卓球は、狭いテーブルの上で素早い体の動きと瞬時の判断力が求められ、しかも1試合の中で何度も攻守が入れ替わる高強度の間欠的スポーツです。こうした競技特性を考えると、選手の体づくりや疲労回復を支える「食事」の役割は重要そうに思えます。では実際に、卓球選手はどのような食生活を送り、栄養についてどれくらいの知識を持っているのでしょうか。そしてそれらは体組成(筋肉量や体脂肪など)や運動パフォーマンスと関係しているのでしょうか。今回紹介するのは、こうした疑問に取り組んだ横断研究です。
研究でわかったこと
この研究では、トレーニングを積んだ卓球選手42名を対象に調査が行われました。食事摂取量は、非連続の3日間について行う24時間思い出し法という方法で評価され、栄養に関する知識は構造化された質問票を用いて評価されました。また、体組成は生体電気インピーダンス法(体に微弱な電流を流して測定する方法)で、身体パフォーマンスは立ち幅跳び・反応時間・シャトルランのテストで評価されています。
食事内容を見ると、三大栄養素(炭水化物・たんぱく質・脂質)の配分バランスはおおむね推奨範囲内にあったと報告されています。一方で、報告されたエネルギー摂取量に加え、食物繊維、ビタミンC、カルシウム、鉄、葉酸、そして野菜や果物の摂取量は、推奨される水準を下回っていたとされています。栄養知識については全体として平均的なレベルであったものの、スポーツ栄養やサプリメント使用に関する分野の知識は相対的に低い傾向が示されています。
次に、栄養知識が高いグループと低いグループを比較したところ、立ち幅跳び、反応時間、シャトルランの成績、除脂肪量、筋肉量、体内水分量のいずれにおいても、両グループ間に統計的に有意な差は見られなかったと報告されています。さらに、回帰分析(複数の要因がどの程度結果に影響しているかを調べる統計手法)を用いて、食事内容や体組成の各指標とパフォーマンスとの関係を詳しく調べたところ、独立した関連性は限定的であったとされています。立ち幅跳びや反応時間については、有意な予測因子は見つからなかったとのことです。シャトルランのタイムについては年齢との関連が示されました(p=0.048)ものの、そのモデルが説明できる割合はごくわずかであった(調整済みR²=0.068)と報告されています。加えて、主成分分析という手法で全体の傾向を整理したところ、上位2つの主成分で全体のばらつきの64.8%を説明できたものの、栄養知識が高いグループと低いグループの間には大きな重なりが見られたとされています。
この研究の位置づけ・読むうえでの注意
今回の結果からは、トレーニングを積んだ卓球選手であっても、三大栄養素のバランス自体はおおむね妥当である一方、微量栄養素や野菜・果物の摂取など食事の質の面では改善の余地があることが示唆されています。また、この集団においては、栄養知識の高さが体組成やパフォーマンス指標と明確には結びついていなかったことも示されています。
ただし、この研究は42名という比較的小規模なサンプルを対象にした横断研究(ある一時点での状態を調べる研究デザイン)であり、著者ら自身も結果は探索的なものとして捉えるべきだと述べています。今後は、より大規模で、長期間にわたって追跡する研究や、卓球競技に特化したパフォーマンス評価、エネルギー消費量の客観的な測定を組み込んだ研究が必要であるとされています。つまり、この一つの研究だけで「栄養知識とパフォーマンスは無関係」と結論づけられるわけではなく、あくまで一つの手がかりとして捉えるのが適切といえそうです。
まとめ
今回紹介した研究では、卓球選手の食事摂取量や栄養知識の実態が調べられ、三大栄養素の配分は概ね推奨範囲内である一方、エネルギー摂取量や食物繊維、ビタミンC、カルシウム、鉄、葉酸、野菜・果物の摂取が推奨量を下回っていたことが報告されました。また、この調査対象においては、栄養知識の高低と体組成やパフォーマンス指標との間に明確な関連は見られなかったとされています。小規模な横断研究であることから、今後さらに大規模な研究による検証が期待されます。
※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:卓球選手における食事摂取・栄養知識と身体組成・パフォーマンスとの関連:横断研究(フロンティアーズ・イン・ニュートリション・2026年07月)