掲載誌:Clinical & Translational Oncology

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

肺がんは、世界でがんによる死亡の最大の原因とされています。薬物療法は進歩していますが、それとは別に、運動や栄養といった生活習慣への介入が、治療を補う手段として注目されるようになっています。

この論文は「ナラティブレビュー」と呼ばれる形式の論文です。ナラティブレビューとは、新たな実験や臨床試験を行うのではなく、既存の研究を著者らが幅広く取り上げて整理・解説するものです。著者らは、肺がん診療の流れ全体を通じて、運動と栄養による介入の生理学的な根拠、臨床的な証拠、実際の取り入れ方をまとめることを目的としています。その際、患者を対象とした直接的な臨床の証拠と、動物実験や細胞研究などの前臨床研究や間接的な証拠とを区別して扱うとしています。

運動について報告された内容

抄録によると、前臨床研究や、基礎研究を臨床へつなぐトランスレーショナル研究からは、運動が腫瘍の性質に関わる分子や免疫の働きに影響を与える可能性が示唆されています。ただし、これはあくまで可能性の段階として紹介されています。

一方、患者を対象とした臨床研究では、一部の肺がん患者において、身体機能、症状の負担、生活の質の面で運動の利点が支持されていると著者らは述べています。

手術を受ける予定の患者については、手術前に運動と栄養状態の改善に取り組む「プレハビリテーション」によって、術後の経過が改善すると報告されています。手術で切除できない場合や進行した段階では、運動が身体機能の維持と症状の軽減に役立つとされています。

栄養について報告された内容

著者らは、肺がん患者では低栄養や、筋肉量と筋力が低下する「サルコペニア」がよく見られ、これらが予後に悪い影響を与えるため、栄養面の介入が重要だと述べています。

そのうえで、評価ツールを用いて早い段階で栄養状態をスクリーニングし、続いて計画的な栄養支援を行うことが推奨されています。支援には、口から飲む栄養補助食品や、臨床的に必要な場合には管を通して栄養を送る経腸栄養が含まれます。

食事のパターンについては、地中海式の食事が肺がんを含むがんのリスクの低さと関連していると紹介されています。ただし、これは関連が見られたという報告であり、肺がんと診断された後に地中海式の食事が臨床的な経過を改善するかどうかについては、証拠はまだ限られているとされています。

このレビューが伝えること

このレビューは、肺がんの治療において運動と栄養を、手術前から進行期まで各段階に応じて補助的に取り入れる考え方を整理したものです。同時に、臨床で確かめられている利点と、前臨床研究からの示唆や、診断後の効果がまだ十分に示されていない点とを分けて示しており、どこまでが分かっていて何がまだ限られているのかを読み取ることができます。

著者:Ana Cardeña-Gutiérrez、Teresa García-Manrique、Laura Gutiérrez-Sainz、Paola Gonzalo Encabo、Juan Manuel Guardia-Baena、Antonio José Montes Ruiz、R. Hernanz de Lucas、Ana María Soler Garrigós、José María Matilla González、Luis León‐Mateos、Margarita Majem、Raquel Sebio Garcia、Raquel Pérez García

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Ana Cardeña-Gutiérrez, Teresa García-Manrique, Laura Gutiérrez-Sainz, et al. Practical recommendations for exercise and nutrition in patients with lung cancer. Clinical & Translational Oncology 2026-10-08. DOI: 10.1007/s12094-026-04571-7. 原著ライセンス:CC BY.