著者の所属・活動拠点の国は、カナダ、アメリカです。
掲載誌:The American journal of clinical nutrition
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
赤ちゃんにとって最初の食事である母乳。その栄養組成についての「公式データ」が、実は40年以上前の研究をもとにしたものだったとしたら、驚かれる方も多いのではないでしょうか。最新の研究が、母乳栄養の理解に新たな光を当てています。
研究でわかってきたこと
アメリカン・ジャーナル・オブ・クリニカル・ニュートリションに2026年5月に掲載された研究では、北米(アメリカ・カナダ)の食品組成データベースに登録されている母乳の栄養プロファイルが、1980年以降の最新文献をもとに大規模に見直されました。
これまで北米の公的データベースで使用されてきた母乳の栄養組成値は、主に40年以上前の研究に基づくものでした。2018年には米国農務省(USDA)が「現在の栄養摂取状況の推定には適さない」と判断したことから、研究チームは1980〜2022年の期間をカバーする3件の系統的レビューと1件の大規模カナダバイオモニタリング研究を精査。母乳に含まれる40以上の成分について、最新の暫定値を算出したと報告されています。
特に注目されるのは、これまでデータベース上で「0」とされていたDHA(ドコサヘキサエン酸)の値が更新されたこと、またビタミンKについては他の食品からの推定値があてられていたものが、母乳の実測データに基づいて改訂されたことが示唆されています。さらに、総脂肪・鉄・マンガン・多くのビタミン・脂肪酸の値が、旧来のデータと20%以上異なっていたとも報告されており、母乳栄養に対する理解が大きく更新される可能性があります。
この研究はあくまで北米の食品組成データベースの更新を目的としたものですが、「乳幼児に与えられる最初の栄養源の実態を正確に把握する重要性」を改めて示すものとして、栄養科学の分野で広く注目されています。
注目の食品と実測データ
今回の研究では母乳そのものの組成が見直しの対象となりましたが、母乳の栄養組成は授乳中の母親の食事内容とも関連があると考えられています。特にDHAやビタミンK、鉄などは、日常の食生活から摂取する栄養素として広く知られています。
残念ながら、今回の研究で取り上げられた母乳成分の具体的な数値や、関連する食品の成分値について、当サイトのデータベースに現時点で収録している実測値はございません。食品の栄養成分に関する公的な数値をお知りになりたい場合は、文部科学省が公表する食品成分データベース(https://fooddb.mext.go.jp/)や、国立健康・栄養研究所の情報などをご参照ください。
日々の食事に取り入れるヒント
母乳栄養の研究は専門的な領域ですが、「日常の食事の質が乳幼児期の栄養に影響しうる」という視点は、授乳中の方だけでなく、妊娠を考えている方や子育て世代全般にとって意識しておきたいポイントです。以下のような食習慣を日々の参考にしてみてはいかがでしょうか。
- 魚介類を週に数回取り入れる:青魚(サバ・イワシ・サンマなど)にはDHAやEPAといった不飽和脂肪酸が含まれています。焼き魚や煮魚など、手軽な調理法で日常に取り入れやすい食材です。
- 緑黄色野菜を意識する:ほうれん草・小松菜・ブロッコリーなどの緑黄色野菜はビタミンKを含む食材として知られています。毎食の副菜として取り入れると、食事全体のバランスが整いやすくなります。
- 鉄を含む食品を組み合わせて食べる:レバーや赤身肉、大豆製品、貝類などは鉄を含む食品として代表的です。ビタミンCを含む食品と組み合わせると、鉄の吸収をサポートしやすいとされています。
- 食事の多様性を大切に:特定の食品に偏らず、主食・主菜・副菜をそろえた食事を心がけることが、さまざまな栄養素をバランスよく摂取する基本とされています。
母乳の栄養組成研究は、科学の進歩とともに常に更新されていくものです。今回のような最新データに基づく見直しが進むことで、乳幼児の栄養管理や授乳中の食生活へのアドバイスがより精緻になっていくことが期待されます。日常の食事において特定の食品や栄養素にこだわりすぎず、バランスのよい食習慣を長く続けることが、健やかな生活の土台となるでしょう。何か気になることがあれば、管理栄養士や医療専門家に相談することをおすすめします。
※本記事は日本食品標準成分表(八訂)のデータ等をもとに作成しました。出典(原著論文):Literature-based human milk nutrient composition values for use in North American food composition databases(アメリカン・ジャーナル・オブ・クリニカル・ニュートリション(2026-05-01))
栄養素のはたらきの記述は、次の公的資料に基づきます:食品安全委員会
著者:Kathryn E. Hopperton(Nutrition Research Division, Bureau of Nutritional Sciences, Food and Nutrition Directorate, Health Canada, Ottawa, ON, Canada. Electronic address: [email protected])、Samadhi Thavarajah(National Institute of Environmental Health Sciences, NIH, Durham, NC, United States)、Jaspreet K.C. Ahuja(USDA, Agriculture Research Service, Beltsville Human Nutrition Research Center, Beltsville, MD, United States)、Kellie Casavale(Office of Surveillance Strategy and Risk Prioritization, Human Foods Program, Food and Drug Administration, United States Department of Health and Human Services, College Park, MD, United States)、Subhadeep Chakrabarti(Nutrition Premarket Assessment Division, Bureau of Nutritional Sciences, Food and Nutrition Directorate, Health Canada, Ottawa, ON, Canada)、Kimberlea Gibbs(National Institute of Diabetes and Digestive and Kidney Diseases, NIH, Bethesda, MD, United States)、Tina Irrer(Office of Surveillance Strategy and Risk Prioritization, Human Foods Program, Food and Drug Administration, United States Department of Health and Human Services, College Park, MD, United States)、Stephanie Nishi(Nutrition Premarket Assessment Division, Bureau of Nutritional Sciences, Food and Nutrition Directorate, Health Canada, Ottawa, ON, Canada)、Sophie Parnel(Nutrition Premarket Assessment Division, Bureau of Nutritional Sciences, Food and Nutrition Directorate, Health Canada, Ottawa, ON, Canada)、Pamela Pehrsson(USDA, Agriculture Research Service, Beltsville Human Nutrition Research Center, Beltsville, MD, United States)、Melanie Stanton(Nutrition Premarket Assessment Division, Bureau of Nutritional Sciences, Food and Nutrition Directorate, Health Canada, Ottawa, ON, Canada)、Dennis Anderson-Villaluz(Office of Disease Prevention and Health Promotion, United States Department of Health and Human Services, Rockville, MD, United States)、Krista A. Zanetti(Office of Nutrition Research, Office of the Director, NIH, Bethesda, MD, United States)、Ashley J. Vargas(National Institute of Environmental Health Sciences, NIH, Durham, NC, United States)