忙しい毎日の中で、栄養バランスの取れた食事を手軽にとりたいというニーズから、あらかじめ献立が組まれた「ミールキット宅配食」を利用する人が増えています。特定の食事療法(例えば橋本病向けの食事や、血圧管理で知られるDASH食、糖質を控えた低炭水化物食など)に対応したサービスも多く、健康志向の消費者に選ばれています。しかし、こうした宅配食に実際にどれだけのミネラルが含まれているのか、また、環境中の重金属などの有害元素がどの程度含まれているのかについては、これまであまり詳しく調べられていませんでした。今回紹介する研究は、ポーランドの商業ミールキット宅配サービスを対象に、この点を科学的に検証したものです。

研究でわかったこと

研究チームは、橋本病食・DASH食・低炭水化物食という3種類の食事モデルを提供する複数のミールキット宅配サービスから、1日分の食事(デイリーフードレーション)を集めました。そして、原子吸光分光法(AAS)という手法を用いて、カルシウム(Ca)、銅(Cu)、鉄(Fe)、マグネシウム(Mg)、セレン(Se)、亜鉛(Zn)という必須ミネラルの含有量を測定しました。また、誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS)という別の分析手法で、カドミウム(Cd)や鉛(Pb)といった有害元素の含有量も調べました。

ミネラルが十分に含まれているかどうかは、「推定平均必要量(EAR)」という栄養学的な基準値と比較して評価され、摂りすぎていないかは「耐容上限量(UL)」という基準値と比較されました。有害元素については、1日あたりの推定摂取量(EDI)や週あたりの推定摂取量(EWI)、健康リスクの指標であるTHQ(標的臓器危険指数)やCR(発がんリスク)という指標を用いて評価されました。

結果として、最も不足しがちだったのはカルシウムで、分析された献立の80〜98%が推定平均必要量を満たしていなかったと報告されています。一方、それ以外のミネラルについては、おおむね十分な量が供給されていたとされています。ただし、一部の食事モデルでは特定のミネラルの過剰摂取も見られ、DASH食では最大37%の献立で亜鉛が耐容上限量を超え、橋本病食では約32%の献立で銅が耐容上限量を超えていたことが示されています。

有害元素であるカドミウムと鉛については、分析されたすべての食事から検出されたものの、THQやCRの値から見て、健康リスクは無視できる水準であったとされています。

この研究の位置づけ・読むうえでの注意

この研究は、あくまで今回分析された特定のミールキット宅配食を対象にした結果であり、著者らも、ポーランドの商業ケータリングサービス全般や、季節ごとに変わる献立サイクルすべてに一般化できるものではないと述べています。つまり、「宅配食は総じてカルシウムが不足しがちで安全性は高い」と単純に結論づけられるものではなく、あくまで一つの調査結果として捉える必要があります。

また、この記事はこの論文の要旨の内容のみに基づいて紹介しており、具体的な数値の詳細や統計的な分析手法などについては、原論文を参照することをおすすめします。

まとめ

今回紹介した研究では、ポーランドの商業ミールキット宅配食を対象に必須ミネラルと有害元素の含有量が調べられ、カルシウムが多くの献立で不足しがちである一方、亜鉛や銅については一部の食事モデルで過剰摂取となる可能性が示されました。カドミウムや鉛による健康リスクは低いとされていますが、著者らは、商業的に調製される食事の栄養品質管理の改善が必要であると指摘しています。ミールキット宅配食を選ぶ際には、こうした研究結果も踏まえつつ、必要に応じて他の食品でミネラルバランスを補うことも一案かもしれません。

※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:ポーランドの商業ミールキット宅配食における必須元素・有害元素の評価:栄養推奨基準との適合性(フーズ・2026年07月)