カリウムは、体の細胞一つひとつの中にある主要なミネラルです。細胞内の水分バランス(浸透圧)を保ち、正常な血圧の維持に関わる栄養素として知られています。成人の体内に約200gあり、その大部分が細胞の内側に存在します。神経の働きや筋肉の収縮にも関与しているとされる、体の基盤を支える成分です。
女性(30〜49歳)の1日の目安量は2,000mgと設定されています。さて、食品成分表の収載食品(数値あり・約2,480件)の中で、カリウムが最も多い食品は何でしょうか。野菜や海藻を思い浮かべた方は、少し意外な答えを受け取ることになります。
データが示す意外な1位——減塩タイプ食塩という逆説
第1位は減塩タイプ食塩(調味料不使用)で、可食部100gあたりのカリウムは25,000mg。目安量2,000mgに対する割合は1,250%に達します。第2位も減塩タイプ食塩(調味料含む)で19,000mg(同950%)。
なぜこの数字が生まれるかといえば、減塩タイプ食塩は塩化ナトリウムの一部を塩化カリウムで置き換えた製品だからです。カリウムには余分なナトリウムの排泄を助ける働きがあるとされ、減塩にカリウムを含む食材の利用が役立つとも言われます。その着想で生まれた製品が、カリウム含有量でトップに立つというわけです。
ところが同時に目に入るのが、食塩相当量の数字です。第1位の食塩相当量は100gあたり45.7g(ナトリウム18,000mg)。女性30〜49歳の1日の食塩目標量(上限)6.5gに対して703%に相当します。第2位も49.4g(ナトリウム19,000mg・同760%)。カリウムを届けるつもりで使う量が増えれば、ナトリウムも比例して増える——これが「減塩の味方」が「ナトリウムの運び屋」でもあるという構造的な矛盾です。食塩は少量で使うものですから通常の一振りで過剰を心配する必要はありませんが、カリウム源として積極的に使い量を増やすことは意味をなしません。
矛盾のない上位食品——干しずいき・昆布・わかめ
ナトリウムを引き連れずにカリウムを摂れる食品が、3位以下に並んでいます。
干しずいきは第3位で、100gあたり10,000mg(目安量の500%)。ずいきはさといもの茎で、干したものは別名「いもがら」とも呼ばれます。煮物1人分の目安は約20gですので、乾燥重量20gあたりの計算値は約2,000mgとなります。ただしカリウムは水溶性で、ゆでると煮汁に溶け出す性質があるため、実際の摂取量はこれより低くなります。煮汁ごと食べられる煮物はカリウムの損失を抑えた食べ方といえます。また、乾燥品100gあたりのマンガン含有量は25mgです。煮物1人分(約20g)では約5mgとなり、耐容上限量(11mg/日)の約0.45倍程度です。乾燥品100gあたりで見ると耐容上限の約2.3倍に相当するため、乾燥品を大量に使うことは避けましょう。
第4位の刻み昆布は100gあたり8,200mg(目安量の410%)。昆布はカリウムを豊富に含み、食物繊維も多くエネルギーが低いという特徴があります。ただし昆布類はヨウ素が非常に多く、刻み昆布は100gあたり約230,000µgのヨウ素を含みます(八訂値)。5g(1人分目安)に換算すると約11,500µgとなり、耐容上限量(3,000µg/日)の約3.8倍に相当する水準です。カリウム源として毎日大量に使うより、汁物や煮物に少量加える使い方が現実的です。
第5位の板わかめ(乾燥品)は100gあたり7,400mg(目安量の370%)。乾燥品は少量に凝縮されているので、みそ汁やサラダに加えることで手軽にカリウムを摂り入れやすい食材です。
「カリウムが多い食品」より「ナトリウムとセットで選ぶ目」
食品成分表の数字だけを追うと、減塩タイプ食塩がカリウムの最多食品に見えます。しかし実際の食生活でカリウムを意識するなら、カリウムの含有量と同時にナトリウム量も確認する視点が役立ちます。干しずいき・昆布・わかめのような食材は、ナトリウムを大量に伴わずにカリウムを届けられる選択肢です。数字の多さではなく、何と一緒に体に入るかまで見て選ぶ——それがカリウムを日常の食卓に活かす一歩です。ただし、腎機能が低下している方はカリウムの摂り過ぎに注意が必要なため、医師・管理栄養士にご相談ください。また、昆布・わかめなどの海藻類はヨウ素を多く含むため、甲状腺疾患(バセドウ病・橋本病など)のある方や妊婦の方は摂り過ぎにご注意ください。
参考:日本食品標準成分表2020年版(八訂)/文部科学省、日本人の食事摂取基準/厚生労働省、消費者庁 食品表示基準 別表第11
栄養素のはたらき・摂取基準の記述は、次の公的資料に基づきます:厚生労働省 食事摂取基準・e-ヘルスネット「カリウム」(厚生労働省)
※本記事は日本食品標準成分表(八訂)および日本人の食事摂取基準(2025年版)のデータ等をもとに作成しました。