植物油の棚の前で「あまに油とサフラワー油、何が違うの?」と思ったことはないでしょうか。成分表で多価不飽和脂肪酸の量を比べると、どちらも100gあたり70〜71g台でほぼ並びます。ところが内訳を掘り下げると、n-3系とn-6系の比率がほぼ逆転していることがわかります。同じ「70g超」がなぜ「別物」なのか——そこに、この記事の読みどころがあります。

多価不飽和脂肪酸とは

脂肪酸の中でも、分子内の二重結合(特殊な化学結合)を2か所以上もつものが多価不飽和脂肪酸です。代表格がn-3系(オメガ3)n-6系(オメガ6)で、どちらも体内でほとんど合成できず食事から摂る必要がある「必須脂肪酸」を含みます。細胞膜の構成成分となる脂肪酸を含み、体内の情報伝達に関わる物質の原料としても知られています。

日本人の食事摂取基準では多価不飽和脂肪酸の総量に対する定量的な基準(推奨量・目安量など)は設定されていません。一方でn-3系・n-6系にはそれぞれ目安量が定められており、女性30〜49歳の場合はn-3系1.7g/日、n-6系9g/日とされています。

上位5品はすべて植物油

成分表(八訂)で多価不飽和脂肪酸の値が収載されている食品のうち、上位5品はすべて植物油が占めました。魚介類や動物性の脂は上位に入りません。以下の数値はすべて100gあたりの値ですが、料理での植物油の一般的な使用量は大さじ1杯(約14g)程度で、100gを一度に使う場面は少ない点はあらかじめ添えておきます。5品の中にはn-3系主体の油とn-6系主体の油が混在しており、総量の数字だけでは見えない違いが内訳に隠れています。

第1位 あまに油 71.13g

内訳はn-3系56.63g・n-6系14.5gで、多価不飽和脂肪酸の約8割をn-3系が占めます。n-3系の目安量(女性1.7g/日)と比べると非常に高密度な数値ですが、n-3系脂肪酸には耐容上限量(過剰摂取のリスク基準)は設定されていません。大さじ1杯(約14g)使用時のn-3系は約8g相当となります。γ-トコフェロール(ビタミンEの一形態)は39mgです。熱に弱いため仕上げやドレッシングとして使われることが多いです。

第2位 えごま油 70.6g

n-3系が58.31gで、第1位のあまに油(56.63g)をわずかに上回ります。総量ではあまに油をわずかに下回りますが、n-3系の密度はむしろ高くなっています。γ-トコフェロール(ビタミンEの一形態)が59mgと上位5品の中で最も高い点も特徴です。日本各地で古くから栽培されてきたえごまの種子から搾られ、あまに油同様に加熱には弱い油です。

第3位 サフラワー油 ハイリノール 70.19g

首位のあまに油とは0.94gの差しかありませんが、n-3とn-6の構成は大きく異なります。n-6系が69.97gで全体の99%超を占め、n-3系はほぼ含まれません。「ハイリノール」はn-6系のリノール酸(必須脂肪酸の一つ)が多い品種を指す呼称です。α-トコフェロール(いわゆるビタミンEの主要形態)が27mg、γ-トコフェロールは2.3mg含まれます。

第4位 ぶどう油 63.55g

ぶどうの種子を搾ったオイルで、グレープシードオイルとも呼ばれます。n-6系が63.1gで大半を占め、第3位と同様のn-6系優位の構成です。α-トコフェロールは28mgと第3位とほぼ並び、γ-トコフェロールは5.8mgです。

第5位 ひまわり油 ハイリノール 57.94g

n-6系が57.51gとほぼ全量を占め、n-6系主体という点で第3・4位と共通します。α-トコフェロールが39mgと上位5品の中で最も高い値で、γ-トコフェロールは2mgです。同じひまわり油でも「ハイオレイック」品種は一価不飽和脂肪酸が主体で成分が大きく異なるため、購入時に品種表示を確認すると参考になります。

「同じ70g超」に見えた2つの顔

上位5品は大きく2グループに分かれます。あまに油・えごま油はn-3系が圧倒的で、サフラワー油(ハイリノール)・ぶどう油・ひまわり油(ハイリノール)はn-6系がほぼ全体を占めます。首位と第3位の差はわずか0.94gに過ぎないのに、n-3とn-6の比率はほぼ逆転しています。また上位2品はγ-トコフェロールが多く(えごま油59mg・あまに油39mg)、下位3品はα-トコフェロールが際立つという傾向も見えます。

多価不飽和脂肪酸の「総量」はあくまで一つの尺度に過ぎず、内訳を見ると植物油の多様性が見えてきます。油を選ぶ際に「どちらの系統か」という視点を一つ加えると、成分表の数字がより立体的に映るかもしれません。

※本記事は日本食品標準成分表(八訂)および日本人の食事摂取基準(2025年版)のデータ等をもとに作成しました。