「痩せたいけれど、何から始めればいいのかわからない」——そんな悩みを抱える方は少なくないはずです。実は、人間ドックの現場でも肥満対策は大きな課題となっており、専門家が連携した個別プログラムの研究が進んでいます。今回は、理学療法士と管理栄養士が協力して取り組んだ減量プログラムの事例報告をもとに、食事と運動のバランスについて考えてみましょう。

研究でわかってきたこと

令和5年国民健康・栄養調査の結果によれば、日本における肥満者(BMI 25kg/m²以上)の割合は男性31.5%、女性22.3%であり、男女ともに増加傾向にあると報告されています(出典:厚生労働省「令和5年国民健康・栄養調査」)。こうした背景のなか、人間ドック施設において理学療法士が中心となって実施した減量プログラムの事例が学術誌に報告されました。

対象は60代の男性で、体型パターンは「運動不足肥満」と評価されました。プログラムは全8回(1回60分)・約3か月にわたり、栄養指導と運動療法を組み合わせた内容です。カロリー収支の目標は1日あたり360kcalの調整とされ、具体的には片道25分の自転車通勤の頻度を増やすこと(約190kcal消費)と、飲酒や菓子類を減らすこと(約170kcal減)が提案されたと報告されています。

3か月後の結果として、体重が3.9kg、体脂肪量が3.2kg減少し、BMIも23.6まで改善したことが示されています。一方で、筋量が0.7kg減少した点も記録されており、研究者らは「減量を意識するあまり、必要摂取カロリーを下回り、タンパク質の異化(分解)が亢進していた可能性がある」と考察しています。つまり、食事を減らしすぎることで筋も落ちてしまうリスクがあることが、この事例から示唆されています。

また、短期間の減量においては食事管理の効果が大きく、運動の直接的な体重減少効果は限定的とされる一方で、理学療法士による個別プログラムを通じて適切な運動習慣が身についた場合、長期的な減量効果が期待できるという可能性も報告されています。

注目の食品と実測データ

今回の事例では「間食や飲酒機会が多い」という食習慣が課題のひとつとして挙げられていました。日々の食生活を見直す際、どのような食品に注目すべきでしょうか。

減量中に特に意識したいのがタンパク質の確保です。筋量の低下を防ぐためにも、タンパク質を含む食品をしっかり摂ることが重要と考えられています。最新の日本人の食事摂取基準(厚生労働省)では、タンパク質の推奨量について年齢・性別ごとの目安が示されており、特に中高年においては意識的に摂取することが推奨されています。

また、間食を見直す際には、菓子類やアルコールを控えることで摂取カロリーを調整しやすくなると報告されています。今回の事例でも、飲酒と菓子類の削減だけで1日約170kcalの調整が実現できた点は、多くの方にとって参考になる視点ではないでしょうか。

なお、本記事で参照すべき具体的な食品成分データについては、当サイトのデータベースに該当食品が未格納のため、数値の掲載は行っておりません。食品ごとの栄養成分については、文部科学省が公表する日本食品標準成分表や、農林水産省・国立健康・栄養研究所の公式情報をご参照ください。

日々の食事に取り入れるヒント

今回の研究事例から、日々の食生活を見直すうえで参考になるポイントをまとめました。

  • 「極端に食べない」よりも「何を減らすか」を考える:全体の食事量を極端に減らすと、タンパク質まで不足して筋量が落ちる可能性があります。まずは間食や飲酒など、エネルギーが高くなりやすい習慣から見直してみましょう。
  • タンパク質を意識して確保する:豆腐乳製品など、タンパク質を含む食品を毎食意識して取り入れることで、筋量の維持をサポートしやすくなると考えられています。
  • 日常の動きをカロリー消費に活かす:今回の事例では自転車通勤の活用が提案されました。特別なジムに通わなくても、通勤や買い物などの日常動作を少し工夫するだけで、継続しやすい運動習慣につながる可能性があります。
  • 「見えないカロリー」を把握する:お菓子やアルコールは、量の割にカロリーが高いことが多く、気づかないうちに摂取カロリーを押し上げていることがあります。食事記録をつけてみることも、現状把握の助けになるかもしれません。
  • 専門家への相談を活用する:今回の事例のように、理学療法士や管理栄養士といった専門家によるサポートを受けることで、自分の体の状態に合わせたプランが立てやすくなると報告されています。

まとめ

減量は「食べない」ことではなく、「何を・どれだけ・どのように食べるか」を見直すことから始まります。今回紹介した研究事例は、食事と運動の両輪で取り組むことの大切さと、専門家のサポートがいかに有効であるかを示唆しています。バランスの良い食生活と無理のない運動習慣を、ぜひ自分のペースで取り入れてみてください。

※本記事は日本食品標準成分表(八訂)のデータ等をもとに作成しました。参考文献:人間ドック施設における減量プログラムの実践(J-STAGE 収録論文(日本)(2026-03-31))