日本主導:この研究は、筆頭著者・責任著者、または著者の主要所属が日本の研究機関である研究です。
掲載誌:Tropical Agricultural Research and Extension
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
品質と安全の知識をどう伝えるか
研究チームは、スリランカの黒コショウ農家を対象に、情報の伝え方が食品の品質・安全に関する知識の習得と定着にどう影響するかを調べました。高い価値で取引される農産物の市場では、見た目などの物理的な特徴、純度、汚染物質の量に関する基準が重要になります。しかし、関連情報や収穫後の処理技術にアクセスしにくいことが、農家の知識習得を妨げています。
これまでの研究は主食となる作物を中心としており、黒コショウのような高付加価値作物で知識を高める方法については、十分な研究がありませんでした。
二つの学び方を比較
研究にはマータレー地区の農家660人が参加しました。研究チームは、参加者を無作為に割り付ける比較試験で、政府による品質・安全基準の普及指導と、農家同士が考えや経験を共有する取り組みを比べました。知識は取り組みの直後と6か月後に評価し、その場で学べたかだけでなく、時間がたっても知識が保たれているかを調べました。
著者らによると、政府の普及指導は直後の知識を統計的に有意に高め、その向上は6か月後にも維持されました。一方、農家同士の経験共有では直後の効果は見られませんでしたが、時間がたつにつれて知識が向上しました。著者らはこの結果について、仲間の実践を観察するなかで、農家の考えが徐々に変わった可能性を示すものと解釈しています。
知識の習得と定着を支える学び
論文は、食品の品質・安全基準に関する知識を高めるうえで、専門家が体系的に伝える普及指導の重要性を示しています。また、農家同士の学びは、すぐに知識を増やすというより、時間をかけた理解や定着を支える役割があると著者らは位置づけています。今回の研究が示したのは知識の変化であり、黒コショウそのものの品質や安全性が改善したという結果ではありません。
著者:E.A.G. Samanmalee Amarawansha(University of Hiroshima)、Truong Pham(Vietnam Japan University)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):E.A.G. Samanmalee Amarawansha, Truong Pham. Impact of Extension and Peer Learning on Knowledge of Food Quality and Safety: Evidence from Black Pepper Farmers in Sri Lanka. Tropical Agricultural Research and Extension 2026-09-30. DOI: 10.4038/tare.v29i3.5822. 原著ライセンス:CC BY.