著者の所属・活動拠点の国は、中国です。

掲載誌:Food chemistry: X

ライセンス: CC BY-NC-ND 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

豆腐や豆乳を作るときに大量に出る副産物「オカラ」。食物繊維やタンパク質を含みながらも、多くは廃棄されているのが現状です。近年はこのオカラを食品の材料として再利用しようという研究が世界各地で進められています。今回紹介する論文は、オカラを「オーミック加熱(通電加熱)」という方法で処理したうえで、ハムやソーセージのような食肉加工品に使われる「筋原線維タンパク質(MP)ゲル」に混ぜ込み、その品質にどのような変化が起こるかを調べたものです。

筋原線維タンパク質ゲルとは、食肉タンパク質が加熱によって網目状の構造を作り、水分を抱え込みながら固まる仕組みのことで、ハムやかまぼこのような弾力ある食感を生み出す重要な要素です。この研究では、通常のオーブンなどの加熱ではなく、食品に直接電流を通して内部から発熱させる「オーミック加熱」という技術でオカラを処理し、それを未処理のオカラと比較しながら、濃度を変えてMPゲルに添加する実験を行いました。

研究でわかったこと

まず、オカラを加えないコントロール(対照)のゲルと比較したところ、オカラを適量加えることでゲルの品質が有意に改善したと報告されています。具体的には、水分を保持する力を示す「保水性」が61.32%から69.78%へと高まり、ゲルの強度も37.81%向上したとされています。つまり、適切な量のオカラを加えることで、より水分を逃さず、しっかりとした硬さを持つゲルができたということです。

さらに興味深いのは、同じオカラでも「オーミック加熱で処理したもの」の方が、未処理のオカラよりも優れた性能を示したという点です。具体的には、ゲルの微細構造(顕微鏡で見たときの網目の詰まり具合)がより緻密になり、ゲルの弾性を示す「貯蔵弾性率」が高く、さらにタンパク質の酸化損傷を示す「タンパク質カルボニル」の生成が抑えられていたとされています。これは、オーミック加熱処理がタンパク質の劣化を抑えつつ、ゲルの構造を強化する方向に働いた可能性を示唆するものです。

また、分光分析(タンパク質の構造を調べる手法)の結果からは、オーミック処理されたオカラを加えると、タンパク質の立体構造の一種である「α-ヘリックス」が減少し、代わりに「β-シート」構造が増加する傾向が見られたと報告されています。これはタンパク質の二次構造・三次構造(分子の折りたたまれ方)に変化が生じたことを意味します。加えて、オカラの添加は水素結合や疎水性相互作用といった分子間の結びつきにも影響を与え、これがMPタンパク質どうしがより良い網目構造を作ることに寄与したと考えられています。

この研究の位置づけと読むうえでの注意

この研究は、オーミック加熱という処理方法がオカラの機能性を高め、食肉ゲル系への応用に活用できる可能性を示した一つの研究成果です。実験室レベルでの物理化学的・構造的な分析結果に基づくものであり、実際の食品製造や、味・食感・保存性といった消費者が体感する部分への影響、あるいは健康への効果を直接示したものではない点に留意が必要です。また、これは一つの研究であり、結論が確定したわけではありません。今後さらに研究が積み重ねられることで、より詳しい知見が得られていくものと考えられます。

まとめ

今回紹介した研究では、豆腐づくりの副産物であるオカラを「オーミック加熱」という方法で処理してから食肉タンパク質のゲルに加えることで、水分保持力やゲルの強度が向上し、特にオーミック加熱処理をしたオカラでは、より緻密な構造と優れた特性が見られたと報告されています。食品廃棄物の有効活用という観点からも、こうした研究の広がりは注目されるところです。今後の研究の進展にも期待したいところです。

※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。出典(原著論文):オーミック加熱処理オカラが加熱誘導性筋原線維タンパク質ゲルの構造特性と品質特性に及ぼす影響(フード・ケミストリー:エックス・2026年04月)

著者:Cao Z(School of Tourism and Cuisine, Yangzhou University, Yangzhou 225127, China.; Key Laboratory of Chinese Cuisine Intangible Cultural Heritage Technology Inheritance, Ministry of Culture and Tourism, Yangzhou 225127, China.; Institute of Catering Culture, Yangzhou University, Yangzhou 225127, China.)、Xie C(School of Tourism and Cuisine, Yangzhou University, Yangzhou 225127, China.)、Liu X(School of Tourism and Cuisine, Yangzhou University, Yangzhou 225127, China.)、Bie G(School of Tourism and Cuisine, Yangzhou University, Yangzhou 225127, China.)、Meng X(School of Tourism and Cuisine, Yangzhou University, Yangzhou 225127, China.; Key Laboratory of Chinese Cuisine Intangible Cultural Heritage Technology Inheritance, Ministry of Culture and Tourism, Yangzhou 225127, China.; Institute of Catering Culture, Yangzhou University, Yangzhou 225127, China.)