著者の所属・活動拠点の国は、中国です。
掲載誌:Frontiers in Nutrition
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
誰かと食卓を囲む「共食」と、一人で食事をする「孤食」。高齢化が進み、一人暮らしや夫婦のみの世帯(いわゆる「空の巣」世帯)が増えるなかで、孤食は多くの国で身近な生活習慣の変化になっています。食事は栄養を摂る場であると同時に、人との会話や交流の場でもあることから、こうした食事スタイルの違いが高齢者の健康にどう関わっているのかは、以前から関心が持たれてきたテーマです。今回紹介する論文は、この共食・孤食と、栄養摂取量やうつ病リスクとの関連について、世界各地で行われた研究を集めて分析したシステマティックレビュー(系統的レビュー)とメタ分析です。
どのように調べたのか
研究チームはPRISMAという国際的なガイドラインに沿って、PubMed、Web of Science、Embase、Cochrane Libraryという4つの学術データベースを、データベース開設時から2025年12月までの範囲で検索しました。事前にPROSPERO(システマティックレビューの国際登録制度、登録番号CRD420251177507)にも研究計画を登録しています。最終的に12,088件の文献をスクリーニングした結果、21件の研究が分析対象として選ばれました。内訳は日本が11件と最も多く、韓国4件、米国3件、英国・中国・ブラジル・スウェーデンが各1件でした。研究の質については、AHRQという評価基準を用いて、16件が「質が高い」、5件が「中程度」と評価されています。分析では、それぞれの研究の結果を統合するために「ランダム効果モデル」という統計手法が用いられました。
わかったこと
分析の結果、孤食に比べて共食は、総エネルギー摂取量が平均で109.51kcal多いこと(95%信頼区間:17.39〜201.62kcal)、脂質摂取量が平均4.07g多いこと(95%信頼区間:0.14〜7.99g)、肉・魚介類の摂取量が平均21.28g多いこと(95%信頼区間:2.27〜40.29g)と関連していることが示されました。
さらに、うつ病リスクについては、孤食であることがリスクを高める要因として関連していることが示されました(オッズ比1.58、95%信頼区間:1.33〜1.87)。食事の時間帯別に見ると、特に「一人での夕食」がうつ病リスクとの関連が最も強い項目として報告されています(オッズ比2.13、95%信頼区間:1.57〜2.89)。
研究チームは、共食が社会的な関わりと食事内容の多様化という2つの要素を通じて、栄養不足や心理的な負担のリスクを下げることに関連している可能性があると考察しており、共食を高齢者の健康施策における薬に頼らない取り組みの一つとして位置づけることを提案しています。
この研究を読むうえで知っておきたいこと
この研究は、既存の21件の観察研究のデータを統合したメタ分析であり、共食と孤食を人為的に割り付けて比較した実験ではありません。そのため、示された関連は「共食をすればうつ病リスクが下がる」といった因果関係を直接証明するものではなく、あくまで統計的な関連性を示したものと理解する必要があります。また、対象となった研究の多くが日本を含むアジア地域のものであるため、結果を他の地域にそのまま当てはめられるかどうかは慎重に見る必要があるでしょう。一つの研究・分析の結果であり、これによって結論が確定したわけではない点にも留意してください。
まとめ
今回のメタ分析では、共食が孤食と比べてエネルギーや脂質、肉・魚介類の摂取量の多さと関連していること、そして孤食、特に一人での夕食がうつ病リスクの高さと関連していることが示されました。研究チームはこれらの結果から、共食の機会を増やすことが高齢者の栄養面・心理面の課題に対する非薬物的な選択肢の一つになりうると示唆しています。誰かと食卓を囲む機会について、あらためて考えてみるきっかけになる研究といえそうです。
※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。出典(原著論文):高齢者における共食と孤食が栄養摂取およびうつ病リスクに与える影響:システマティックレビューとメタ分析(フロンティアーズ・イン・ニュートリション・2026年07月)
著者:Yingying Zhang(Department of Radiotherapy, The First Affiliated Hospital of Soochow University, Suzhou, China)、Yaqun Zhang(Department of Radiotherapy, The First Affiliated Hospital of Soochow University, Suzhou, China)、Jianzheng Cai(Department of Nursing, The First Affiliated Hospital of Soochow University, Suzhou, China)、Weixia Yu(Department of Critical Care Medicine, The First Affiliated Hospital of Soochow University, Suzhou, China)、Ping Feng(Department of Nursing, The First Affiliated Hospital of Soochow University, Suzhou, China)、Haifang Wang(Department of Nursing, The First Affiliated Hospital of Soochow University, Suzhou, China)