著者の所属・活動拠点の国は、トルコです。

掲載誌:Toxics

ライセンス: CC BY 4.0 対象: 公開論文 確認元: Crossref

近年、乳製品を含むさまざまな食品からマイクロプラスチック(MP:微細なプラスチック粒子)が検出されるという報告が増えており、食品の安全性に関する関心が高まっています。ただし、MPが複雑な食品の中でどのようにふるまうのか、また乳酸菌やビフィズス菌などのプロバイオティクス(体に良いとされる微生物)とどのような関わりを持つのかについては、まだよくわかっていない部分が多く残されています。今回紹介する研究は、この『プロバイオティクスとマイクロプラスチックの相互作用』という、まだ手つかずの領域に光を当てようとした探索的な取り組みです。

研究でわかったこと

研究チームは、ビフィズス菌の一種であるBifidobacterium longum subsp. infantis(ATCC 15697株)を含むヨーグルトを用意し、そこにポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリスチレン(PS)という3種類のプラスチックを、単独あるいは組み合わせて加えました。そのうえで、冷蔵保存21日間にわたり、消化に対して耐性を持つ『回収残渣』——実験の手順上、便宜的に定義された指標であり、検証済みの正確なプラスチック質量そのものではない点に注意が必要です——の変化を調べました。プラスチックの種類そのものは、熱分解ガスクロマトグラフィー質量分析(Py-GC/MS)という手法によって確認されています。

その結果、ビフィズス菌は保存期間を通じて生存を維持していたことが確認されました(生菌数はおよそ10の6.3〜8.2乗CFU/gの範囲)。一方、MPを加えたすべてのグループでは、保存が進むにつれて回収される残渣の量が一貫して減少する傾向がみられ、その減少幅はPPで最も大きく、次いでPE、PSの順であったと報告されています。なお、MPを加えていない対照群では、この残渣量は安定していました。また、保存期間を通じて、各プラスチックに特徴的な化学的シグナルはPy-GC/MS分析で検出され続けていたとされています。

研究チームは、これらの結果について慎重な解釈を示しています。プラスチックの種類を示す化学的シグナル自体は保存中も検出され続けていたこと、また今回の分析手法が『どれだけのプラスチックを正確に回収できるか』という点まで検証されたものではないことから、観察された残渣量の減少は、プラスチックそのものが分解したり、微生物によって取り除かれたりしたことを意味するものではないと説明されています。むしろ、抽出のしやすさや、ろ過のされやすさ、残渣としての回収されやすさといった、測定手順上の性質が保存に伴って変化した可能性を示すものだと位置づけられています。

この研究の位置づけ・読むうえでの注意

この研究はあくまでヨーグルトという食品の中で行われた実験室レベルの観察であり、家畜への曝露や、ヒトが食事を通じてどの程度のリスクを負うか、また『農場から食卓まで』といった広い流通過程への影響を示すものではないと、研究チーム自身が明記しています。つまり、この結果から『ヨーグルトを食べると健康に影響がある』といった結論を導くことはできません。あくまで、プロバイオティクスとマイクロプラスチックの相互作用について、今後さらに研究を深めていくための、仮説を生み出す段階の予備的な知見として位置づけられています。

まとめ

今回の研究では、ビフィズス菌入りヨーグルトにマイクロプラスチックを加えて冷蔵保存したところ、菌自体は生存を保つ一方で、回収できる残渣の量は保存とともに減少する傾向が観察されました。ただしこれは、プラスチックの分解や生物学的な除去を意味するものではなく、測定上の回収のされやすさが変化した可能性を示すものと解釈されています。一つの探索的な研究であり、ヒトの健康への影響について結論づけるものではない点に注意しながら、今後の研究の広がりに注目したいテーマといえるでしょう。

※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。出典(原著論文):Bifidobacterium longum subsp. infantis含有ヨーグルトにおける保存期間に伴うマイクロプラスチック関連回収残渣の変化(トキシクス・2026年06月)

著者:Yasin Akkemik(Department of Food Hygiene and Technology, Faculty of Veterinary Medicine, Kastamonu University, Kastamonu 37100, Türkiye)、Sedat Özcan(Department of Veterinary, Menemen Vocational School, Izmir Bakircay University, Izmir 35660, Türkiye)、Veysel Doğan(Department of Animal Nutrition and Nutritional Diseases, Faculty of Veterinary Medicine, Kastamonu University, Kastamonu 37100, Türkiye)、Sedat Gökmen(Department of Veterinary Pharmacology, Faculty of Veterinary Medicine, Kastamonu University, Kastamonu 37100, Türkiye)、Enis Fuat Tüfekci(Department of Basic Medical Sciences, Faculty of Medicine, Kastamonu University, Kastamonu 37100, Türkiye)、Salih Erat(Department of Veterinary, Menemen Vocational School, Izmir Bakircay University, Izmir 35660, Türkiye)