防いだという因果関係までは示せないと著者ら自身が述べています。また、データからは実際のクルクミン摂取量は分からず、食習慣や病気の有無は本人の申告に頼っています。口腔がんのある人が59人と少ない点にも留意が必要です。
この研究は、日々の食習慣と口腔がんとのつながりを、喫煙や飲酒、社会経済的な要因と並べて大規模な調査データから検討した一つの試みと言えます。
著者:Yi-Yang Zhao(Dentist, Department of Stomatology,The Second Hospital of Shijiazhuang, Shijiazhuang, Hebei, P.R. China)、Yuan Lai(Dentist, Department of Stomatology, The Fourth Affiliated Hospital of Hebei Medical University, Shijiazhuang, Hebei, P.R. China)、Hao-Ran Duan(Dentist, Department of Stomatology, The Fourth Affiliated Hospital of Hebei Medical University, Shijiazhuang, Hebei, P.R. China)、Zi-Ying Ji(Dentist, Department of Stomatology, Baoding Fourth Central Hospital, Baoding, Hebei, P.R. China)、Tian-Ke Li(Dentist, Department of Stomatology, The Fourth Affiliated Hospital of Hebei Medical University, Shijiazhuang, Hebei, P.R. China)、Wei Sun(Dentist, Department of Stomatology, The Fourth Affiliated Hospital of Hebei Medical University, Shijiazhuang, Hebei, P.R. China)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Yi-Yang Zhao, Yuan Lai, Hao-Ran Duan, et al. Analysis of Dietary Patterns Containing Curcumin and Oral Cancer.. PubMed 2026-09-29. DOI: 10.3290/j.ohpd.c_2832. 原著ライセンス:CC BY.