著者の所属・活動拠点の国は、エジプト、ポーランドです。
掲載誌:Discover Food
ライセンス: CC BY-NC-ND 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
ジャガイモ、ザクロ、オレンジの皮は、食品加工の過程で通常は廃棄される部分ですが、実はポリフェノールなどの生理活性成分を豊富に含むことが知られています。近年、こうした「食品副産物」を有効活用しようという研究が世界的に広がっており、環境負荷の低減と食品の高付加価値化を両立させる方法として注目されています。今回紹介する研究では、これらの皮から抽出した成分を、水牛乳から作られるプロバイオティクス入りの攪拌型ヨーグルトに加えることで、どのような変化が生じるかが調べられました。
研究でわかったこと
研究チームは、ジャガイモ、ザクロ、オレンジの皮から抽出した成分について、まず抗菌活性と抗酸化活性を評価しました。そのうえで、これらの抽出物を3種類の濃度(1.88、2.20、3.10 mL/L)でヨーグルトに添加し、それぞれT1、T2、T3として、無添加の対照群と比較しながら21日間にわたり貯蔵・分析が行われました。
その結果、ザクロ抽出物を用いたT2は、最も高い抗菌活性を示し、特にペニシリウム(青カビの一種)の増殖抑制と、カビ毒であるアフラトキシンの低減に最も効果的であったと報告されています。また、21日間の貯蔵を通じてpHの低下と保水力(WHC)の減少が観察されましたが、これは各処理区間で有意な差はなかったとされています。粘度についても、処理を行ったヨーグルトと対照群との間に統計的な差は見られなかったということです。
フェノール化合物の含有量と抗酸化活性(DPPHおよびABTS法による測定)については、ザクロ抽出物を用いたT2が21日間を通じて他の処理区よりも高い値を示したと報告されています。風味に関わる成分としては、T2がアセトアルデヒド含量が最も高く、次いでT3、T1の順であったとされる一方、ジアセチル含量についてはT2がT1およびT3よりも低かったことが示されています。官能評価では、T2とT3が貯蔵期間を通じてT1や対照群よりも高い評価を得たと報告されています。
この研究の位置づけ・読むうえでの注意
この研究は、植物の皮由来の抽出物をヨーグルトに添加することで、抗酸化活性やカビ毒に対する安全性が向上した可能性を示すものであり、しかも粘度や官能評価といった製品としての品質を損なわなかったと報告されている点が特徴です。ただし、これは特定の条件下で行われた一つの研究であり、結論が確定したわけではありません。ヒトが実際にこのヨーグルトを摂取した場合の健康への影響について検証したものではなく、あくまで乳製品そのものの成分や保存性、官能特性に関する評価にとどまる点には留意が必要です。
また、要旨に基づく限り、この研究では水牛乳由来のヨーグルトという特定の条件で試験が行われており、他の乳原料や製造条件でも同様の結果が得られるかどうかは、この要旨からは判断できません。
まとめ
今回紹介した研究では、ジャガイモ、ザクロ、オレンジの皮から抽出した成分をプロバイオティクスヨーグルトに添加することで、特にザクロ抽出物において抗菌活性、抗酸化活性、カビ毒低減効果が高く示され、官能評価も良好であったと報告されています。研究者らは、こうした皮由来の抽出物が、持続可能で多機能性を持つ発酵乳製品の原料としての産業的な可能性を示唆していると結論づけています。今後、こうした知見がどのように実用化に発展していくのか、引き続き注目される分野といえそうです。
※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。出典(原著論文):プロバイオティクスを含む機能性攪拌ヨーグルトのための高ポリフェノール植物副産物の有効利用による栄養・食品安全性・官能特性の改善(ディスカバー・フード・2026年07月)
著者:Laila Khaled Gouda(Dairy Department, Food Industries and Nutrition Institute, National Research Centre, Cairo, Egypt)、Minar Mahmoud Hassanein(Fats and Oils Department, Food Industries and Nutrition Institute, National Research Centre, Cairo, Egypt)、Fayza M. Assem(Dairy Department, Food Industries and Nutrition Institute, National Research Centre, Cairo, Egypt)、Jihan M. Kassem(Dairy Department, Food Industries and Nutrition Institute, National Research Centre, Cairo, Egypt)、Karolina Hoppe(Chemistry Department, Poznan University of Life Sciences, ul. Wojska Polskiego 75, 60-625, Poznań, Poland)、Ahmed Noah Badr(Food Toxicology and Contaminants Department, Food Industries and Nutrition Institute, National Research Centre, Cairo, Egypt)