納豆に似た発酵食品「テンペ」は、蒸した大豆に糸状菌(テンペ菌)を加えて発酵させたインドネシア発祥の伝統食品です。近年は世界的に植物性タンパク質への関心が高まり、テンペの需要も増えていますが、主原料である大豆は輸入に頼らざるを得ない地域も多く、原料の安定確保が課題になっているといいます。そこで今回紹介する研究では、大豆の代わりに「キマメ(Cajanus cajan)」という豆を一部使ってテンペを作れないか、という発想で実験が行われました。
大豆とキマメを様々な比率で混ぜてテンペを作ってみた
研究チームは、大豆とキマメの配合比を60:40(F1)、50:50(F2)、40:60(F3)の3パターンに変えてテンペを製造し、完全にランダム化した実験計画のもとで、見た目などの物理的特徴、栄養成分(タンパク質や脂肪など)、タンパク質の質、そして食べたときの官能評価(味や香り、食感などの受け入れやすさ)を調べました。
その結果、どの配合でも菌糸が均一に広がり、表面が白く、しっかりとまとまった質感のテンペができあがったと報告されています。ただし、キマメの割合を増やすほど、テンペの内部の色が濃くなる傾向が見られたとのことです。
栄養面ではおおむね良好、ただし「質」には課題も
タンパク質含有量は18.0〜18.6%となり、インドネシアの国内基準であるテンペのタンパク質含量の目安(15%以上)を満たしていたとされています。一方で、脂肪含有量については、F2とF3(キマメの割合が多い配合)で基準とされる7%を下回ったと報告されています。
また、体外での消化のされやすさを示す「in-vitro消化性」は87.7〜88.5%と高く、アミノ酸の構成もおおむねバランスが取れていたとされています。ただし、必須アミノ酸の一つであるメチオニンが不足気味(制限アミノ酸)であることがわかり、タンパク質の栄養価を数値化した指標「PDCAAS」は0.17〜0.22と低い値にとどまったと報告されています。
おいしさの評価は代替率が上がるほど下がる傾向
味や香りなどを評価する官能評価では、キマメの代替割合が高くなるほど、パネリスト(評価者)による受け入れやすさの評価が下がる傾向が見られたとされています。特に、色の明るさ、フレッシュな香り、食感といった要素が、全体的な好ましさの評価と統計的に有意な相関を示した(p<0.01)と報告されています。
この研究をどう読むか
この研究は、大豆とキマメを混ぜた特定の配合パターンで作られたテンペを対象に、成分や官能評価を調べた一つの研究であり、結論が確定したわけではありません。論文では、メチオニンが制限アミノ酸となりPDCAASが低かったことから、キマメ代替テンペを実際に活用する際には、穀類などタンパク質の質を補い合う食品と組み合わせる「相補的タンパク質効果」が必要になると指摘されています。また、代替率が上がるほど官能評価が下がる傾向も示されており、栄養面と嗜好面のバランスをどう取るかが今後の検討課題といえそうです。
まとめ
この研究では、大豆の一部をキマメに置き換えたテンペが、タンパク質含有量などの基準を満たしつつ製造可能であることが示されました。一方で、アミノ酸バランスの偏りや、代替率上昇に伴う嗜好性の低下といった課題も明らかになっており、キマメは大豆に代わる植物性タンパク質源としての可能性を持ちつつも、穀類などとの組み合わせによる工夫が必要であることが示唆されています。
※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:テンペ製造における代替植物性タンパク質源としてのキマメ(Cajanus cajan)の利用可能性(バイオ・ウェブ・オブ・カンファレンシズ・2026年01月)