アフラトキシンはカビが作り出す毒素の一種で、穀物や飼料が汚染される原因として世界的に注目されています。食品や飼料の安全性、そして養殖業の持続可能性に関わる問題として研究が進められていますが、魚に対してどのような影響を及ぼすのかはまだ十分にわかっていない部分があります。今回紹介する研究は、淡水魚の一種であるタイワンドジョウ(Channa punctata)を対象に、アフラトキシンB1が体にどのような変化をもたらすのかを調べたものです。
研究でわかったこと
研究チームはまず、タイワンドジョウを2週間かけて実験環境に慣らした後、半数致死量(LD50、6.5 mg/kg)を推定しました。そのうえで、より少ない「亜致死量」と呼ばれる3段階の用量(LD50の1/10、1/20、1/40に相当する11.4µg、22.8µg、45.5µg)を設定し、体重約70gの魚にそれぞれ腹腔内投与しました。毒素はDMSO(ジメチルスルホキシド)という溶媒に溶かして調製されており、対照群(毒素を投与しないグループ)とも比較されています。
28日間の曝露後に調べたところ、赤血球数や白血球数、ヘマトクリット値、ヘモグロビン濃度、そしてそれらから算出される指標が有意に低下していたと報告されています。また、肝臓・腎臓・鰓の組織では、用量が多いほど脂質の酸化(過酸化)が進む一方、体を酸化ストレスから守る抗酸化酵素(スーパーオキシドディスムターゼ、カタラーゼ、グルタチオンペルオキシダーゼ、グルタチオンレダクターゼ)やグルタチオンといった抗酸化物質の量が減少する傾向が示されました。さらに走査電子顕微鏡を用いて鰓の表面を観察したところ、アフラトキシンB1の濃度が高くなるほど鰓表面の変形が強くなり、最も高い用量(45.5µg)では特に顕著な変化が見られたとされています。
これらの結果から、研究チームは、血液に関する指標の低下は血液毒性を、抗酸化物質の減少は酸化ストレスを、そして鰓表面の変化は組織への障害をそれぞれ示唆していると考察しています。
この研究の位置づけ・読むうえでの注意
この研究は、タイワンドジョウという特定の魚種を対象に、実験的に投与したアフラトキシンB1の影響を観察したものです。あくまで一つの研究であり、これですべてが結論づけられたわけではない点には注意が必要です。また、実験では腹腔内投与という方法で毒素が与えられており、実際の養殖環境で魚が汚染飼料を通じて摂取する状況とは条件が異なる可能性があります。人がこの魚を食べた場合の影響について、要旨の中で直接的なデータは示されていません。
研究チームは、アフラトキシン汚染が養殖業の持続可能性に関わるだけでなく、こうした魚を消費する人にとっての食品安全上の懸念にもつながりうる問題であるとし、汚染を防止・軽減するための対策の必要性を指摘しています。
まとめ
今回紹介した研究では、タイワンドジョウにアフラトキシンB1を投与した結果、血液指標の低下、酸化ストレスの指標となる抗酸化物質の減少、そして鰓表面の構造的な変化が観察されたと報告されています。カビ毒による汚染が養殖魚や食品の安全性に関わりうる問題として、今後も注視していく必要がありそうです。
※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:アフラトキシンB1がタイワンドジョウ(Channa punctata)の血液指標、酸化ストレス、鰓表面微細構造に及ぼす影響(ジャーナル・オブ・ベーシック・アンド・アプライド・ズーロジー・2026年06月)