この研究は、ギリシャの研究機関の研究論文です。
掲載誌:Notulae Scientia Biologicae
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
窒素を吸収する力と、子実に生かす力を調べる
研究チームは、地中の窒素を取り込む力と、取り込んだ窒素を子実の生産に生かす力が、トウモロコシの系統や施肥方法によってどう異なるかを調べました。高温や不規則な降雨によって窒素の供給と作物の需要がかみ合いにくい地中海地域で、収量だけでは見えない窒素利用の特徴を捉えることが目的です。
試験は2022~2024年にアテネの圃場で行われ、ペルーの在来系統Piscorunto、Pagaladrogaと、市販品種Jollyを比較しました。施肥条件は、窒素を施さない区、通常の尿素を施す区、尿素にウレアーゼ阻害剤と硝化阻害剤を加える区の3種類です。阻害剤は、尿素の分解や土壌中での窒素の変化を遅らせるためのもので、施肥する2区の窒素量はいずれも1ヘクタール当たり150キログラムでした。
研究チームは、生育段階ごとに深さ0~30センチと30~60センチの根を調べ、地上部の乾燥重量や窒素濃度、収穫時に子実と茎葉に含まれる窒素量などを測定しました。試験では点滴灌漑を行っており、干ばつへの強さを評価した研究ではありません。
根の発達と子実への窒素配分に、異なる特徴
著者らの報告では、Pagaladrogaは全体として根の長さと重量が大きく、地上部の乾燥重量も最も大きい系統でした。Piscoruntoでは、根の内部に共生する菌根菌が確認された割合と、生育初期の地上部の窒素濃度が最も高くなりました。ただし、菌根菌の存在割合だけで、菌が窒素吸収にどれほど貢献したかを判断することはできません。
一方、Jollyは根の量が比較的小さいものの、子実と茎葉に蓄積した窒素のうち子実に配分された割合と、蓄積した窒素量当たりの子実収量が最も高い品種でした。研究チームは、在来系統にみられる根や地上部の発達と、市販品種にみられる子実生産への窒素利用を、異なる特徴として捉えています。
阻害剤を加えた尿素は、主に窒素の取り込みに影響
阻害剤を加えた尿素の区では、根の発達、地上部の乾燥重量、子実と茎葉に蓄積した窒素量、子実に含まれる窒素量が、窒素を施さない区より有意に増加したと報告されました。根の長さや重量は、全体としてこの施肥区で最も高い値を示しました。
ただし、施肥方法によって、子実への窒素配分の割合や、蓄積した窒素量当たりの子実収量に有意な差は認められませんでした。これらの指標には、施肥よりも系統・品種の違いが表れていました。
吸収と利用を分けて考える意味
著者らは、阻害剤を加えた肥料は主に窒素の獲得に影響し、取り込んだ窒素の配分や利用には系統・品種の特徴が強く関わると結論づけています。この研究は、窒素を多く取り込むことと、それを効率よく子実生産に結びつけることを分けて捉え、品種と施肥の組み合わせを考える意味を示しています。
著者:Zoi Tselia(Agricultural University of Athens, Department of Crop Science, Laboratory of Agronomy, 11855 Athens)、Ioannis E. ROUSSIS(Agricultural University of Athens, Department of Crop Science, Laboratory of Agronomy, 11855 Athens)、Ioanna P. Kakabouki(Agricultural University of Athens, Department of Crop Science, Laboratory of Agronomy, 11855 Athens)、Myrto Chatzitriantafyllou(Agricultural University of Athens, Department of Crop Science, Laboratory of Agronomy, 11855 Athens)、Stavroula Kallergi(Agricultural University of Athens, Department of Crop Science, Laboratory of Agronomy, 11855 Athens)、Georgios Karakoukis(Agricultural University of Athens, Department of Crop Science, Laboratory of Agronomy, 11855 Athens)、Stella Karydogianni(Agricultural University of Athens, Department of Crop Science, Laboratory of Agronomy, 11855 Athens)、Dimitrios J Bilalis(Agricultural University of Athens, Department of Crop Science, Laboratory of Agronomy, 11855 Athens)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Zoi Tselia, Ioannis E. ROUSSIS, Ioanna P. Kakabouki, et al. Root growth dynamics, nitrogen uptake and use efficiency of Peruvian maize races under different nitrogen fertilization strategies in Mediterranean conditions. Notulae Scientia Biologicae 2026-09-26. DOI: 10.55779/nsb18313007. 原著ライセンス:CC BY.