ダイエットや健康的な食生活が話題になる一方で、私たちの食べ物選びには「おいしさ」を重視する気持ちも大きく関わっています。では、そうした「味を重視する食べ方への態度」は、どのような背景から生まれるのでしょうか。性別や出身地域、収入といった社会的な属性や、家族・メディアからの「こうあるべき」というプレッシャーが関係しているのか——。今回紹介する論文は、大学生513人を対象にこの問いを調べた横断研究です。
どんな研究?
研究チームは、健康科学系および人文系の学部に通う18歳以上の男女大学生513人を対象に調査を行いました。参加者からは性別、出身地域、収入、就労状況といった社会人口統計学的な情報を収集。そのうえで、「Taste Related Attitudes Scale(味覚関連食態度尺度)」という指標を用いて、味を重視する食べ方への態度を評価しました。
さらに、外見に関する社会文化的な圧力を測る「SATAQ-4(外見に対する社会文化的態度質問紙)」を使い、家族やメディアからのプレッシャー、そして「筋肉質・アスリート的な体型が理想」という価値観をどの程度内面化しているかについても調べました。これらのデータをもとに、重回帰分析という統計手法で、どの要因が味覚重視の食態度と関連しているかを検討しています。
わかったこと
分析の結果、社会人口統計学的な要因については、男性であること、就労していること、そして中西部地域の出身であることが、味覚関連の食態度をあまり予測しない(関連が弱い)ことが示されました。
一方、社会文化的な要因では対照的な結果が見られました。筋肉質・アスリート的な体型を理想とする価値観を強く内面化している人ほど、味覚重視の食態度は少ない傾向が示されました(β = -0.217、p = 0.012)。これに対して、家族からのプレッシャー(β = 0.216、p = 0.044)や、メディアからのプレッシャー(β = 0.326、p < 0.001)を強く感じている人ほど、味を重視する食態度がより強く見られる傾向が示されました。なお、これらの要因を組み合わせたモデル全体では、味覚関連食態度のばらつきの約21.4%を説明できるという結果でした。
この研究を読むうえで
この研究は、あくまで大学生513人を対象とした一時点の横断調査であり、原因と結果の関係を直接証明するものではありません。「家族やメディアからの圧力が強いから味重視の食態度になる」のか、それとも別の要因が背景にあるのかは、この結果だけでは断定できません。あくまで一つの研究であり、結論が確定したわけではない点に留意して読む必要があります。
研究チームは、こうした知見が、超加工食品のような「非常に嗜好性の高い(食べやすくおいしいと感じやすい)食品」の摂取に影響する要因を理解する手がかりになる可能性がある、としています。
まとめ
今回紹介した研究では、大学生の味覚重視の食態度について、性別や就労状況といった属性よりも、家族やメディアからの社会文化的な圧力、そして体型理想の内面化との関連が示唆されました。特に、筋肉質な体型理想の内面化は味覚重視の態度と負の関連を示し、家族やメディアからのプレッシャーは正の関連を示すという対照的な結果は興味深い点です。食べ物の選び方の背景には、栄養知識だけでなく、こうした社会的・文化的な影響も絡み合っていることを示す一例と言えそうです。
※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:大学生における味覚に対する食態度への社会人口統計学的影響と社会文化的圧力(ヌトリレ・2026年07月)