八百屋の店先が赤く染まる季節になった。6月下旬から夏にかけて、赤色トマト 果実 生は色づきの盛りを迎える。出回っているトマトのほとんどは、青いうちに収穫して追熟させる品種ではなく、木で赤く熟してから出荷される「完熟型」と呼ばれる品種だという。つまり店頭で見る赤さは、そのまま食べ頃の合図と考えていい。

トマトの赤い色素はリコピンという成分で、完熟が進むほど含有量が増していく。つまり色の濃さそのものが、熟度と味の目安になる。あわせてβ-カロテンやビタミンC・E、カリウムといった成分に加え、旨み成分のグルタミン酸も含む。100gあたりで見るとエネルギーはわずか20kcal、カリウムは210mg、β-カロテンは540µg。カリウムを低カロリーで補える、夏の食卓になじむ野菜というわけだ。

数値が語る「意外と少ない」の中身

実はトマトやピーマンは、β-カロテンの含有量だけを見ると緑黄色野菜の基準に届かない。それでも慣例的に緑黄色野菜へ分類されているのは、色や食卓での使われ方も踏まえた区分だからだ。栄養成分表を素直に読むと、トマトの主役はβ-カロテンではなく、赤い色そのものを生み出すリコピンと、酸味の土台になるクエン酸にあることが見えてくる。

可食部100gあたりのクエン酸は0.4g。数字だけ見ると小さいが、これはトマトのあの爽やかな酸味の正体でもある。クエン酸はエネルギー産生に関わる有機酸とされ、体内でエネルギーを作り出す回路の名前にもなっている。梅干しやかんきつ類の酸味と同じ成分がトマトにも宿っていると考えると、夏の食卓に酸味のある野菜が並ぶのも理にかなって見えてくる。たんぱく質は0.7gで、女性(30〜49歳)の推奨量50g/日に対して1%ほど。トマトは主菜ではなく、あくまで彩りと酸味、水分を担う脇役として捉えるとしっくりくる。

今どき食べるならこう楽しむ

大玉トマトの主流は桃太郎に代表されるピンク系品種で、生食での甘みと酸味のバランスに優れる。一方、加熱調理には赤系品種が向くとされ、トマトソースや煮込みにするとリコピンの赤みがより際立つ。冷蔵なら10日ほど、保存を延ばしたいならポリ袋に入れて冷凍するのも手だ。凍らせると皮が手ですっとむけるようになり、そのまますりおろしてソースや煮込みに使える。お弁当にミニトマトを入れる際は、ヘタの部分を取り除いておくと安心だ。

赤さの奥にあるもの

トマトが赤くなるのは、ただの見た目の変化ではない。リコピンが増え、旨み成分のグルタミン酸が乗り、酸味の土台となるクエン酸が味を引き締める——赤という一色の変化の裏で、複数の成分が同時に動いている。店先で一番赤い一玉を選ぶという単純な行為が、実は最も理にかなった選び方だったというわけだ。次に手に取るときは、その赤さの濃淡に少し目を凝らしてみてほしい。

栄養素のはたらき・摂取基準の記述は、次の公的資料に基づきます:厚生労働省 食事摂取基準食品安全委員会

※本記事は日本食品標準成分表(八訂)および日本人の食事摂取基準(2025年版)のデータ等をもとに作成しました。