木箱を開けた瞬間、橙色の身がこちらを向いている。濃く、鮮やかで、まだ形がきちんと立っている。その美しさは、時間とともに静かに崩れていく。生のウニは冷凍もできず、鮮度が落ちると溶けるように形を失う。「買ったその日に食べ切る」という鉄則は、食の世界でもなかなか珍しい。礼文島や利尻島から届くエゾバフンウニ(うに 生うに)の旬は6〜8月。初夏の今は、その季節が始まったばかりのひと口だ。

「食べられるウニ」の正体は、生殖巣

私たちが口にしているのは、ウニの殻の内側に収まった生殖巣——卵巣と精巣だ。棘に覆われた球形の殻から取り出し、木箱に丁寧に並べて流通させる。国内にはウニの種類が100ほどあるとされ、代表的なものに紫うに・ばふんうに・赤うにがある。紫うにが流通量では最も多いが、食通が名指しするのはバフンウニ、とりわけ北海道産のエゾバフンウニだ。小ぶりで身は短く、その色はオレンジに近い濃い橙色をしている。卵巣のほうが黄色みが強く味もよいとされ、その鮮やかさは礼文・利尻の冷たい海が育てた証でもある。

ただし正直に一言添えておく。日本食品標準成分表(八訂)にはエゾバフンウニ単独の収録がないため、以下の数値は「うに 生うに」の一般値で見ている。

この橙色に、葉酸が詰まっている

うに(生うに)の葉酸は可食部100gあたり360μgで、成人の1日推奨量240μgを上回る量が含まれている。葉酸は核酸の生合成に関わり、赤血球の形成や胎児の発育に関わる栄養素とされる。あの鮮やかな橙色の身に、こうした栄養が凝縮されている。

※本記事は日本食品標準成分表(八訂)および厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」のデータをもとに作成しました。