著者の所属・活動拠点の国は、インドネシアです。

掲載誌:Jurnal AGRISEP Kajian Masalah Sosial Ekonomi Pertanian dan Agribisnis

ライセンス: CC BY-SA 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の背景と目的

インドネシア・スマトラ島南部のランプン州では、ナマズ、ティラピア、パティン(パンガシウス属の淡水魚)といった淡水魚の養殖が盛んです。一方で、肉・卵・乳・魚などの動物性食品の摂取は理想的とはいえない状況にあります。国の食料庁は、多様でバランスのとれた食事がどの程度実現できているかを「期待食料パターン(PPH)」という点数で評価しています。2023年のランプン州では、動物性食品群の点数が基準の24.00に対して21.52にとどまっていました。

研究チームは、地元で多く生産されている淡水魚の消費を増やすことが、この不足を補う手がかりになると考えました。そこで、家庭がナマズ、ティラピア、パティンをどれだけ食べているかを明らかにし、その消費量に関わる要因を分析しました。

どのように調べたか

著者らが用いたのは、インドネシアの全国社会経済調査(Susenas)の2023年データです。ランプン州の1万443世帯のうち、この3種類の魚をすべて消費していた101世帯を対象としました。内訳は農村部が49世帯、都市部が52世帯です。

分析は二段階で行われました。まず、魚ごとの消費量を集計しました。次に、消費量に関わる要因を「見かけ上無関係な回帰(SUR)」という統計手法で調べました。これは、3種類の魚の消費量をそれぞれ説明する式を同時に推定する方法です。同じ家庭の食卓で決まる消費には、式どうしで説明しきれない部分が互いに関連し合うことがあり、SURはその点を考慮できます。要因の候補としては、各魚の価格、食用油の価格、世帯収入、扶養家族の人数、世帯主と主婦の学歴と年齢、そして都市部か農村部かを取り上げました。

主な結果

1人あたりの月間消費量は、ナマズとパティンがいずれも0.91キログラム、ティラピアが0.92キログラムで、3種類ともほぼ同じ水準でした。どの魚も、農村部の世帯のほうが都市部の世帯より多く消費する傾向がみられました。

要因の分析では、3種類すべてに共通して、世帯収入が高いほど消費量が多いという関係が示されました。都市部に住んでいることは、3種類すべての消費量の少なさと関連していました。一方、魚自身の価格やほかの魚の価格は、どの魚の消費量とも統計的に有意な関係を示しませんでした。著者らはこの結果から、3種類の魚は互いに代わりとして選ばれる関係にはないと解釈しています。世帯主と主婦の学歴も、消費量との有意な関係は認められませんでした。

魚の種類ごとに異なる要因もありました。ナマズでは、食用油の価格が高いほど消費量が少ないという関係がみられました。著者らは、ナマズが主に揚げて食べられるためだと説明しています。また、ナマズとティラピアでは、世帯主の年齢が高いほど消費量が多く、主婦の年齢が高いほど少ないという、逆向きの関係が示されました。ティラピアとパティンでは、扶養家族が多いほど消費量が多いという関係がみられました。

なお、今回のモデルで説明できたのは、消費量のばらつきの約36〜42%でした。著者らは、米・海水魚・鶏肉・豆腐などほかの食品の価格や、魚への好みといった、データの制約で扱えなかった要因が残りの部分に関わっている可能性を指摘しています。

この研究が示すこと

この研究は、同じ淡水魚でも、消費量に関わる要因が魚の種類によって一部異なることを示しました。ナマズでは調理に使う食用油の価格が、ティラピアやパティンでは家族の人数が関係していたように、家庭での食べ方や暮らしの事情が魚ごとに違って表れている可能性があります。

著者らは、収入向上の取り組みの継続、揚げ物以外のナマズ加工品の普及、都市部への供給体制の改善などを提言しています。地元で豊富に生産される食材をどう食卓につなげるかを考えるうえで、家庭の消費行動を魚の種類ごとに見ることの大切さが伝わる研究です。

原著論文の著者・所属:Dyah Aring Hepiana Lestari(Department of Agribusiness, Faculty of Agribusiness, University of Lampung, Lampung Indonesia)、Wuryaningsih Dwi Sayekti(Department of Agribusiness, Faculty of Agribusiness, University of Lampung, Lampung Indonesia)、Fembriarti Erry Prasmatiwi(Department of Agribusiness, Faculty of Agribusiness, University of Lampung, Lampung Indonesia)、Fitri Yuni Lestari(Department of Agribusiness, Faculty of Agribusiness, University of Lampung, Lampung Indonesia)、Desmarita Nugrahanti(Department of Agribusiness, Faculty of Agribusiness, University of Lampung, Lampung Indonesia)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Dyah Aring Hepiana Lestari, Wuryaningsih Dwi Sayekti, Fembriarti Erry Prasmatiwi, Fitri Yuni Lestari, Desmarita Nugrahanti Household Freshwater Fish Consumption and Its Determinants in Lampung Province. Jurnal AGRISEP Kajian Masalah Sosial Ekonomi Pertanian dan Agribisnis 2026-09-30. DOI: 10.31186/jagrisep.25.2.757-774. 原著ライセンス:CC BY-SA 4.0.

本紹介記事の文章(題名・見出しを含む)は、CC BY-SA 4.0で提供します。原著論文をもとにNutriMap Japanが日本語で要約・説明を加えています。対象は本紹介記事の文章に限り、ヒーロー画像・サイトのロゴ・画面デザイン・他の記事・データベース全体は含みません。