お米を精米するとき、玄米の表面からは「米ぬか」と呼ばれる副産物が出ます。米ぬかは玄米の外層の約10%を占め、これまで主に動物飼料や肥料、バイオ燃料の原料として利用されてきました。しかし実は、米ぬかには私たちの食生活に役立つ可能性のある栄養成分が数多く含まれていることが知られています。今回紹介する論文は、この米ぬかに含まれる油(米ぬか油)とタンパク質の理化学的・構造的な特性を評価したものです。
米ぬかには、タンパク質が10〜16%、脂質が12〜22%含まれるほか、食物繊維、ビタミンB群、ビタミンE、そして抗酸化作用や栄養面での特性が注目されているガンマオリザノールなど、さまざまな生理活性成分が含まれているとされています。
米ぬか油の脂肪酸バランスとは
この研究では、米ぬかから抽出される油の脂肪酸組成が調べられています。それによると、米ぬか油は一価不飽和脂肪酸であるオレイン酸を約43%、多価不飽和脂肪酸であるリノール酸を約32%、飽和脂肪酸であるパルミチン酸を約15%含んでおり、全体としてバランスの取れた脂肪酸組成を持つと報告されています。この脂肪酸プロファイルは、心血管の健康の向上や酸化ストレスの軽減に大きく寄与するとされています。また、飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸の比率はおよそ20対80で、量は少ないものの重要な役割を持つとされるα-リノレン酸も約0.8%含まれていることが示されています。
さらに、トコフェロールやフィトステロール、ポリフェノール、ガンマオリザノール(酵素抽出した油ではおよそ1.76%)といった非鹸化成分も、油の抗酸化能やコレステロール低下作用を高める要素として挙げられています。
米ぬかタンパク質の質の高さ
米ぬかに含まれるタンパク質は、アルブミン、グロブリン、グルテリン、プロラミンといった種類に分けられます。この研究では、これらのタンパク質の消化率が90%を超え、タンパク質消化性補正アミノ酸スコア(PDCAAS)は2.0〜2.5の範囲にあることが示されており、質の高いタンパク質源としての価値が指摘されています。また、稲の品種によって米ぬかのアミノ酸組成には遺伝的なばらつきがあるものの、必須アミノ酸が総アミノ酸に占める割合は、ぬかの各画分で31.35%〜34.8%の範囲にあり、ぬかの層全体を通してタンパク質の質が比較的一定であることが示唆されています。
この研究をどう読むか
この論文は、米ぬかの油とタンパク質が持つ理化学的・構造的な特性を整理し評価したものであり、特定の疾患の予防や治療効果を検証した臨床研究ではありません。紹介されている脂肪酸組成やアミノ酸スコアなどの数値は、米ぬかという素材が持つ栄養学的なポテンシャルを示すものであって、米ぬか油やタンパク質を摂取することで健康上の効果が得られると断定するものではない点に注意が必要です。論文でも述べられているように、米ぬかは栄養的に豊富な組成を持つにもかかわらず、これまで人の食生活における直接的な利用は限られてきました。
それでも、バランスの取れたアミノ酸含有量や有益な脂肪酸プロファイル、強力な抗酸化成分を持つことから、米ぬかは食品・医薬品・化粧品分野における機能性素材としての可能性を持つ素材だと位置づけられています。今後、こうした基礎的な特性評価をふまえて、実際の食品応用に向けた研究が積み重ねられていくことが期待されるテーマだと言えるでしょう。
※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:米ぬか油とタンパク質の理化学的・構造的特性の評価(食品産業の新技術・2025年10月)