著者の所属・活動拠点の国は、ポーランドです。
掲載誌:Scientific Reports
ライセンス: CC BY-NC-ND 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
心血管疾患というと中高年の病気というイメージが強いかもしれませんが、その芽は若いうちからの生活習慣や意識のあり方に関わっているとされています。とりわけ「大人になる節目」である18歳前後は、食事や運動、睡眠、飲酒・喫煙といった生活習慣が本人の選択によって固まり始める時期でもあります。今回紹介するのは、ポーランドの18歳の若者を対象に、心血管の健康に関する認識と生活習慣行動を大規模に調べ、そこに男女差があるかどうかを検証した研究です。
研究でわかったこと
この研究は、ポーランド全土250校の中等教育機関の最終学年に在籍する学生、1万人超を対象に行われた全国調査です。層化クラスター抽出という方法でサンプルを選び、データには全国を代表する結果となるよう重み付けが行われました。最終的に女性6,076人、男性4,019人、合計10,095人分のデータが解析されています。調査では、心血管疾患のリスク要因に関する知識と、食事・身体活動・睡眠・飲酒喫煙などの生活習慣が評価されました。
体格については、過体重が男性17.0%・女性8.4%、肥満が男性4.1%・女性2.1%と、いずれも男性で高い割合が報告されています。一方で、自分の血圧の数値を把握していた人は女性14.6%、男性14.3%とほぼ同水準で、全体として血圧への関心の低さがうかがえる結果でした。
画面を見る時間(スクリーンタイム)は平日平均5.9時間、休日は6.7時間まで伸び、休日については男女差があったとされています。睡眠については、平日に7時間未満しか眠れていない人が女性で52.6%、男性で40.5%にのぼった一方、休日には95%が十分な睡眠をとれていたと報告されています。また、睡眠不足が糖尿病や肥満のリスクと関わるという知識を持つ人はごくわずかだったとされています。
飲酒・喫煙については、週100g以上のアルコールを摂取する人が男性20.5%、女性12.6%と男性で多かった一方、毎日喫煙する人は女性22.8%、男性23.7%とほぼ同水準で高い割合が示されています。運動習慣については、推奨される運動量を満たしていた人が夏場で女性61.0%、男性76.7%となり、冬場にはさらに減少したとされています。食生活に関しては、男性の方が不健康とされる食品をより頻繁に摂取する傾向が報告されました。
心筋梗塞のリスク要因についての知識を尋ねたところ、多くの人が代表的なリスク要因を認識していた一方、高コレステロールをリスクとして挙げられた人は65%未満にとどまり、この点では女性の方が男性より正答率が高い傾向にあったとされています。
この研究の位置づけ・読むうえでの注意
研究チームは、これらの結果から「女性は理論的な知識は優れているものの、運動不足や睡眠不足に陥りやすい」「男性は不健康な食習慣や飲酒・喫煙の負担が大きい」という、男女で異なる心血管リスクの傾向が浮かび上がったとまとめています。そのうえで、公衆衛生上の働きかけも性別に応じて内容を変える必要がある、たとえば若い女性には身体活動の促進を、若い男性には食事の改善と依存性物質への対策を重点的に行うことが有効ではないかと示唆しています。
この調査はポーランドの18歳という特定の集団を対象にした横断的な調査であり、得られた関連や傾向が他の年齢層や地域にそのまま当てはまるとは限りません。あくまで一つの研究であり、ここで示された男女差や割合がすべての若者に一般化できると結論づけられたわけではない点には留意が必要です。
まとめ
この研究は、ポーランドの18歳という「大人の入り口」に立つ若者たちの心血管に関する意識と生活習慣を大規模に調べ、そこに男女で異なる特徴があることを報告したものです。女性は知識面では優れる一方で運動不足や睡眠不足の傾向があり、男性は食生活や飲酒・喫煙の面で課題を抱えやすいという結果は、今後の若年層向けの健康施策を考えるうえでの一つの手がかりになりそうです。
※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。出典(原著論文):全国調査により明らかになったポーランドの18歳青年における心血管認識と生活習慣行動の性差(サイエンティフィック・リポーツ・2026年07月)
著者:P Dobrowolski(Center for Cardiovascular Disease Prevention and Epidemiology, National Institute of Cardiology, Alpejska 42, Warsaw, 04-628, Poland. [email protected])、Agnieszka Doryńska(Center for Cardiovascular Disease Prevention and Epidemiology, National Institute of Cardiology, Alpejska 42, Warsaw, 04-628, Poland)、Witold Śmigielski(Center for Cardiovascular Disease Prevention and Epidemiology, National Institute of Cardiology, Alpejska 42, Warsaw, 04-628, Poland)、Maja Kłopecka(Student Scientific Group, Medical University of Warsaw, Warsaw, Poland)、Klaudia Dudek(Student Scientific Group, Medical University of Warsaw, Warsaw, Poland)、Patryk Dudek(Student Scientific Group, Medical University of Warsaw, Warsaw, Poland)、Ludmiła Podgórska-Stawecka(Center for Cardiovascular Disease Prevention and Epidemiology, National Institute of Cardiology, Alpejska 42, Warsaw, 04-628, Poland)、Dorota Godzina(Center for Cardiovascular Disease Prevention and Epidemiology, National Institute of Cardiology, Alpejska 42, Warsaw, 04-628, Poland)、Anna Mizerska(Center for Cardiovascular Disease Prevention and Epidemiology, National Institute of Cardiology, Alpejska 42, Warsaw, 04-628, Poland)、Anna Fijałkowska(Department of Cardiology, Institute of Mother and Child, Warsaw, Poland)、Anna Dzielska(Department of Cardiology, Institute of Mother and Child, Warsaw, Poland)、Janina Stępińska(National Institute of Cardiology, Warsaw, Poland)、Adam Witkowski(Department of Interventional Cardiology and Angiology, National Institute of Cardiology, Warsaw, Poland)、Aleksander Prejbisz(Center for Cardiovascular Disease Prevention and Epidemiology, National Institute of Cardiology, Alpejska 42, Warsaw, 04-628, Poland)