著者の所属・活動拠点の国は、メキシコです。

掲載誌:Life

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

不安を感じやすいことと、体重が増えやすいこと。この二つは一見別々の問題に見えますが、実は体の中で「慢性的な軽い炎症」という共通の土台でつながっている可能性が指摘されています。こうした背景から、抗酸化作用や抗炎症作用を持つとされるポリフェノールを含む植物由来成分に注目が集まっており、その一つがオリーブの葉から抽出される「オリーブ葉エキス」です。動物などを使った実験では、オリーブ葉エキスに不安を和らげるような作用が見られたことが報告されていますが、人での効果を確かめた研究はまだ限られているとされています。今回紹介する論文は、この点に着目し、過体重で軽度から中等度の不安症状を持つ女性を対象に、オリーブ葉エキスの効果を調べたパイロット試験(本格的な検証の前段階として行う小規模な予備調査)です。

研究でわかったこと

この研究では、過体重で軽度から中等度の不安症状がある女性を対象に、ランダムに二つのグループに分け、一方にはオリーブ葉エキス(1日750mg)を、もう一方にはプラセボ(有効成分を含まない偽薬)を12週間にわたって摂取してもらう、二重盲検(参加者も研究者も、どちらを摂取しているか分からない状態)のプラセボ対照試験が行われました。不安症状は、HAM-A、BAI、STAIという3種類の評価尺度を用いて測定され、あわせて炎症マーカーや代謝に関する指標も、摂取前と摂取後で調べられました。

結果として、目標としていた参加者数を達成できなかったため、得られた結果はあくまで予備的なものであると報告されています。その上で、オリーブ葉エキスを摂取したグループとプラセボを摂取したグループを比較した場合、オリーブ葉エキスによる明確な効果は認められなかったとされています。ただし、それぞれのグループの内部で摂取前後を比べると、今後の研究の参考になりうる違いが見られたとのことです。具体的には、オリーブ葉エキスを摂取したグループでは、不安症状(HAM-A、BAI、STAIの特性不安)の軽減が、炎症マーカーの一つであるhs-CRP(高感度CRP)や、代謝の指標であるHDLコレステロールの変化と関連しており、抗炎症的な作用が背景にある可能性が示唆されています。一方でプラセボを摂取したグループでは、むしろ炎症が進みやすい状態と関連しているように見えた変化や、不安の身体的な症状に関するプラセボ効果(有効成分がなくても「効いている」と感じることで生じる反応)らしき傾向が観察されたとされています。

この研究の位置づけ・読むうえでの注意

この論文の著者ら自身が述べているように、今回の試験は目標としていた参加者数に届かなかったため、結果は予備的な段階のものです。グループ間で統計的に明確な差が出たわけではなく、あくまでグループ内での変化のパターンから、今後研究を深める方向性が見えてきた、という位置づけの報告です。著者らも、こうした予備的な観察を確かなものにするには、より大規模なランダム化臨床試験によって結果とその背景にあるメカニズムを検証する必要があるとしています。この研究だけでオリーブ葉エキスに不安軽減や抗炎症の効果があると結論づけることはできず、一つの予備的な研究として今後の検証を待つ段階にあると理解しておくとよさそうです。

まとめ

今回の論文は、過体重で不安症状を持つ女性を対象に、オリーブ葉エキスの摂取が不安症状や炎症・代謝関連の指標にどう関わるかを調べたパイロット試験でした。グループ間での明確な効果は確認されなかったものの、オリーブ葉エキス摂取群における不安症状の軽減とhs-CRP・HDLコレステロールとの関連は、抗炎症作用を介した効果の可能性を示唆するものとして報告されています。あくまで一つの予備的な研究であり、結論が確定したわけではないため、今後、より大規模な試験による検証が待たれます。

※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。出典(原著論文):過体重女性における不安症状とメタ炎症に対するオリーブ葉エキスの効果:ランダム化二重盲検プラセボ対照パイロット試験(ライフ・2026年06月)

著者:Mario Hernández-Garibay(Instituto de Neurociencias Traslacionales, Departamento de Neurociencias, Centro Universitario de Ciencias de la Salud (CUCS), Universidad de Guadalajara (UdeG), Sierra Mojada 950, Guadalajara 44340, Mexico)、David Fernández-Quezada(Instituto de Neurociencias Traslacionales, Departamento de Neurociencias, Centro Universitario de Ciencias de la Salud (CUCS), Universidad de Guadalajara (UdeG), Sierra Mojada 950, Guadalajara 44340, Mexico)、Joaquín García-Estrada(Instituto de Neurociencias Traslacionales, Departamento de Neurociencias, Centro Universitario de Ciencias de la Salud (CUCS), Universidad de Guadalajara (UdeG), Sierra Mojada 950, Guadalajara 44340, Mexico)、Ulises de la Cruz-Mosso(Instituto de Neurociencias Traslacionales, Departamento de Neurociencias, Centro Universitario de Ciencias de la Salud (CUCS), Universidad de Guadalajara (UdeG), Sierra Mojada 950, Guadalajara 44340, Mexico)、Rosa Yaveth Ruvalcaba-Delgadillo(Laboratorio de Microscopia de Alta Resolución, Departamento de Neurociencias, Centro Universitario de Ciencias de la Salud (CUCS), Universidad de Guadalajara (UdeG), Sierra Mojada 950, Guadalajara 44340, Mexico)、Rocio Elizabeth González-Castañeda(Instituto de Neurociencias Traslacionales, Departamento de Neurociencias, Centro Universitario de Ciencias de la Salud (CUCS), Universidad de Guadalajara (UdeG), Sierra Mojada 950, Guadalajara 44340, Mexico)、Sonia Luquin(Instituto de Neurociencias Traslacionales, Departamento de Neurociencias, Centro Universitario de Ciencias de la Salud (CUCS), Universidad de Guadalajara (UdeG), Sierra Mojada 950, Guadalajara 44340, Mexico)