毎日食べている白いご飯。実はその精米の工程で、米粒の外側にある豊富な栄養素の多くが取り除かれていることをご存じでしょうか。近年、米ぬかに含まれる栄養素や生理活性成分(体内で何らかの働きをすると考えられる成分)への関心が世界的に高まっており、研究者たちはその実態の解明に取り組んでいます。
研究でわかってきたこと
2026年5月に学術誌『人間栄養のための植物食』に掲載された研究では、コスタリカで栽培されたインディカ種・アロマティック種・ジャポニカ種の合計11品種の米を対象に、精米工程が栄養素の保持率にどのような影響を与えるかが調べられました。
その結果、白米は米ぬかと比較してビタミンE(トコフェロールおよびトコトリエノール)が約66%少なく、ミネラル類は約75%少なかったと報告されています。つまり精米によって、これらの成分の多くが失われてしまうことが示唆されています。
さらに興味深いのは、精米の度合いと栄養素の損失量との間に明確な相関関係が見られなかったという点です。研究では、栄養素の保持率は精米度合いよりも、米そのものが持つ品種固有の特性に大きく関係している可能性が示唆されています。
また、米ぬかに含まれる代表的な生理活性成分として、γ-オリザノール(米ぬか特有の脂溶性成分)、フェルラ酸(ポリフェノールの一種)、γ-トコトリエノール(ビタミンEの仲間)の体内への吸収しやすさを模擬消化実験と細胞実験で調べた結果も報告されています。フェルラ酸は消化の安定性・溶解性・生体利用率がいずれも高い傾向が見られたとのこと。一方、γ-オリザノールはエステル型という構造のためか吸収率は控えめであり、γ-トコトリエノールは細胞への吸収が検出されなかったとも報告されています。これらは試験管内・細胞レベルの実験結果であり、実際の人体での作用を直接示すものではない点に留意が必要です。
注目の食品と実測データ
今回の研究テーマである米・米ぬかに関連する食品について、現在当サイトのデータベースへの格納作業を進めているところです。米ぬかや玄米に含まれるビタミンEやミネラルの具体的な数値については、農林水産省が公表する食品成分データベースや、文部科学省の日本食品標準成分表(八訂)をご参照ください(出典:文部科学省 日本食品標準成分表(八訂))。
なお、最新の日本人の食事摂取基準(厚生労働省)では、ビタミンEやミネラルのマグネシウムなど、米ぬかに多く含まれる成分について目安量や推奨量が設定されており、日常の食事で意識して摂取することが望ましいとされています(出典:厚生労働省 日本人の食事摂取基準)。
日々の食事に取り入れるヒント
白米を食べながらも米由来の栄養素を意識したい方に向けて、いくつかの実践的なヒントをご紹介します。
- 玄米や分つき米を試してみる:精米度合いを下げることで、米ぬか層に含まれる栄養素を多く残すことができます。まずは白米に少量の玄米を混ぜるところから始めてみましょう。
- 米ぬかを料理に活用する:食用の米ぬかはスーパーや自然食品店でも購入できます。みそ汁やスープに少量加えたり、炒め物に使ったりする方法が知られています。ただし、酸化しやすいので開封後は冷蔵保存し早めに使いきるのがポイントです。
- 多様な穀物を組み合わせる:麦ご飯や雑穀米を取り入れることで、穀物由来の栄養素のバリエーションを広げることができます。
- 調理法を工夫する:水溶性のビタミンやミネラルは水に溶け出しやすい性質があります。炊飯時に必要以上に洗いすぎないよう気をつけることも一つの選択肢です。
まとめ
白米を毎日食べることは日本の食文化の核心であり、エネルギー源としての価値はもちろん揺るぎません。一方で、精米工程によって米ぬか層の栄養素が大幅に減少する可能性が研究から示唆されており、玄米や分つき米、米ぬかなどをうまく組み合わせることで、より豊かな栄養バランスを目指せるかもしれません。特定の食品に頼りすぎず、多様な食材を組み合わせたバランスの良い食生活を日々の基本にしていきましょう。
※本記事は日本食品標準成分表(八訂)のデータ等をもとに作成しました。参考文献:From Rice Grain to Rice Bran: Processing Effects on Nutrient Retention, In Vitro Bioaccessibility and Caco-2 Cellular Absorption of Bioactive Compounds(人間栄養のための植物食(ドルドレヒト、オランダ)(2026-05-15))