著者の所属・活動拠点の国は、クロアチアです。

掲載誌:Plants

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

ニンニクは種子ではなく、球根の一片(りん片)を植えて増やす作物です。そのため、各地で受け継がれてきた在来の系統を保存することが、品種の多様性を守るうえで重要になります。近代的な農業や単一作物の大規模栽培、環境の悪化、気候変動によって遺伝的な多様性が失われつつあるなか、優れた性質を持つ可能性がある伝統的な系統への関心が高まっています。

クロアチアの研究チームは、多くのニンニク系統を外見の特徴で整理したうえで、その外見のタイプ(形態型)、系統の由来地域、栽培した年度のどれが成分の違いと関係しているかを調べました。とくに、花茎(とう)を伸ばすかどうかのように見分けやすい特徴から成分の質を推し量れるかどうかを確かめることが狙いでした。

何をどのように調べたか

対象は77系統です。クロアチア国内の55系統(内陸部13、イストリア・クヴァルネル地方22、ダルマチア地方20)と、オーストラリア、フランス、イタリア、ロシアなど14か国から集めた22系統が含まれます。すべての系統はクロアチアのポレチにある研究所の試験圃場で同じ条件のもとで増やされ、2018/2019年と2019/2020年の2回の栽培期に育てられました。

外見については、乾燥した球根の形、外皮やりん片の皮の色、りん片の並び方、とうが立つかどうかなど7つの特徴を、国際的に用いられている基準に沿って記録しました。成分については、ニンニク特有の香りや辛みのもとになる硫黄化合物アリシン、植物に含まれる抗酸化物質の一群であるポリフェノールの総量(総フェノール含量)、そして2種類の方法(FRAP法とDPPH法)で測った抗酸化能を分析しました。値はいずれも乾燥重量あたりで示されています。

主な結果

外見の特徴をもとに統計的に分類すると、77系統は2つの形態型に分かれました。一方の46系統は、りん片の皮が黄色から薄茶色で、りん片の並びが不規則、とうが立たないという特徴を持っていました。もう一方の31系統は、りん片の皮が紫色で、りん片が規則的に二列に並び、とうが立つという特徴を持っていました。また、外見の多様性の大部分は由来地域の間ではなく、同じ地域の系統どうしの中に見られ、地域ごとの外見の違いは小さいことも報告されています。

ところが、この2つの形態型の間では、アリシン、総フェノール含量、2種類の抗酸化能のいずれにも統計的に意味のある差は見られませんでした。

一方、総フェノール含量とFRAP法による抗酸化能は、由来地域によって違いがありました。2018/2019年には、イストリア・クヴァルネル地方の系統で総フェノール含量が100グラムあたり820.8ミリグラム(没食子酸換算)、FRAP値が100グラムあたり354.6マイクロモル(トロロックス換算)と最も高く、内陸部の系統(それぞれ494.1と180.4)を大きく上回りました。ただし、この地域の傾向は年度によって変わり、2019/2020年には総フェノール含量に地域差は認められず、FRAP値は国外の系統で最も高くなりました。

DPPH法による抗酸化能とアリシンは、地域よりも栽培年度による違いが目立ちました。DPPH値は2つの形態型のどちらでも2019/2020年に大きく上昇し、たとえば一方の形態型では100グラムあたり358.1から892.2マイクロモルに増えました。アリシンも100グラムあたり136.2ミリグラムから207.5ミリグラムへ増加しました。なお、総フェノール含量とFRAP値は両年度とも強く連動していた一方、アリシンと抗酸化能の関係は弱く、年度によって一貫しませんでした。著者らは、2つの年度では植え付け日が数週間異なっていたため、年度間の違いには季節の条件と植え付け時期の両方が反映されている可能性があると述べています。

この研究が示すこと

この系統群では、外見のタイプはニンニクの成分の質を予測する確かな手がかりにはなりませんでした。外見ではっきり二つに分かれても、成分の面では違いが見られなかったのです。著者らは、外見の評価と成分の評価は互いに置き換えられるものではなく補い合う情報であり、遺伝資源の保存や品種づくりでは両方を組み合わせて調べることが大切だとしています。

原著論文の著者・所属:Iva Bažon(Centre of Excellence for Biodiversity and Molecular Plant Breeding (CoE CroP-BioDiv), Svetošimunska Cesta 25, 10000 Zagreb, Croatia; Institute of Agriculture and Tourism, Karla Huguesa 8, 52440 Poreč, Croatia)、Dean Ban(Centre of Excellence for Biodiversity and Molecular Plant Breeding (CoE CroP-BioDiv), Svetošimunska Cesta 25, 10000 Zagreb, Croatia; Institute of Agriculture and Tourism, Karla Huguesa 8, 52440 Poreč, Croatia)、Martina Grdiša(Centre of Excellence for Biodiversity and Molecular Plant Breeding (CoE CroP-BioDiv), Svetošimunska Cesta 25, 10000 Zagreb, Croatia; Faculty of Agriculture, University of Zagreb, Svetošimunska Cesta 25, 10000 Zagreb, Croatia)、Tvrtko Karlo Kovačević(Centre of Excellence for Biodiversity and Molecular Plant Breeding (CoE CroP-BioDiv), Svetošimunska Cesta 25, 10000 Zagreb, Croatia; Institute of Agriculture and Tourism, Karla Huguesa 8, 52440 Poreč, Croatia)、Nikola Major(Centre of Excellence for Biodiversity and Molecular Plant Breeding (CoE CroP-BioDiv), Svetošimunska Cesta 25, 10000 Zagreb, Croatia; Institute of Agriculture and Tourism, Karla Huguesa 8, 52440 Poreč, Croatia)、Anja Batel(Centre of Excellence for Biodiversity and Molecular Plant Breeding (CoE CroP-BioDiv), Svetošimunska Cesta 25, 10000 Zagreb, Croatia; Institute of Agriculture and Tourism, Karla Huguesa 8, 52440 Poreč, Croatia)、Zlatko Šatović(Centre of Excellence for Biodiversity and Molecular Plant Breeding (CoE CroP-BioDiv), Svetošimunska Cesta 25, 10000 Zagreb, Croatia; Faculty of Agriculture, University of Zagreb, Svetošimunska Cesta 25, 10000 Zagreb, Croatia)、Smiljana Goreta Ban(Centre of Excellence for Biodiversity and Molecular Plant Breeding (CoE CroP-BioDiv), Svetošimunska Cesta 25, 10000 Zagreb, Croatia; Institute of Agriculture and Tourism, Karla Huguesa 8, 52440 Poreč, Croatia)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Iva Bažon, Dean Ban, Martina Grdiša, et al. Biochemical Quality of Garlic Differs by Accession Provenance and Growing Season Rather than Morphotype. Plants 2026-09-23. DOI: 10.3390/plants15192906. 原著ライセンス:CC BY.