初めての料理や見慣れない食材に、なんとなく手が伸びない。そんな「食わず嫌い」的な傾向は、実は多くの人に程度の差はあれ備わっている性格特性のひとつだとされています。この傾向は「フードネオフォビア(食物新奇性恐怖)」と呼ばれ、新奇で、風味が強く、見慣れない食品を避けようとする心理として研究されてきました。これまでの研究では、この傾向が強い人ほど食事のレパートリーが狭くなり、結果として食事の質が低下しやすいことが示されてきました。では、この「食の偏り」は、実際に本人の健康状態の感じ方にまで影響しているのでしょうか。今回紹介する論文は、この問いをアメリカ・イギリス・オーストラリアの大規模な成人グループを対象に検証したものです。
研究でわかったこと
研究チームは、複数の国の成人グループに対して、フードネオフォビアの強さを測る「食物新奇性恐怖尺度(Food Neophobia Scale)」と、身体的・精神的な健康状態を自己申告してもらう「SF-12(12項目の簡易健康調査票)」という2つの調査を実施しました。SF-12は、さまざまな身体的・精神的な不調の有無に敏感に反応するとされる指標で、これまでの研究でも食事内容と健康状態との関連を捉えることが確認されているものです。
その結果、アメリカ・イギリス・オーストラリアのすべてのグループにおいて、フードネオフォビアの度合いが強くなるほど、SF-12における身体的健康のスコアと精神的健康のスコアの両方が有意に低下する傾向が見られました。また、これら2つを合わせた総合スコアでも同様の低下が確認されたと報告されています。
さらに、性別・年齢・学歴・居住国といった、健康状態に影響を与えうる他の要因についても分析されましたが、これらの要因を考慮してもなお、フードネオフォビアと健康スコアの低下との関連は説明しきれなかったとされています。このことから、研究チームは、成人における中程度から高度のフードネオフォビアが、一つの健康リスク要因である可能性を示唆しています。
この研究の位置づけ・読むうえでの注意
この研究は、あくまで自己申告によるアンケート調査に基づくものであり、フードネオフォビアが健康状態の低下を「引き起こす」原因であると証明したものではない点に注意が必要です。要旨の中でも、性別や年齢、学歴、居住国といった要因では説明しきれない関連が見られた、という表現にとどまっており、因果関係そのものを特定した研究ではありません。一つの研究であり、これによって結論が確定したわけではない点を踏まえたうえで、今後さらに研究が積み重ねられていくことが期待されるテーマだと言えるでしょう。
まとめ
今回紹介した研究では、新しい食べ物を避けがちな「フードネオフォビア」という性格特性が強い人ほど、自己申告による身体的・精神的健康のスコアが低い傾向にあることが、米英豪の複数の成人グループで確認されました。この関連は、性別や年齢、学歴、居住国といった他の要因だけでは説明できないものだったとされています。研究チームは、食の好みや選択と性格特性との関係を理解することの重要性を指摘しており、食と心理、そして健康の関わりについて考えるきっかけを与えてくれる研究だと言えそうです。
※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:食物新奇性恐怖(フードネオフォビア)は自己申告による身体的・精神的健康の低さと関連する(サイエンティフィック・リポーツ・2026年07月)