クスクスといえば小麦から作られる粒状のパスタ食品として世界中で親しまれていますが、小麦を使う以上、グルテンを避けたい人にとっては選択肢になりません。近年、南米原産の穀物「キヌア」は必須アミノ酸をバランスよく含む優れた栄養価で知られていますが、クスクスのような伝統的な穀物加工食品への活用はまだ限られているといいます。そこで今回紹介する研究では、キヌアと米を組み合わせたグルテンフリークスクスの開発と、その工程条件の最適化が試みられました。
研究でわかったこと
研究チームは、キヌアの配合割合(0〜100%)、蒸し時間(10〜30分)、加水量(1kgあたり350〜450ml)という3つの製造条件を変化させながら、「応答曲面法」と呼ばれる統計的な最適化手法を用いて、できあがったクスクスの機能特性(保水力や保油力など)、栄養成分、ミネラル含有量、機能性成分、色調への影響を調べました。
その結果、キヌアの配合割合が各種の特性に最も大きく影響する要因であり、蒸し時間と加水量は副次的な調整要因として働くことが示されました。栄養面で最適とされたのはキヌア配合100%、蒸し時間20分、加水量400ml/kgという条件でした。
この条件で作られたキヌアクスクスを、市販の小麦クスクスや米だけのクスクスと比較したところ、水分・油分の保持力が高いことに加え、カリウム含有量が最大で約5倍、鉄含有量が約3倍、総ポリフェノール含量が約3倍高いことが報告されています。
さらに、LC-MS/MSという高精度な分析手法によるアミノ酸プロファイリングでは、20種類のアミノ酸のうちキヌアクスクスでは18〜19種類が検出されたのに対し、小麦クスクスでは14種類、米クスクスでは11種類にとどまりました。特に、分岐鎖アミノ酸が豊富に含まれていたほか、穀物タンパク質で不足しがちな必須アミノ酸「リジン」についても、米クスクスでは検出されず、小麦クスクスでは微量にとどまったのに対し、キヌアクスクスでは検出されたとされています。
ポリフェノールの多様性についても、キヌアクスクスは小麦クスクスの約5倍に達し、フラバン-3-オール、カルコン、ヒドロキシケイ皮酸類といった、キヌア配合品にのみ見られる成分も確認されたということです。なお、キヌアの配合割合が高くなるほど製品の色は濃くなる傾向があり、配合率75%を超えると色調はほぼ安定したと報告されています。
この研究の位置づけ・読むうえでの注意
この研究の著者らは、従来の代替穀物クスクスに関する研究とは異なり、工程最適化とLC-MSによるアミノ酸・ポリフェノール組成の詳細な分析を組み合わせた点に独自性があるとしています。これにより、グルテンフリーのキヌア米クスクスを開発するための統合的な枠組みが示されたとされています。
ただし、これは一つの研究であり、示された数値や傾向がすべての条件下で再現されるとは限りません。今回の比較対象はあくまで特定の市販小麦クスクスや米クスクスであり、風味や食感、実際の食事における影響など、要旨に記載のない点については触れられていません。今後さらに研究が積み重ねられることで、理解が深まっていくものと考えられます。
まとめ
この研究では、キヌアと米を用いたグルテンフリークスクスについて、製造条件を最適化することで、市販の小麦クスクスや米クスクスと比べてミネラルやアミノ酸、ポリフェノールなどの点で優れた特性を持つ可能性が示唆されました。グルテンフリー食品の選択肢を広げる基礎的な知見として興味深い内容といえるでしょう。
※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:グルテンフリー・キヌア米クスクスの工程最適化と栄養プロファイリング:アミノ酸およびポリフェノール特性解析(フロンティアーズ・イン・ニュートリション・2026年07月)