著者の所属・活動拠点の国は、ネパールです。
掲載誌:Journal of Institute of Science and Technology
ライセンス: CC BY-NC 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
霊芝(Ganoderma lucidum、レイシ)は、古くから健康維持に用いられてきたキノコの一種として知られています。近年では栄養成分や機能性成分に関する科学的な分析が世界各地で進められており、栽培環境や産地によって成分がどう異なるのかにも関心が寄せられています。今回紹介する研究は、フィリピン株の霊芝を対象に、栄養成分やフィトケミカル(植物由来の機能性成分)、抗酸化活性、抗菌活性を詳しく調べたものです。
どんな方法で調べたのか
研究チームは、フィリピン株の霊芝をポテトデキストロース寒天培地で培養したのち、おがくずと米ぬかを混ぜた基質で栽培し、収穫したものを分析に用いました。なお、この霊芝はBLASTデータベースを用いた配列解析によって、G. lucidumであることが確認されています。分析では、脂質・炭水化物・タンパク質・粗繊維・灰分・水分といった基本的な栄養成分に加え、ミネラル、フェノール類やフラボノイドなどのフィトケミカル、そして抗酸化活性・抗菌活性が調べられました。
研究でわかったこと
栄養成分の分析では、タンパク質が10.53%、炭水化物が20.26%、脂質が1.32%、水分が8.56%、粗繊維が7.81%、灰分が4.97%含まれていることが示されました。また、ミネラルとしては銅(0.133±0.003 mg/g)、鉄(0.059±0.013 mg/g)、マンガン(0.022±0.002 mg/g)、亜鉛(0.030±0.001 mg/g)が検出されたと報告されています。
フィトケミカルについては、フェノール類(544.04±0.07 mg GAE/100g)、フラボノイド(194.11±0.04 mg QAE/100g)、タンニン(1275±0.05 mg TAE/100g)、リコピン(1.29±0.06 mg carotenoids/g)、β-カロテン(2.98±0.02 mg carotenoids/g)、サポニン(130.27±0.04 mg/100g diosgenin換算)、フィチン酸(96.23±0.03 mg/100g phytic acid換算)、テルペノイド(3.4%)が確認されたとされています。抗酸化活性についてはIC50値が154.8 μg/mlであったと報告されています(IC50は数値が小さいほど抗酸化力が強いことを示す指標です)。一方で、今回試験した濃度の範囲では、抗菌活性は認められなかったとされています。
これらの結果から、この研究では霊芝が栄養素や抗酸化成分の供給源として良好である可能性が示唆されています。
この研究を読むうえで知っておきたいこと
この研究は、特定の産地・栽培条件で得られたフィリピン株の霊芝1種類を対象にした分析であり、他の産地や栽培方法による霊芝でも同様の結果になるとは限りません。また、抗酸化活性やフィトケミカルの含有量が確認されたことは、健康への効果を直接証明するものではなく、あくまで成分分析および試験管内での測定結果です。抗菌活性については、この研究の試験条件下では検出されなかった点にも注意が必要です。ヒトでの健康効果を確かめるものではなく、一つの研究であり結論が確定したわけではない点を踏まえて読むとよいでしょう。
まとめ
今回紹介した研究では、フィリピン株の霊芝についてタンパク質や炭水化物などの基本的な栄養成分に加え、フェノール類やフラボノイド、β-カロテンなど多様なフィトケミカルが含まれていることが分析により示されました。抗酸化活性も確認された一方、試験した濃度では抗菌活性は見られなかったとされています。今後、異なる産地や栽培条件との比較や、ヒトでの検証など、さらなる研究の積み重ねが期待される分野といえそうです。
※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。出典(原著論文):霊芝(Ganoderma lucidum)の栄養、フィトケミカル、抗酸化、抗菌分析(ジャーナル・オブ・インスティテュート・オブ・サイエンス・アンド・テクノロジー・2026年07月)
著者:Manita Shyaula(Faculty of Science, Nepal Academy of Science and Technology, Khumaltar, Lalitpur, Nepal)、Indu Shrestha(Faculty of Science, Nepal Academy of Science and Technology, Khumaltar, Lalitpur, Nepal)、Mohammad Ataullah Siddiqui(Faculty of Science, Nepal Academy of Science and Technology, Khumaltar, Lalitpur, Nepal)、Menuka Aryal(Faculty of Science, Nepal Academy of Science and Technology, Khumaltar, Lalitpur, Nepal)、Christina Khadka(Central Department of Microbiology, Tribhuvan University, Kirtipur, Kathmandu, Nepal)、Akash Bade(Mushroom Seed Nepal & Research Center, Madhyapur Thimi, Bhaktapur, Nepal)、Jyoti Maharjan(Faculty of Science, Nepal Academy of Science and Technology, Khumaltar, Lalitpur, Nepal)、Lok Ranjan Bhatt(Faculty of Science, Nepal Academy of Science and Technology, Khumaltar, Lalitpur, Nepal)